「実家、このままでいいんだろうか」
親が60代になってくると、ふとこんな不安が頭をよぎる方は多いと思います。
私自身、訪問リハビリ(自宅に来てくれるリハビリのこと)の仕事をしながら、親(60代)の家の今後をどうするか、兄弟で話し合いを始めたばかりです。介護に合わせてリフォームすべきか、いずれ売却か、それとも人に貸すか。選択肢が多くて、決めきれない。
ちなみに、親が60代でこのテーマを考え始めるのは「早すぎる」ではなく、むしろベストタイミングです。70代後半になってからでは、親自身の判断力・体力的にも、家族の話し合いをまとめやすさという面でも、選択肢が一気に狭まります。
この記事では、理学療法士(PT)10年以上 × 宅建士(不動産の国家資格)× 11期目の大家という立場から、親の家をどうするか判断するための「3つの軸」をお伝えします。
この記事の結論
結論から先にお伝えします。
- 判断軸①:親の体の状態と介護リスクを最初に確認してください。「今の状態」ではなく「10年後の予測」で考えることが大事です。
- 判断軸②:家の不動産価値(つまり「いくらで売れるか」)を無料の一括査定で把握してください。リフォームに何百万円かけても価値が上がらないケースがあります。
- 判断軸③:家族それぞれの住まい・お金の状況を照らし合わせてください。気持ちだけで判断すると後悔につながります。
- タイミング:親が60代で元気なうちが話し合いのベストタイミングです。70代後半では選択肢が一気に狭まります。
以下で、各ポイントを詳しく解説します。
親の家の選択肢、実は5つあります
「リフォームか売却か」の二択で考える方が多いですが、実際の選択肢はもっと広いです。
- 介護リフォームして親が住み続ける
- 大幅リフォームして同居・近居(二世帯住宅にする)
- 売却して施設入居・住み替えの費用にする
- 賃貸として貸し出して家賃収入を得る
- 空き家のまま保有する(時期を待つ)
それぞれにメリット・デメリットがあり、家族の状況によって正解は変わります。大事なのは「親が動ける今のうちに」5つすべてを比較検討することです。一度入院などで判断が難しい状況になると、選択肢が一気に狭まります。
判断軸①:親の体の状態と介護リスク(PT視点)
訪問リハビリで多くのご家庭を回ってきた経験から、最初に確認してほしいのは親の体の状態と10年後の予測です。
60代の親はまだ元気な方が多いですが、ここでチェックすべきは「今どれだけ自分で動けるか」ではなく「10年後にどう変わるか」です。具体的には、こんな視点で見てみてください。
- 階段の上り下りに手すりが必要か
- お風呂の浴槽をまたぐときにふらつきがあるか
- 玄関の段差で転びかけたことがあるか
- 夜中にトイレに行くとき足元がしっかりしているか
- 物忘れなど認知機能に変化が見られるか
この時点で **「すでに何度かヒヤッとした場面がある」**なら、すぐに介護リフォームの検討に入るべきです。まだ自立度が高い場合は「将来の改修を見越した最小限の準備」+「住み続けるか売却かの選択肢を残す」作戦がおすすめです。
訪問の現場で見てきた共通点として、「家の構造に体が合わなくなった瞬間」に転倒・骨折が一気に増えます。階段・浴室・玄関・廊下の段差、この4か所は特に要注意ポイントです。
判断軸②:家の不動産価値(宅建士視点)
次に、宅建士(不動産取引の国家資格)の視点で物件としての価値を冷静に見ます。多くのご家族が見落としがちなのが「リフォームに何百万円かけても、家の売却価格は上がらないケースが多い」という事実です。
確認すべきポイントは以下です。
- 立地: 駅から歩いて行けるか、車がないと不便か
- 築年数: 旧耐震(1981年以前に建てられた家)か新耐震か
- 需要: 売れそうなエリアか、借り手がつきそうなエリアか
- 土地の広さ・形状: 分割できるか、建て替えができるか
たとえば、駅から徒歩15分以上・築40年以上・1981年以前に建てられた戸建ての場合、500万円かけてリフォームしても売却価格は「土地代プラスちょっと」程度にしかならないケースが多いです。つまり、リフォーム費用が丸ごと損になることも。
まずは無料の不動産一括査定で、今の市場価値を把握することを強くおすすめします。査定だけなら無料で、複数社を比較することで「この家はだいたいいくらか」という感覚がつかめます。
私自身が大家として実際に使っているのは、HOME4U・SUUMO売却査定など複数社一括サイトです。1社だけだと、その金額が高いのか安いのかわかりません。
判断軸③:家族の住まい・経済状況
最後の軸は、ご自身(介護を担う子世代)の状況です。
- 自分の家からの距離(通える範囲か)
- 自分の住宅ローン状況・住み替え予定
- きょうだいとの分担可能性
- 親の貯蓄・年金で介護費用がまかなえるか
ここでよくある失敗が「親のためにリフォームしてあげたい」という気持ちで大金を使い、その後親が施設に入って空き家になるパターンです。リフォーム費用が回収できないだけでなく、改修後の家は売却しにくくなるケースもあります(介護仕様に改修された家は、若い世代の買い手にとって使いにくいことがあるため)。
「親が10年住む保証はない」という前提で、リフォームの規模を決めるのが宅建士・大家としての本音です。
5つの選択肢、どう決める?判断フロー
判断のおおまかな流れはこうです。
-
親の自立度は?
