実家を賃貸に出す前に知っておきたいこと——大家11期目の本音 賃貸

実家を賃貸に出す前に知っておきたいこと——大家11期目の本音

「売るのは惜しいから、とりあえず貸せばいいか」

実家が空き家になったとき、こう考える方は少なくありません。しかし、賃貸転用は「とりあえず」でうまくいくほど簡単ではありません。

大家として11期目を迎え、マンション・アパート・戸建てと複数の物件を管理してきた経験から、実家を賃貸に出すことのリアルをお伝えします。

この記事の結論

実家を賃貸に出すことについて、結論から先にお伝えします。

  • 「とりあえず貸す」は失敗のもと:戸建て(一軒家)の賃貸需要はエリアによって大きく異なります。まず不動産会社に需要があるかを確認してください。
  • リフォーム費用の回収見通しを先に立てる:リフォームに100万円かけたのに家賃収入で回収できないケースはよくあります。
  • 管理は会社に委託する:慣れていない方の自主管理はトラブル対応の手間が大きいです。管理委託料(家賃の5〜10%)を払ってでも委託することをおすすめします。
  • 将来売りたい場合は定期借家契約を使う:普通賃貸借契約(一般的な賃貸契約)だと入居者がいる限り売却できません。

以下で、各ポイントを詳しく解説します。


賃貸転用のメリット

① 固定費をカバーできる

空き家のまま持っていると、固定資産税・火災保険料・管理費(マンションの場合)が毎年かかります。賃貸に出せば家賃収入でそれらをカバーでき、場合によっては手元に残ることもあります。

② 建物の劣化を防ぎやすい

人が住んでいる建物は、定期的に換気・清掃が行われるため、空き家より傷みにくいという側面があります。換気されない建物はカビ・湿気・害虫が発生しやすくなります。

③ 将来的な選択肢を残せる

売却してしまうと取り戻せませんが、賃貸なら「将来また使いたい」「やっぱり売りたい」となったときに方向転換できます。

賃貸転用のデメリット——大家の本音

① 戸建ての賃貸需要は限られる

マンションと違い、戸建ての賃貸はエリアによって需要が大きく異なります。駅から遠い・築年数が古い・庭の手入れが必要などの条件が重なると、入居者がつきにくいのが現実です。

まず不動産会社に「このエリアで戸建て賃貸の需要があるか」を確認することが出発点です。

② リフォーム費用がかかる

古い実家をそのまま貸せるケースは少ないです。水回りの老朽化・クロスの劣化・設備の不具合など、入居前に一定のリフォームが必要になることがほとんどです。

「家賃5万円×12ヶ月=60万円の収入」と思っていたら、リフォームに100万円かかった——というのはよくある話です。回収できる見通しを立ててから動くことが重要です。

③ 管理の手間と責任が生じる

賃貸に出すということは、オーナーとして管理責任を負うということです。

  • 設備が壊れたら修理・交換の手配
  • 家賃滞納のリスクと対応
  • 退去時の原状回復費用の精算
  • 入居者とのトラブル対応

管理会社に委託すれば家賃の5〜10%程度の管理料がかかりますが、慣れていない方は委託することを強くおすすめします。自主管理はトラブル対応の知識と時間が必要で、離れて暮らしている場合は特に大変です。

④ 将来売りたくなっても入居者がいると売れない

賃貸に出している間は、入居者がいる限り売却できません(オーナーチェンジ物件として売ることはできますが、価格は下がります)。

「5年後には売りたい」という予定がある場合は、定期借家契約(あらかじめ「〇年で終了」と決めた契約で、更新なしで終われる)の活用を検討する価値があります。

賃貸に出す前に確認すること

① 収支シミュレーションを作る

項目内容
想定家賃周辺相場を不動産会社3社に確認
リフォーム費用入居前に必要な工事の見積もりを取る
管理委託料家賃の5〜10%程度
固定資産税現状の税額を確認
空室リスク入居者が決まらない期間を想定

リフォーム費用を家賃収入で何年で回収できるかを計算してから判断しましょう。

② 住宅ローンが残っていないか確認する

住宅ローンが残っている場合、原則として賃貸転用には金融機関の許可が必要です。無断で賃貸に出すとローンの一括返済を求められるリスクがあります。

③ 相続人全員の同意を得る

共有名義になっている場合や、将来相続予定の不動産の場合は、きょうだい全員で方針を決めておくことが重要です。賃貸転用後に「やっぱり売りたい」「自分が使いたい」という声が出ると、話が複雑になります。

④ 管理会社を慎重に選ぶ

管理会社によって、入居者の募集力・対応の丁寧さ・トラブル時の動き方は大きく違います。

大家の会や知人の紹介で評判を確認したり、複数社に話を聞いたりすることをおすすめします。「とりあえず近くの会社に任せた」が後悔につながることもあります。

「売る」か「貸す」か——判断の基準

条件おすすめ
将来また使う可能性がある賃貸(定期借家契約)
築年数が古く需要が不安売却を検討
駅近・需要が高いエリア賃貸も十分選択肢
管理に手間をかけられない売却の方がシンプル
相続人が多く合意形成が難しい売却して現金で分けた方が楽

どちらが正解かは、その物件の立地・築年数・家族の状況・将来の計画によります。「売るのが惜しい」という感情だけで賃貸を選ぶと、管理の手間と費用が重なって「売っておけばよかった」となるケースもあります。

まとめ

実家の賃貸転用は、うまくいけば固定費をカバーしながら建物を維持できる良い選択肢です。しかし、リフォーム費用・管理の手間・需要の有無を確認せずに動くと、想定外の負担を抱えることになります。

まず不動産会社2〜3社に相談して、「このエリアで戸建て賃貸は現実的か」「どの程度の家賃が見込めるか」を確認することから始めてみてください。

税務・法律・医療に関する個別の判断は、税理士・弁護士・医師などの専門家にご相談ください。


著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。

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けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。