「うちには顧問の先生がいるから」
親が事業をしていた家、アパートを持っている家では、よく聞く言葉です。
そして、そのまま相続税の申告もお願いすることになります。
自然な流れです。でも、一度立ち止まる価値があります。
私は大家として11年、工事でも保険でも、必ず複数から見積もりを取ってきました。
なのに税理士だけは、比べるという発想がありませんでした。
この記事の結論
- 相続税の申告は、法人税や確定申告とは「別の仕事」です
- 顧問の先生を切らなくても、相続だけ別に見積もりを取れます
- 料金の出し方が、事務所によってまったく違います(パック制/財産額の割合)
- 比べて初めて、「何にいくら払っているのか」が見えます
- 一番の壁は、金額ではなく「顧問の先生に悪い」という気持ちです
- セカンドオピニオンという形なら、角が立ちません
なぜ「顧問にそのまま」が自然に見えるのか
理由は、はっきりしています。
- 家の事情を知っている
- 決算書も確定申告も、その先生が作ってきた
- 新しく探すのが面倒
- 断るのが気まずい
どれも、もっともです。
とくに最後の2つが、実際には一番大きいと思います。
でも、相続税の申告は「別の仕事」です
ここが、意外と知られていません。
| 主な仕事 | |
|---|---|
| 顧問業務 | 記帳・決算・法人税・確定申告・給与計算 |
| 相続税の申告 | 財産の評価・分割の設計・納税資金・特例の適用 |
毎年やる仕事と、一生に数回の仕事です。
とくに違うのが「土地の評価」です。
同じ土地でも、評価の仕方で金額が変わる
↓
形が悪い/私道がある/間口が狭い/高低差がある
↓
減額できる要素を、拾えるかどうか
ここは、経験の差がそのまま金額の差になります。
土地の評価がなぜ効くのかは「不動産が絡む相続は税理士選びを間違えると損をする」に詳しく書きました。
実際に、別の先生から見積もりを取ってみました
私も、ずっと顧問の先生にお任せするつもりでいました。
きっかけは、紹介で別の税理士の先生とお話しする機会があったことです。
せっかくなので、見積もりだけお願いしてみました。
顧問を変えるつもりはありません、と最初に伝えたうえでです。
比べて、3つ分かりました
① 料金の出し方が、まったく違う
- A社 面談◯回でいくら、という「パック制」
- B社 財産の総額に対する「割合」
単純に金額を並べても、比べられません。
「何をしてくれて、いくらか」を、自分で並べ直す必要がありました。
そして——どちらの見積もりにも「ここから先は別料金」の線がありました。
- 対策の絵を描くまで … 見積もりに含まれる
- 実際に実行する部分 … 別料金
ここを見落とすと、あとで金額が跳ねます。
② 見ているところが違う
これがいちばんの収穫でした。
同じ家の話をしているのに、先生によって「気にするポイント」が違ったのです。
- ある先生は「分け方」から入った
- 別の先生は「土地の評価」から入った
どちらが正しいという話ではありません。
でも、1人にしか聞いていなければ、もう一方の視点は永久に出てきません。
③ 説明の仕方で、相性が分かる
見積書の金額より、説明のされ方のほうが情報量がありました。
| 安心できた | 引っかかった |
|---|---|
| こちらの状況を聞いてから金額を出す | 最初から「では◯◯万円で」 |
| 「ここは要りません」と言える | 全部すすめてくる |
| 分からないことを「調べます」と言う | 「だいたい大丈夫です」 |
工事の業者を選ぶときと、まったく同じでした。
一番の壁は、金額ではありません
正直に書きます。
「顧問の先生に悪い」——これが、いちばん動けない理由でした。
- 何年もお世話になっている
- 他に見積もりを取ったと知られたら気まずい
- 信頼していないと思われたくない
この気持ちは、よく分かります。
でも、こう考えると動けます
- 顧問を「変える」のではない
- 相続だけ「もう一人に見てもらう」
医療で言えば、セカンドオピニオンです。
主治医を変えるわけではありません。別の先生の意見も聞く、というだけです。
そして——これは失礼なことではありません。
相続は、家族全員に関わります。「1人の意見だけで決めた」より、「複数に確認した」ほうが、きょうだいも納得しやすいです。
実際、顧問の先生も分かっています
相続税の申告を専門にしていない先生ほど、「うちより詳しいところがある」と知っています。
むしろ、断りづらくて引き受けてしまうほうが、お互いに不幸です。
見積もりを頼むときの、伝え方
気まずくならない言い方があります。
「顧問の先生は今のままお願いするつもりです。 相続については、規模が大きいので セカンドオピニオンをいただきたくて」
最初に「顧問は変えません」と言ってしまうのがコツです。
相手も、顧問を奪う話ではないと分かれば、気持ちよく見てくれます。
そして、顧問の先生にも伝えていい
「相続のことだけ、別の先生にも意見を聞いてみようと思っています」
隠すより、言ってしまったほうが楽です。
これで機嫌を損ねる先生なら、そもそも相続を任せるべきではありません。
どこで探せばいいか
顧問の先生とは別に探すとなると、ここが最初の壁です。
- 紹介(銀行・不動産会社・知人)
- 税理士会の相談窓口
- 紹介サービス
紹介は、紹介した側の利害が入ることがあります。建築や不動産の会社からの紹介なら、その先に工事の話が控えていることもあります。
悪いことではありません。ただ「知ったうえで」聞いてください。
相談は無料です。合わないと思えば断って大丈夫です。
どの経路でも、「顧問は変えません」と最初に伝えてください。
ただし、比べなくていい家もあります
全員がやるべき、とは思いません。
- 相続税がかからない見込み
- 財産が預貯金だけ
- 相続人が1人
この場合は、顧問の先生にそのままお願いして問題ないと思います。
比べる価値があるのは、不動産がある家です。土地の評価で金額が動くからです。
そもそも相続税がかかるかどうかは「相続税の申告は必要?」に、実家の評価のあたりをつける方法は「固定資産税の課税明細書の読み方」にまとめました。
この記事のまとめ
- 相続税の申告は、顧問業務とは別の仕事(毎年の仕事と、一生に数回の仕事)
- とくに土地の評価は、経験の差がそのまま金額の差になる
- 顧問を変えなくても、相続だけ別に見積もりを取れる
- 料金の出し方が事務所で違う(パック制/財産額の割合)。金額だけ並べても比べられない
- 「ここから先は別料金」の線を必ず確認する
- 見積書より、説明のされ方に情報がある(状況を聞いてから金額を出すか)
- 一番の壁は金額ではなく「顧問の先生に悪い」という気持ち
- セカンドオピニオンという形にすれば角が立たない。隠さず顧問にも伝えていい
- 頼むときは「顧問は今のままです」を最初に言う
- 紹介には紹介した側の利害が入ることがある。知ったうえで聞く
- 比べなくていい家もある(相続税がかからない・預貯金だけ・相続人が1人)
税額や報酬は、財産の内容や事務所によって大きく異なります。具体的な判断は、必ず税理士にご確認ください。この記事は考え方を整理したもので、個別の税務判断ではありません。
税理士の選び方そのものは「税理士は医者と同じ」に、親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。