- 高い → ②へ進む
- 下がってきた → ③へ進む
-
家の不動産価値は?
- 高い → 売却 or 賃貸を検討
- 低い → 最低限のリフォームで住み続ける
-
介護の見通しは?
- 自宅で続けられそう → 介護リフォーム
- 施設入居の可能性が高い → 売却 or 空き家保有で時期を待つ
-
家族で一緒に住む意思は?
- あり → 二世帯リフォーム or 売却して新居取得
- なし → 上記いずれか
完璧な答えはありません。でも、軸を持って考えれば「なんとなく不安」から「次の一手が見える」状態に変わります。
今すぐやるべき3つのアクション
決めきれなくても、今やれることは3つあります。
① 親と話す(聞くべき5つの質問)
- どこで最期を迎えたい?(自宅・施設・どこでもいい)
- 今の家に不満や不便なところはある?
- 家を売っていいと思える?
- きょうだいで家をどう分けるか考えてる?
- 介護が必要になったらどうしたい?
タブー視せず、元気なうちに聞いておくことが最大の親孝行です。
② 不動産価値を調べる(無料一括査定)
まずは今の市場価値を知る。これだけで判断の解像度が一段上がります。
③ 介護保険の住宅改修費20万円を確認する
要支援・要介護認定(介護が必要と国が認める制度)があれば、住宅改修費20万円のうち最大18万円が介護保険から戻ってきます。手すり・段差解消・滑り止めなどに使えます。詳細は別記事で解説しています。
実例:私の親の家の場合
参考までに、私自身のケースを共有します。
親は60代で今は自立度が高い状態。立地と建物の条件はそれなりに、土地値が出るタイプの物件です。きょうだいで話し合いを始めていますが、遺言書もなく、親との具体的な話し合いはまだほとんど進んでいません。
「まだ60代で元気だから、話し合いは先でいい」と感じる方も多いと思います。でも、判断力・体力ともにしっかりしているこの時期こそ、本人の意思を尊重した話し合いができるチャンスです。70代後半・80代になってから「家どうする?」を切り出すより、はるかにスムーズに進みます。
私自身が宅建士・大家として「賃貸にしてきょうだいで共有」「売却して現金で分割」「きょうだいのうち1人が住んで買い取る」など複数のシナリオをシミュレーションしているところです。
まとめ:早めの判断と「軸を持った話し合い」が肝
親の家をどうするかは、感情的な話題で先送りされがちです。でも、選択肢が多いうちに動ける家族ほど、後悔のない結末を迎えています。
3つの判断軸はこうでした。
- ① 親の体の状態と介護リスク(PT視点)
- ② 家の不動産価値(宅建士視点)
- ③ 家族の住まい・経済状況
このすべてを揃えて見ることで、リフォーム・売却・賃貸・同居・空き家保有という5つの選択肢を冷静に比較できるようになります。
「うちは大丈夫」と思っているうちに、親と話してみてください。それがすべての始まりです。
この記事を書いた人 けいすけ。理学療法士(病院・在宅で10年以上)、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士。家族法人で複数物件を管理する現役大家(11期目)。賃貸住宅メンテナンス主任者・FP3級・簿記3級も保有。3児のパパ。「医療×不動産×子育て」のリアルを発信中。
親の家を考える