「親の家賃収入、税金が高すぎない?」と思ったら
親がアパートや貸家をいくつか持っている。家賃収入はそれなりにあるけれど、所得税の負担がやたら重い——。
地主家系や昔からの大家の家では、よくある悩みです。
私自身、家族の法人で賃貸経営に携わっています。マンション・アパート・戸建て・駐車場の管理に関わる中で、「法人があるかないか」で税金の景色がずいぶん変わることを実感してきました。
今回は、その「不動産管理法人」という仕組みについて、できるだけやさしく解説します。
この記事でわかること:
- なぜ法人を作ると節税になるのか
- 不動産管理法人の3つの方式とそれぞれの違い
- 気をつけないといけない税務上の落とし穴
なぜ法人を作ると節税になるのか
ポイントは「所得の分散」です。
所得税は、収入が多いほど税率が上がる仕組み(累進課税)になっています。親ひとりに家賃収入が集中すると、高い税率がかかります。
そこで法人を作って、家賃収入の一部を法人や家族(役員報酬など)に分けると、ひとりに集中していた所得が分散されて、全体の税負担が軽くなる——これが基本の考え方です。
さらに、法人を通じて子どもが経営に関わっておくと、将来の相続や事業承継の練習にもなります。私が家族法人の役員になったのも、まさにこの流れでした。
不動産管理法人の3つの方式
不動産管理法人の運営方法は、大きく3つに分かれます。
方式①:サブリース(一括借り上げ)方式
法人が親の物件をまるごと借りて、入居者に貸し直す方式です。
- 入居者からの家賃はいったん法人に入る
- 法人は親に「借り上げ賃料」を支払う
- その差額が法人の取り分になる
空室が出たときのリスクを法人が背負うぶん、法人の取り分(実質的な管理料)を比較的高く設定しやすいのが特徴です。
ただし、親に支払う賃料を固定にしていると、空室が増えたときに法人の持ち出しになるリスクがあります。
方式②:管理委託方式
物件はあくまで親が貸し、法人は「管理だけ」を請け負う方式です。
- 家賃は親に入る
- 法人は入居者の募集・家賃の回収・物件の管理などを代行する
- 親が法人に「管理料」を支払う
法人のリスクが小さく、仕組みもシンプルです。そのぶん、法人が受け取れる管理料の水準はサブリース方式より低めになります。
方式③:不動産所有方式
法人が建物そのものを持ってしまう方式です。
家賃が全額法人に入るため、3つの中で所得の分散効果はいちばん大きいとされています。
よくあるのは「土地は親個人のまま、建物だけ法人が持つ」という形です。この場合、法人は親に地代を支払います。
ただし、この方式は注意点が多めです。
- 建物を法人に移すときに登記費用や税金などのコストがかかる
- 土地を借りる形になるため、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に出すなどの手続きをしないと、思わぬ課税(借地権の認定課税)を受けることがある
このあたりは完全に税理士さんの領域です。自己流は危険です。
3方式のざっくり比較
| 節税効果 | 法人のリスク | 手間・コスト | |
|---|---|---|---|
| ①サブリース | 中 | 空室リスクを負う | 中 |
| ②管理委託 | 小〜中 | 小さい | 小さい |
| ③不動産所有 | 大 | 中 | 移転コスト大・手続き多い |
「どれが正解」というものではなく、物件の収益性や家族の状況によって向き不向きが変わります。複数の物件がある場合は、物件ごとに方式を使い分けることもあります。
一番の落とし穴:「管理料の取りすぎ」
ここが実務でよく問題になるところです。
管理料を高くするほど所得が分散されて節税になります。だからといって、実態に見合わない高い管理料を設定すると、税務調査で否認されます。
「家賃の何%までなら大丈夫」という公式の基準はありません。あくまで「その管理料に見合う仕事を法人が実際にしているか」が問われます。
実際に管理の仕事をしていない法人が高額の管理料だけ受け取っている——という形が一番危ない。名義だけの節税は通用しない、ということです。
正直に言うと、法人は「手間」もかかる
ここまで節税の話をしてきましたが、家族法人に関わっている立場から正直に言うと、法人は作った後の手間が想像以上にあります。
- 設立にお金がかかる:登記費用などで、合同会社なら10万円前後、株式会社なら25万円前後が目安
- 赤字でも税金がかかる:法人住民税の「均等割」は利益ゼロでも年7万円程度かかります
- 毎年の決算・申告が必要:個人の確定申告よりずっと複雑で、実務上は税理士に頼むことになります。顧問料・申告料で年数十万円は見ておく必要があります
- 帳簿付けが本格化する:法人のお金と個人のお金は明確に分けないといけません。「ちょっと法人の口座から立て替え」みたいなどんぶり勘定は通用しません
- 役員報酬は気軽に変えられない:原則として期首から3ヶ月以内に決めたら1年間は固定です
- 社会保険の手続きと負担が発生する:役員報酬を支払うと、たとえ家族だけの法人でも健康保険・厚生年金への加入が原則必要になります。加入手続きや毎年の届出(算定基礎届など)が増えるうえ、保険料の約半分を法人が負担します。報酬の決め方によっては「節税額より社会保険料のほうが大きい」ことも起こります
- やめるときも手間:解散・清算にも登記や申告が必要で、「合わなかったからやめる」が簡単にはできません
私が簿記を勉強した理由のひとつも、ここにあります。法人の決算書を「税理士に任せっぱなし」にせず、自分で読めるようになっておかないと、経営の判断ができないからです。
ざっくり言えば、家賃収入が少ないうちは、維持費と手間のほうが節税額を上回ることも普通にあります。「法人を作れば得」ではなく、「一定規模を超えたら法人のほうが得になることがある」が正確なところです。
【体験談】「社会保険まわり」は、やってみると自衛になる
私自身、家族の法人で役員報酬が出ているので、毎年この社会保険の手続きに関わっています。今年は算定基礎届(社会保険料を決め直すための年に一度の書類)を、税理士に丸投げせず自分でe-Govを使って作ってみました。
正直、住所の入力ひとつ取っても「全角ハイフンじゃないと弾かれる」みたいな細かいクセだらけで、最初はかなり手こずりました。
でも一度自分でやってみて分かったのは、「どこを外注して、どこは自分でやれるか」の線引きが見えてくることです。給与計算も年末調整も、頼めばもちろんやってもらえますが、そのぶん費用は積み上がります。社会保険の仕組みをある程度自分で理解しておくと、“全部おまかせ”にせずに済む——これは法人を持つ側の、地味だけど大きな自衛だと感じました。
まとめ:法人化は「税理士と一緒に」が大前提
- 親の不動産収入が多いなら、不動産管理法人による「所得の分散」は有効な選択肢
- 方式は①サブリース②管理委託③不動産所有の3つ。節税効果とリスク・手間のバランスで選ぶ
- 管理料の設定を間違えると税務調査で否認される。実態が伴っているかがすべて
法人化は、設立して終わりではなく「毎年の運営」がセットです。設立コスト・法人住民税の均等割(赤字でもかかる税金)・税理士報酬などの維持費を超えるメリットが出るかを、必ず事前にシミュレーションしてください。
我が家の場合、法人があることで家族で経営の話をする機会が自然と増えました。節税だけでなく、「親の不動産を家族ごとにどう引き継ぐか」を考えるきっかけとしても、法人化は検討する価値があると思います。
※具体的な法人設立・管理料の設定・税務手続きは、必ず税理士にご相談ください。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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なお、親の物件を家族法人に売る場合は注意点があります。「節税のつもりが損」になる前に確認したい3つのことにまとめました。
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