所有する駐車場や空き地に、見覚えのない車がずっと停まっている——。大家をやっていると、こういう「無断駐車」のトラブルにも出くわします。
「自分の土地なんだから、勝手に動かして当然だろう」と思いますよね。でも、ここにも前回の不法投棄と同じ落とし穴があります。
やられた側(被害者)なのに、勝手に車を動かすと、今度は自分が違法になってしまうのです。
私は賃貸経営に携わって10年以上、複数の物件を管理する現役の大家です。今日は、私有地に無断駐車されたときのやってはいけないことと、現実的な対処・防止策を、現場の感覚を交えてお話しします。
この記事の結論
- 勝手にレッカー移動・タイヤロック・空気抜きは、すべて違法になりうる(自力救済の禁止)
- 警察は私有地の無断駐車に、基本的に介入しない(民事のため)
- 現実的な対処は「記録 → 警告 → 管理会社 → (最終手段で)民事」
- 一番効くのは、やっぱり防止(看板・ポール・チェーン・カメラ)
順番に見ていきましょう。
1. なぜ「勝手に動かす」と違法になるのか
「邪魔だから、業者を呼んでレッカーで移動させればいい」「タイヤをロックして動けなくしてやろう」——気持ちはよく分かります。でも、これらはやってはいけない行為です。
日本の法律には、「自力救済の禁止」という大原則があります。たとえ自分が正しくても、正式な手続きを踏まずに、自分の実力で相手の物をどうにかすることは認められていない、という考え方です。
つまり、無断駐車という被害を受けていても、
- 勝手にレッカーで移動させる
- タイヤロックをかける、空気を抜く
- 車に傷をつける・貼り紙を強力にこびりつける
といった行為をすると、今度は自分が「器物損壊」や「違法な実力行使」として責任を問われかねません。“やられた側”が、一瞬で“加害者”に逆転してしまうのです。
これは、不法投棄のゴミを勝手に処分してはいけない話と、まったく同じ構造です。
2. 警察は「私有地の無断駐車」に基本介入しない
「無断駐車されたんだから、警察を呼べばいい」と思うかもしれません。でも、ここも現実は厳しいです。
道路(公道)の駐車違反は警察の管轄ですが、私有地(自分の駐車場・空き地)の中の無断駐車は、基本的に「民事」——つまり当事者同士の話し合いで解決する問題とされ、警察は積極的には動いてくれないのが実情です。
もちろん、明らかに悪質・危険なケースでは相談する価値はありますし、「相談した記録」を残す意味はあります。ただ、「警察が来て車をどかしてくれる」と期待しすぎないことが大事です。
3. 無断駐車されたときの対処ステップ
ステップ1:写真・記録を残す
まず、証拠を残します。
- 車のナンバー・車種・色
- いつから停まっているか(日付の分かる写真を複数日)
- 自分の敷地内であることが分かる構図
「無断で、これだけの期間停められている」という記録が、後の対応の土台になります。
ステップ2:警告の貼り紙・看板を出す
次に、「無断駐車です。○日までに移動してください」という警告を、車のフロントガラスなどにそっと挟みます(強力なノリで貼ると、それ自体がトラブルになります)。
あわせて、敷地に「無断駐車禁止」の看板を立てておくと、「警告した」という事実が残ります。
ステップ3:管理会社・専門家に相談する
賃貸物件なら、まず管理会社に相談します。入居者の来客や、近隣の常習者など、心当たりのある相手なら、管理会社経由で話をつけられることもあります。
相手が分からない・動かない場合は、車のナンバーから所有者を調べ、内容証明を送る→最終的に民事(裁判)で撤去を求めるという流れになりますが、ここは費用も手間もかかるため、弁護士など専門家に相談するのが現実的です。
ポイントは、不法投棄のときと同じく、「自分一人で実力行使せず、記録を残して、第三者を通す」ことです。
実際、私の物件ではこうしています
正直に言うと、無断駐車は何度も経験しています。そして一番多いのは、見知らぬ他人よりも“入居者がらみ”でした。契約している車両以外の車——入居者の社用車、友人や家族の車などが、空いている区画や来客スペースに停められる、というパターンです。
なので私の場合、最初に疑うのは外部の人ではなく、「身内(入居者まわり)では?」という発想です。実際の対処も、次の順番でやっています。
- ① 管理会社から、該当しそうな入居者に連絡してもらう(これで大半は解決します)
- ② 掲示板に張り紙を出し、「契約車両以外の駐車はご遠慮ください」と全体に周知する
- ③ 防犯カメラを設置して、「見られている」状態をつくる
ちなみに、警察に連絡したことは一度もありません。前に書いたとおり私有地の無断駐車は基本“民事”で、現実には管理会社・掲示・カメラでほぼ収まっているからです。
4. 一番効くのは「防止」
無断駐車も、一度されると「ここは停めても大丈夫な場所」と思われ、繰り返されるのがやっかいです。だから、対処より防止にお金と工夫をかけるのが、結局いちばん安上がりです。
効果が期待できるのは、次のような対策です。
- 「無断駐車禁止」の看板(※「罰金○万円」の表示は、契約のない第三者には法的効力が弱いものの、心理的な抑止にはなります)
- ポール・チェーン・ロープで物理的に入れなくする
- コインパーキングのようなロック板(本格的な対策)
- 防犯カメラ・センサーライト(「見られている」感を出す)
- 月極なら区画番号・契約者名の表示で「管理されている感」を出す
私の物件で実際に効果があったのは、さきほども触れた掲示板への張り紙と防犯カメラです。とくにカメラは「ここは見られている」と分かることの抑止効果が大きいと感じています。費用はかかりますが、繰り返される無断駐車に悩むより、結局は安く済みます。
5. 大家として伝えたいこと
無断駐車も、不法投棄も、根っこは同じです。「理不尽な被害を受けた側が、感情的に動くと、かえって自分が不利になる」——これが、敷地内トラブルの一番こわいところです。
腹が立つのは当然です。でも、カッとなってレッカーを呼んだり、タイヤをロックしたりした瞬間に、立場が逆転します。
長く大家を続けてきて学んだのは、「正論で実力行使するより、記録を残して、仕組み(看板・ポール・カメラ)で防ぐ」ということ。地味ですが、これが自分と物件を守る、いちばん確実な方法です。
まとめ
私有地に無断駐車されたときのポイントをまとめます。
- 勝手にレッカー・タイヤロック・空気抜きはNG(自力救済の禁止/器物損壊のリスク)
- 警察は私有地の無断駐車に基本介入しない(民事)
- まず写真・記録 → 警告 → 管理会社 → (最終手段で)民事
- 繰り返し対策は看板・ポール・チェーン・カメラ
理不尽ですが、感情で動くと損をするのが、この手のトラブルです。冷静に、記録を残して、仕組みで防ぐ。 これが一番の近道です。
なお、相手が動かず実際の撤去や損害賠償が必要になりそうな場合は、弁護士など専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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