ある日、所有物件の入居者さんから管理会社経由で連絡が入りました。
「お湯はりをすると、黒いカスみたいなものが浮く」
お風呂のお湯に黒いゴミが浮いていたら、気持ち悪いですよね。入居者さんの立場なら「このお湯、大丈夫?」と不安になって当然です。
大家の私にとっては、これは「修理で済むのか、給湯器ごと交換か」を判断する場面です。設置から10年を超えていたので、正直「これはもう交換かな」と思いました。
ところが、メーカーに確認すると意外な答えが返ってきました。「給湯器本体が原因ではありません。まず配管の洗浄をしてください」——10年超=交換、と思い込んでいた私には、ちょっと拍子抜けの回答でした。
今日はこの実体験をベースに、「黒いカス」の正体と、修理か交換かの判断軸を、大家歴10年以上の視点でお話しします。賃貸にお住まいの方にも、大家さん・実家の設備が古くなってきた方にも役立つ内容です。
この記事の結論
- お湯の黒いカスの原因は主に3つ:①配管の汚れ ②ゴム部品の劣化 ③サビ
- ①なら市販の洗浄剤で直ることが多い。②③は洗浄では直らない
- 10年超でも「即交換」と決めつけない。まずメーカー・管理会社に確認(私も「交換だろう」と思い込んでいたら「まず洗浄を」と言われました)
- 「洗浄で直らない+設置10年超」なら、修理より交換が妥当。給湯器の寿命は10〜15年が目安
- 賃貸なら費用は原則オーナー(大家)負担。入居者は遠慮せずすぐ連絡を
1. 「黒いカス」の正体は主に3つ
お湯に浮く黒いカス。正体はだいたい次のどれかです。
① 追い焚き配管の汚れ(湯あか・皮脂汚れ)
追い焚き機能つきのお風呂は、浴槽のお湯を配管に吸い込んで温め直しています。この配管の内側に、湯あかや皮脂の汚れが少しずつたまり、はがれて出てくることがあります。
これは給湯器の故障ではなく「汚れ」なので、市販の風呂釜洗浄剤(ジャバなど)で改善することが多いです。まず試すべきはこれです。
② ゴムパッキンなど部品の経年劣化
給湯器や配管の内部には、ゴム製の部品が使われています。長年の熱で少しずつ劣化してボロボロと崩れ、黒いカスになって出てくることがあります。
これは汚れではなく部品の寿命なので、洗浄剤では直りません。設置から10年を超えた給湯器で黒いカスが出る場合、この可能性が高くなります。
③ 配管内部のサビ
金属部分がサビて、はがれて出てくるケースです。これも洗浄では根本解決しません。
2. 修理か交換か——私の判断軸
大家として使っている判断の流れは、シンプルです。
- まずメーカーや管理会社に症状を伝えて確認し、風呂釜洗浄を試す(①の汚れなら、これで解決)
- 洗浄しても出続けるなら、部品劣化かサビ(②③)を疑う
- そのうえで、設置から10年を超えていたら修理ではなく交換
なぜ10年で線を引くのか。理由は2つあります。
- 給湯器の寿命はそもそも10〜15年が目安。1か所直しても、次々と別の部品が寿命を迎える「モグラたたき」になりやすい
- 古い機種は修理用の部品の保有期間が終わっていることがあり、直したくても直せない場合がある
冒頭のケースでは、設置から約11年。私も最初は「もう交換だろう」と思い込んでいました。でもメーカーに確認したら「給湯器本体が原因ではない。まず配管の洗浄を」という回答——プロに聞いてから動いたおかげで、十数万円の交換費用に飛びつかずに済んだわけです。思い込みで大きな出費を決めない。まず確認。これがこの件の一番の学びでした。
一方で、同じ物件の別の部屋では、過去に給湯器本体を交換した経験もあります。築年数が同じなら設備の寿命もだいたい同時期に来るので、1部屋で寿命系のトラブルが出たら、他の部屋もそろそろだと心づもりをしておく——これも大家として身をもって学んだことです。
3. 費用は誰が払う?——賃貸なら原則、大家です
賃貸にお住まいの方に、はっきりお伝えしたいことがあります。
給湯器の経年劣化による故障・交換の費用は、原則としてオーナー(大家)負担です。 給湯器は大家の持ち物である「建物の設備」だからです(入居者の故意・不注意で壊した場合は別です)。
だから、「言ったら申し訳ないかな」「自分で洗浄剤を買って様子を見よう」と我慢しないでください。むしろ大家側からすると、症状を早く知らせてもらえるほうが、完全に壊れて「お湯が全く出ない」緊急事態になる前に手を打てるので助かります。
- 入居者の方へ:症状(黒いカス・お湯の温度が不安定・エラー表示など)をメモして、管理会社か大家さんにすぐ連絡を
- 大家さんへ:給湯器の交換費用は決して安くありません(機種やグレードにもよりますが、10〜20万円程度かかります)。給湯器のような日常設備は、大規模修繕のように積立で備えるより「修繕が多い年に耐えられる現金を残しておく」発想が現実的です(修繕費の備え方で詳しく書いています)
4. こんなサインが出たら寿命が近い
黒いカス以外にも、給湯器の寿命が近いサインがあります。
- お湯の温度が安定しない(急に熱くなる・ぬるくなる)
- エラーコードが頻繁に出る(リセットしても再発する)
- 給湯器から異音(ボンッという着火音、うなり音)
- 給湯器の周りの水漏れや、排気口の黒ずみ
設置から10年前後でこれらが出始めたら、「修理して延命」より「交換の見積もりを取る」段階だと考えてください。特に冬は給湯器の故障が集中して交換まで待たされやすいので、サインが出ているなら早めに動くのが正解です。
まとめ
- 黒いカスは「汚れ」なら洗浄で直る。「部品劣化・サビ」は直らない
- 10年超でも即交換と決めつけず、まずメーカー確認・洗浄から(私はこれで交換費用に飛びつかずに済みました)
- 洗浄で直らない+10年超=交換が妥当。寿命は10〜15年
- 賃貸の給湯器は原則大家負担。入居者は我慢せずすぐ連絡
- 大家は修繕費の積立で備える。設備の寿命は同じ物件でほぼ同時期に来る
設備トラブルは、入居者さんの生活に直結します。「早く知らせてもらい、早く判断する」——これが入居者さんにとっても大家にとっても、一番損の少ない道です。
同じ設備トラブルでは、賃貸のエアコンが故障したら誰の負担かも判断の分かれ目がよく似ています。
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