ある朝、所有するアパートの敷地に、見覚えのないゴミや粗大ごみが捨てられている——。大家をやっていると、こういう“もらい事故”のようなトラブルに、ときどき出くわします。
腹が立ちますよね。「勝手に捨てられたんだから、こっちが勝手に片付けて何が悪い」と思うのが普通です。
でも、ここに意外な落とし穴があります。やられた側(被害者)なのに、勝手に処分すると、今度は自分が不利な立場になってしまうことがあるのです。
私は賃貸経営に携わって10年以上、複数の物件を管理する現役の大家です。今日は、敷地に不法投棄されたときの正しい対処の順番と、繰り返されないための防止策を、現場の感覚を交えてお話しします。
この記事の結論
- 捨てられたゴミでも、勝手に処分すると「他人の物を壊した」とみなされるリスクがある
- まずやるべきは「証拠の写真」と「自治体・管理会社への相談」(敷地内の小規模なものは警察は動かないことが多い)
- 自分の敷地でも、“やられた側が加害者になる”逆転が起こりうるので慎重に
- 一番効くのは防止(看板・フェンス・照明・防犯カメラ)
順番に見ていきましょう。
1. なぜ「勝手に処分」してはいけないのか
「自分の敷地に捨てられたゴミなんだから、自由に捨てて当然」——気持ちはよく分かります。でも、法律の世界では少しややこしいことになります。
ポイントは、捨てられたゴミでも、法律上はまだ“捨てた人の所有物”だという点です。所有者の許可なく勝手に処分すると、理屈の上では「他人の物を壊した(器物損壊)」と言われかねません。
「そんな馬鹿な」と思いますよね。実際、ほとんどのケースで大家が罪に問われることはありません。でも、もし捨てた相手が後から「あれは大事な物だった、弁償しろ」と言ってきたら——“やられた側”だったはずの自分が、急に言い訳をする立場に逆転してしまうのです。
だからこそ、いきなり処分せず、まず手順を踏むことが、自分を守ることにつながります。
2. 不法投棄されたときの対処ステップ
ステップ1:まず「写真」で証拠を残す
片付けたくなる気持ちをぐっとこらえて、まず写真を撮ります。
- 捨てられた物の全体・アップ
- 敷地のどこに、いつ捨てられていたか分かる構図
- 中身に持ち主の手がかり(伝票・名前など)がないか
この写真が、後で「不法投棄の被害があった」という証拠になります。
ステップ2:自治体・管理会社に相談する(警察は“動かないことも多い”)
次に相談すべきは、市区町村の不法投棄の窓口と、賃貸なら物件の管理会社です。実際の処分は、ここが中心になります。
「不法投棄は犯罪なんだから、警察に通報すればいいのでは?」と思うかもしれません。確かに不法投棄は法律違反(廃棄物処理法違反)です。ただ、敷地内に捨てられた自転車や粗大ごみ程度だと、警察は「民事不介入」の立場で、積極的には動いてくれないことが多いのが現実です。
警察に相談する価値があるのは、大量・悪質・繰り返されるようなケース。その場合は被害届や相談記録を残しておくと、後々の備えになります。
日常的な“もらい事故”レベルの不法投棄は、自治体の窓口+管理会社で対応するのが現実的なルートです。「自分一人で抱え込まず、第三者を通す」——これが自分を守るポイントです。
ステップ3:持ち主が分かる場合・分からない場合
伝票などから持ち主が特定できれば、警察を通じて対応してもらえることもあります。
分からない場合は、自治体の指示に従って処分するのが基本です。自己判断で即処分せず、「相談した上で処分した」という流れを作っておくと、後のトラブルを防げます。
実際、私の物件ではこうしています
私の物件でも、こうした“もらい事故”は日常的にあります。具体的には、こんな感じで対応しています。
- 放置自転車:駐輪場には、所有者不明の自転車が必ず何台か出てきます。入居者の自転車には証明書のシールを貼ってもらって区別できるようにしておき、シールのない不明な自転車は、半年に一度、管理会社を通してまとめて処分しています。
- 粗大ごみ:ゴミ置き場に粗大ごみを捨てられ、何度かこちらで費用を負担して処分したこともあります。理不尽ですが、放っておくと景観も治安も悪くなるので、結局は対応せざるを得ません。
- 飛んできた洗濯物など:強風で、どこかの洗濯物が敷地に飛んでくることもあります。これもすぐ捨てず、1週間ほど置いてから、管理会社と相談の上で処分することが多いです。
共通しているのは、「いきなり自分一人で処分しない」「管理会社という第三者を通す」という点です。手間はかかりますが、これが結局いちばんトラブルになりにくいやり方だと感じています。
3. 繰り返されないための防止策
不法投棄は、一度やられると「ここは捨てやすい場所だ」と思われて、繰り返されるのがやっかいなところです。だから、対処と同じくらい防止が大事です。
効果が期待できるのは、次のような対策です。
- 「不法投棄禁止」の看板・ステッカー(“見られている感”を出す)
- フェンス・ロープで入りにくくする
- 人感センサー付きの照明(夜間の投棄を防ぐ)
- 防犯カメラ(ダミーでも一定の効果)
「捨てにくい・見られている」と思わせるだけで、ターゲットから外れやすくなります。
実際に私がやって効果があったのは、防犯カメラの“設置シール”を大きく目立つものに変えたことです。カメラ本体そのものより、「ここは撮られている」と一目で分かることが効くようで、これだけで粗大ごみを捨てられる頻度がはっきり減りました。コストもほとんどかからないので、まず試す価値があると思います。
4. 大家として伝えたいこと
不法投棄は、本当に理不尽なトラブルです。「なんで被害者の自分がここまで気を使わなきゃいけないんだ」と、何度も思います。
でも、だからこそ——カッとなって勝手に動かない。これが、結果的に自分を一番守ります。
「やられた側なのに加害者になる」という逆転は、不法投棄だけでなく、無断駐車や近隣トラブルでも起こります。正論で突っ走るより、記録を残して、仕組み(看板・カメラ)で防ぐ。これが、長く大家を続けてきて身についた“安全な戦い方”です。
まとめ
敷地に不法投棄されたときのポイントをまとめます。
- 捨てられた物でも勝手に処分しない(器物損壊と言われるリスク)
- まず写真で証拠を残す
- 自治体・管理会社に相談し、記録を残す(悪質・大量なら警察にも)
- 繰り返し対策は看板・フェンス・照明・カメラ
理不尽ですが、感情的に動くと損をするのが、この手のトラブルです。冷静に、記録を残して、仕組みで防ぐ。 これが一番の近道です。
なお、具体的な法的トラブルになりそうな場合は、警察や弁護士など専門家にご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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