「修繕費って、毎月どのくらい積み立てておけばいいの?」
アパートを持ち始めた大家さんが一番困るのが、この問いへの答えです。法律に「いくら積み立てなさい」とは書いていない。だから後回しにしがちで、いざ修繕が必要になってから「お金がない……」と焦る大家さんを、私は何人も見てきました。
私は家族法人で10年以上、アパート経営をしています。最初は法人の決算書すら読めない状態でしたが、非常勤から常勤役員になってからは数字をきちんと追うようになり、修繕費の積立こそが「大家が倒れない経営」の土台だと実感しています。
この記事では、修繕費積立の考え方と、わが法人の実際のアプローチを紹介します。
修繕費の積立は「義務」ではないが、やらないと詰む
マンション管理組合には修繕積立金の積み立てが求められますが、アパートなど個人・法人の賃貸オーナーに対しては、法律で「修繕費を積み立てなさい」とは定められていません。
だからこそ、積み立てずに毎月の家賃収入をそのまま使ってしまう大家さんが多い。
でも考えてみてください。建物というのは必ず老いていきます。
- 築10年で給湯器が壊れる
- 築15年でエアコンの入れ替えが始まる
- 築20年で屋根・外壁の大規模修繕が必要になる
- 築25年以降は設備の総入れ替えが次々と来る
これらのコストは、「来るとわかっているのに、いつ来るかわからない」ものです。毎月少しずつ準備しておかないと、まとまった支出が来たときに手持ち資金が尽きます。
修繕費が払えない大家さんに起きることは後ほど詳しく書きますが、結論を先に言うと「積み立てない大家は、いつか必ず詰む」です。
一般的な目安は「家賃収入の10〜15%」
業界でよく言われるのが、毎月の家賃収入の10〜15%を修繕費として積み立てておくという考え方です。
たとえば、家賃収入が月20万円なら、毎月2万〜3万円を修繕費用として別の口座に移しておく、というイメージです。
なぜ10〜15%かというと、長期的に大家業を続けた場合、家賃収入に対してそのくらいの割合が修繕コストとして消えていくのが実績値として知られているからです。
ただし、この割合は建物の築年数・構造・規模によって変わります。
| 築年数 | 積立の目安感 |
|---|---|
| 築10年以内 | 10%前後でも余裕あり |
| 築10〜20年 | 15%程度を意識 |
| 築20年以上 | 15〜20%、大規模修繕の時期を見越して多めに |
新しい物件ほど修繕コストは少なく、古い物件ほど多くかかります。築20年を超えた物件を持っているなら、10%では足りないことも十分あります。
けいすけ法人の実際の考え方
わが法人では、修繕費の積立を「別口座に移す」というよりも、決算書の「修繕引当金」の考え方で管理しています。
具体的には、毎期の決算で「今後5年以内に想定される修繕コスト」を洗い出し、それをざっくり月割りにして数字を把握しています。
実際に私が常勤役員になってから気づいたのは、「修繕費の支出が多い年」と「少ない年」が必ず交互にくるということです。給湯器が壊れた年、外壁塗装をした年は支出が跳ね上がる。だから前年・前々年が安かったとしても、「来年はくるかもしれない」という前提でお金を残しておくことが大切です。
また、法人で経営していると修繕費は経費として計上できます(※税務上のルールは税理士に確認が必要ですが)。現金を手元に置いておくことで、修繕が必要になったときに「借金してまで直す」という状況を避けられます。
非常勤の頃は「法人にお金を残す」という感覚が薄かったですが、常勤になって決算書を毎年しっかり読むようになってから、「修繕費のバッファを持つこと」が経営の安定につながると体感しました。
積立しなかった大家に起きること
修繕費を積み立てずに経営していると、どうなるか。私が見聞きしてきた例をいくつか紹介します。
ケース①:修繕費が払えず、空室を放置
給湯器が壊れたとき、修繕費がなくて直せない。空室のまま1〜2年が経過し、ほこりが積もり内装が傷んでいく。空室が続くので家賃収入がさらに減る。悪循環に入ります。
ケース②:借金で修繕する
「お金がないから銀行で借りる」という選択をせざるを得ない大家さんもいます。修繕費を借金でまかなうと、返済利息がかかる上に借入審査が通らないケースもある。本来キャッシュで払えるはずだったコストが、じわじわと重くなります。
ケース③:退去後にリフォームできない
入居者が退去したとき、次の入居者を迎えるためにリフォームが必要になります。このコストも「修繕費」の一部です。積立がないと、退去後にリフォームできず空室が長引く。これも悪循環の典型です。
修繕業者を賢く選ぶコツ
修繕費を積み立てることと同じくらい大切なのが、業者選びです。
業者によって、同じ工事の見積もりが2倍以上違うことがあります。
「1社だけに頼んだら、相場よりずっと高い金額だった」という話は、大家の間では珍しくありません。
修繕業者を選ぶときに気をつけたいのは、以下の点です。
必ず複数社から見積もりを取る
最低でも2〜3社から見積もりをもらいましょう。「相見積もり(あいみつもり)」といって、複数の業者に同じ条件で見積もりを出してもらい比較する方法です。これをやるだけで、数万〜数十万円の節約につながることがあります。
安さだけで選ばない
見積もりが安くても、施工品質が低ければ数年でまた修繕が必要になります。過去の施工実績や口コミも確認してから選びましょう。
工事内容を明確にしてもらう
「一式」という曖昧な見積もりではなく、「何をどのくらいの材料でどのくらいの工数でやるのか」が具体的に書かれた見積もりをもらうことが大切です。
まとめ
修繕費の積立は義務ではありませんが、やらなければ必ずどこかで経営が苦しくなります。
- 家賃収入の10〜15%を目安に積み立てる
- 築年数が古いほど多めに備える
- 修繕が来るたびに「何年後にまた来るか」を考えておく
- 業者は複数社を比較して選ぶ
大家業は「建物を持ちっぱなしにする商売」ではなく、「建物を維持しながら入居者に価値を提供し続ける商売」です。修繕費の積立は、その維持コストを計画的に管理するための最初の一歩です。
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