管理委託契約書のどこを見るか——大家が実際に直してもらった5か所 賃貸

管理委託契約書のどこを見るか——大家が実際に直してもらった5か所

今年の夏、家族で所有しているアパートの管理会社と、初めて管理委託契約書を作りました。

管理会社を変えたわけではありません。古くからの付き合いの会社で、これまでは正式な契約書がないまま管理を任せていたのです。

きっかけは、初めて迎えた定期借家契約の再契約でした。定期借家は、期間が決まった賃貸の契約で、続けるときはもう一度契約を結び直します(実務では「更新」と呼ばれることもあります)。そのときの手数料を、大家と管理会社でどう分けるか。お互いの認識がずれていました。

どちらが悪いわけでもありません。書面がないので、それぞれが「こうだと思っていた」だけです。そこで、改めて契約書を作ろうという話になりました。

そのときに、5か所を直してもらいました。どれも管理会社が悪意で書いたものではなく、雛形のままだったり、実態と食い違っていたりしたものです。でも、そのままハンコを押していたら、後で困っていました。

親から賃貸物件を引き継ぐ方、これから管理を任せる方に向けて、実際に何を見たのかを書きます。

この記事の結論

  • 敷金を誰が保管するかを必ず確認してください。管理会社が預かる形は避けたほうが安全です
  • 家賃の送金日は交渉できます。「当月末日」を「当月10日」にできました
  • 「当月分」か「翌月分」かの表記が、表と条文で食い違っていることがあります
  • 管理会社の手書き修正も間違っていることがあります。口座番号が違っていました
  • 清掃の範囲は「共用部分」だけでなく、具体的な場所を書いてもらってください
  • そして——重要事項説明書と契約書の両方を突き合わせてください

1. 敷金は誰が保管するのか(一番大事)

雛形の契約書では、敷金を管理会社が預かる形になっていました。

これを「オーナーが保管する。管理会社は預からない」に直してもらいました。

なぜ直したのか

管理会社が倒産したら、預けている敷金は戻ってこない可能性があるからです。

敷金は、本来は入居者さんのお金です。退去のときに精算して返すべきものを、大家が預かっている——という性質のものです。それが管理会社の口座にあって、その会社が倒れたら、返す原資が消えます。

賃貸住宅の管理業には、お金を分けて管理する(分別管理)義務が定められています。ただ、義務があることと、実際に守られるかは別の話です。そもそも預けなければ、この心配は消えます。

ただし、実務は回るようにしました

「オーナー保管」にすると、新しい入居者から敷金を集める作業が面倒になります。そこでこう整理しました。

  • 保管はオーナー
  • 新規の敷金は管理会社が集金して、オーナーに送金
  • 退去精算の事務は管理会社が代行

こうすれば、実務は今までどおり回ります。お金の置き場所だけが変わるわけです。

この修正は重要事項説明書と契約書の両方に反映しないと意味がありません。片方だけ直して、もう一方に「預かり中の敷金全額を引き継ぐ」といった古い条文が残っていると、書類どうしが矛盾したまま契約することになります。

2. 家賃の送金日は交渉できます

雛形では、集めた家賃をオーナーに送金する日が「当月末日」になっていました。

これを「当月10日頃」に直してもらいました。20日早くなります。

大したことないように見えますが、借入の返済がある物件なら話は変わります。入金が返済日より後だと、毎月立て替えることになります。

「そういうものだ」と思わずに、一度聞いてみてください。実態としてもっと早く送金している会社なら、あっさり通ることがあります。私の場合も、これまでの取り決めでは10日ごろの送金だったのに、雛形の記載が食い違っていただけでした。

3.「当月分」と「翌月分」が混ざっていました

これは細かいですが、後々もめる元になります。

多くの賃貸は前家賃です。8月分の家賃を、7月末までに払います。

ところが契約書の中で、表では「当月分」、条文では「翌月分」と書かれている箇所がありました。同じ書類の中で食い違っていたのです。

そのままだと、「今月振り込まれたこのお金は、何月分なのか」が書面上あいまいになります。滞納が起きたときに、何月分から滞納なのかを争うことになります。

全部「当月分」に統一してもらいました。

4. 管理会社の手書き修正も、間違っていることがあります

これが一番ヒヤッとした話です。

契約書のやり取りの中で、管理会社から手書きで訂正した書類が送られてきました。その中に、振込先の口座番号の訂正がありました。

念のため、こちらが持っている資料(過去の入金記録)と突き合わせたところ——元の番号が正しく、手書きの訂正のほうが間違っていました。

そのまま受け入れていたら、家賃が入ってこないところでした。

管理会社もミスをします。悪意ではありません。人がやっている以上、当たり前のことです。だからこそ、送られてきたものを鵜呑みにしないでください。

口座情報は、必ず手元の記録と照合してください。ここだけは、面倒でもやる価値があります。

5. 清掃の範囲は「具体的な場所」で書いてもらう

契約書には「共用部分(廊下・階段・エントランス)の定期清掃 月1回」とありました。

ここに「自転車置場・ゴミ置場(ダストボックス内を含む)」を追記してもらいました。

なぜか

「共用部分」という言葉は、解釈が割れるからです。

大家は「ゴミ置場も共用部分だろう」と思っています。管理会社は「廊下と階段のことだ」と思っているかもしれません。どちらも間違っていません。書いていないから、そうなります。

実際、担当の方は「気がついたときは掃除しています」とおっしゃっていました。やってくれているなら、書いてもらえばいいのです。

費用は変わりませんでした。範囲を明文化しただけです。それでも、担当者が変わったときに効いてきます。

最後に——重要事項説明書と契約書を突き合わせる

直してもらった5か所とは別に、これが一番手間のかかる作業です。

管理委託には、重要事項説明書と契約書の2つの書類があります。内容は重なっていますが、別々の書類です。

修正を依頼すると、片方だけ直って、もう一方が古いままということが起きがちです。

私は全文を並べて、1行ずつ照合しました。正直しんどい作業ですが、ここを飛ばすと矛盾したまま締結することになります。

チェックボックス(■と□)のズレも要注意です。修正のときに崩れやすい場所です。

それでも、管理会社は必要です

ここまで「直した話」を並べましたが、管理会社を疑ってかかるべきという話ではありません。

私は本業があります。入居者さんからの連絡に日中対応することはできません。滞納の督促も、退去の立会いも、業者の手配もできません。管理会社がいなければ、賃貸経営は成り立ちません。

管理報酬は、家賃の数パーセントです。この金額でこれだけやってもらえるなら、安いと思っています。

だからこそ、最初の契約書だけは、こちらもきちんと読む。それが、長く良い関係を続けるための最低限だと思っています。

この記事のまとめ

判を押す前に、直してもらった5か所と、最後の突き合わせを見てください。

  1. 敷金は誰が保管するか(オーナー保管が安全)
  2. 家賃の送金日(交渉できます)
  3. 「当月分」「翌月分」の表記が統一されているか
  4. 口座情報を、手元の記録と照合したか
  5. 清掃の範囲が具体的に書かれているか
  6. 重要事項説明書と契約書の両方が一致しているか

親から物件を引き継いだ方は、まず管理会社との契約書があるかを確かめてください。うちのように、長い付き合いで契約書そのものがないこともあります。契約書があっても、何十年も前のまま誰も中身を確認していないこともあります。あれば一度読み直す、なければ作ってもらう。

契約内容の個別の判断は、物件の状況によって変わります。不安があれば、宅地建物取引士や弁護士など専門家にご相談ください。

管理会社そのものを変えるか迷っている方は、複数の会社に話を聞いて分かったことを、次の記事に書きました。

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けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。