「もっと早く考えておけば」——現場で一番よく聞く言葉
訪問リハビリの仕事で、私は10年以上、毎日のように誰かの「実家」に上がらせてもらってきました。
そこで一番よく聞く言葉が、これです。
「もっと早く考えておけばよかった」
親が転倒して入院してから。認知症が進んでから。亡くなってから。——住まいとお金の問題は、いつも「何かが起きた後」に一気に押し寄せてきます。
でも、悩んでいる家族に話を聞くと、困っている理由は「情報がない」ことではありません。ネットにも本にも、情報はあふれています。
足りないのは、全体の地図です。
「介護リフォーム」「売却」「相続税」——それぞれの情報はあっても、自分の家族は今どこにいて、次に何をすればいいのかがわからない。
この記事は、その「地図」です。当サイトの記事を、実際に進む順番に並べました。全部読む必要はありません。自分の家族が今いる場所から読んでください。
まず、何かを決める前にやること3つ
どの道に進むにしても、最初の一歩は同じです。
① 親と「家の話」をする
一番難しくて、一番大事なステップです。切り出し方を間違えると、親は「追い出される」と感じて心を閉ざしてしまいます。
② 「元気なうち」にしかできない準備を知る
遺言や家の名義の整理は、認知症が進むとできなくなります。逆算すると、動けるのは「今」だけです。
③ 選択肢を全部知ってから決める
「同居が親孝行」「施設が安心」といった思い込みで決めると、後悔しやすい。まず選択肢を全部テーブルに載せましょう。
親の家の「4つの分かれ道」全体図
親の家の行き先は、突き詰めると4つしかありません。
| 道 | 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| A | 住み続ける(リフォーム) | 親が自宅での生活を望む・体はまだ動く | 直す場所の優先順位を間違えない |
| B | 貸す(賃貸に出す) | 手放したくない・立地が良い | 大家業の現実を知ってから |
| C | 売る | 誰も住む予定がない・現金化したい | タイミングと税金で数百万円変わる |
| D | 空き家のまま(何もしない) | ——(おすすめしません) | 税金・リスクが静かに膨らむ |
以下、道ごとに「進む順番」で記事を並べます。
道A|住み続ける——介護リフォームは「順番」がすべて
親が「この家に住み続けたい」と言うなら、それを支える道です。私の本業(訪問リハビリ)の専門領域でもあります。
先に知ってほしいのは、「全部やろうとしない」こと。 直すべき場所は思っているより少なく、順番を間違えるとお金だけ消えます。
STEP 1|危ない場所を知る
STEP 2|手すり・改修は「つける前」が勝負
STEP 3|介護保険の20万円を使い倒す
知っておくと慌てない
道B|貸す——「家賃が入る」の裏側を、大家歴10年以上が正直に
実家を貸せば家賃収入になります。ただ、大家業を10年以上やってきた立場から言うと、賃貸経営は「不労所得」ではありません。入居審査、修繕、退去、滞納——現実を知ってから決めてください。
STEP 1|貸せる家か見極める
STEP 2|大家業の現実を知る
STEP 3|退去・原状回復でもめないために
道C|売る——タイミングと税金で、手取りは数百万円変わる
「誰も住まない」なら、売却は最有力の選択肢です。ただし売り方より前に、税金とタイミングの知識で手取りが大きく変わります。宅建士としてここは強く言いたいところです。
STEP 1|売り時を見極める
STEP 2|片付ける
STEP 3|いくらで売れるか知る
STEP 4|税金で損をしない
つまずきやすいポイント
道D|「何もしない」——空き家は静かにお金を食う
一番選んではいけないのがこの道です。決められないまま放置された実家は、持っているだけで税金とリスクが膨らみ続けます。
「今は決められない」なら、それでもいい。ただ、「決めない」を選んでいる自覚だけは持っておいてください。それだけで、動くタイミングを逃しにくくなります。
どの道を選んでも、最後は「相続」がやってくる
住んでも、貸しても、売っても——親の家の話は、最後は必ず相続に行き着きます。ここは私自身、家族の相続対策を専門家と一緒に進めている真っ最中の領域です。
STEP 1|親が倒れる前・元気なうちに
- 親が倒れた後の相続準備——訪問リハPTが「今すぐやること」を解説
- 暦年贈与の「7年ルール」——生前贈与で気をつけること
- 親が「節税のために不動産を買う」と言い出したら——2027年からの「5年ルール」
STEP 2|亡くなった直後にやること
STEP 3|相続税と向き合う
STEP 4|専門家を味方につける
特殊なケース
迷ったときの判断基準——現場で見てきた3つの原則
最後に、たくさんの家族を見てきて、そして自分の家族の相続対策を進めながら、私がたどり着いた判断基準を置いておきます。
① 「気持ち」より先に「間取りとお金」を見る 同居も施設も売却も、感情で決めると後悔します。「その家で介護できるか」「維持費はいくらか」——数字と現実を先に見て、気持ちはその後で乗せる。
② 決められないなら「決める時期」だけ決める 今すぐ結論を出す必要はありません。ただ「父が75歳になったら」「次の正月に家族で」と、話し合う時期だけは決めておく。これだけで空き家化の大半は防げます。
③ 大きな決断の前に、必ず「売ったらいくらか」を知っておく 売る予定がなくても、実家の値段を知っているだけで、リフォーム・賃貸・相続すべての判断の精度が上がります。判断材料としての査定は、早すぎることはありません。
まとめ:地図があれば、慌てなくていい
- 最初の一歩は「親と話すこと」。技術より先に、きっかけ作りから
- 道は4つ。住む・貸す・売るは正解になりうるが、「何も決めない」だけは選ばない
- どの道でも最後は相続。元気なうちにできることが一番多い
- この記事をブックマークして、状況が変わるたびに「今いる場所」から読み直してください
親の家の問題は、一度にぜんぶ解決しなくていい。今日、地図のどこにいるかが分かれば、それで十分な前進です。
※税務・法律・医療に関する個別の判断は、税理士・弁護士・医師など専門家にご相談ください。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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