親名義の実家がある方なら、毎年4〜6月ごろ(時期は自治体によって異なります)に「固定資産税・都市計画税の課税明細書」という書類が届いているはずです。
多くの方は、下の方に書かれた「今年の納税額」だけ確認して、あとはしまい込んでしまいます。
でも実は、この1枚の書類から親の土地がどのくらいの相続税評価額になりそうか、大まかに見積もることができます。専門家に頼む前に、自分でも当たりをつけられるということです。宅地建物取引士として不動産に関わってきた立場から、読み方をやさしく解説します。
この記事の結論
- 土地の相続税評価には「路線価方式」と「倍率方式」の2種類がある
- 自分の実家がどちらの方式かは、国税庁の「路線価図」で調べれば分かる
- 路線価図の「300D」は「1㎡あたり30万円・借地権割合60%」という意味。数字の単位は千円
- 路線価方式の地域なら、路線価×地積(面積)でおおまかな評価額が出せる
- 倍率方式の地域なら、課税明細書の「固定資産税評価額」×倍率で計算する
- どちらもあくまで大まかな目安。正確な申告額は土地の形状などで補正が入るため、最終的には税理士に確認するのが安全
1. 課税明細書のどこを見ればいいか
課税明細書には、土地や家屋ごとに次のような項目が並んでいます。
- 所在地:土地の場所(住居表示とは異なることがあります)
- 地目:宅地・田・畑・山林など、土地の種類
- 地積:土地の面積(㎡)
- 固定資産税評価額:市区町村が算定した、その土地・家屋の評価額
- 課税標準額:実際に税額を計算するときの基準になる額(住宅用地は軽減が入るため、評価額よりも低くなっていることが多い)
相続税評価に使うのは、主に「地積」と「固定資産税評価額」の2つです。
2. 相続税評価には2つの方式がある
土地の相続税評価には、大きく分けて2つの方式があります。
- ①路線価方式:道路ごとに国税庁が定めた「路線価」を基準に評価する方法。都市部でよく使われます
- ②倍率方式:固定資産税評価額に、国税庁が定めた「倍率」を掛けて評価する方法。郊外や地方でよく使われます
自分の実家がどちらの方式に当てはまるかは、国税庁の「路線価図・評価倍率表」(ネットで無料公開されています)で、住所を検索すれば分かります。路線価が定められている道路に面していれば①、定められていなければ②という判断です。
3. 路線価図の「300D」って何のこと?
路線価図を開くと、道路の上に「300D」「200C」といった数字とアルファベットの組み合わせが書かれています。初めて見ると暗号のようですが、読み方は単純です。
- 数字=1㎡あたりの路線価。単位は「千円」です。「300」なら 300 × 1,000円 = 30万円
- アルファベット=借地権割合(その土地を借りている人の権利がどのくらいの割合か)
アルファベットの意味は決まっています。
| 記号 | 借地権割合 |
|---|---|
| A | 90% |
| B | 80% |
| C | 70% |
| D | 60% |
| E | 50% |
| F | 40% |
| G | 30% |
つまり「300D」は「1㎡あたり30万円・借地権割合60%の道路」という意味です。
ここで大事なのが、自分(や親)名義の土地を評価するときは、アルファベットは使わないということ。使うのは数字だけです。
アルファベットが出てくるのは、その土地を人に貸している場合や、借りている場合です。たとえば借地権そのものを評価するなら「30万円 × 地積 × 0.6」となります。
親の実家が親名義の土地に建っているという一般的なケースなら、まずは数字だけ見れば大丈夫です。
4. 路線価方式のおおまかな計算
路線価方式の地域なら、計算のベースはシンプルです。
路線価(1㎡あたりの価格)× 地積(㎡)= おおまかな評価額
たとえば仮に、路線価図に「200D」と書かれた道路(=1㎡あたり20万円)に面した150㎡の土地だとすると、
20万円 × 150㎡ = 3,000万円
これが、補正前の大まかな評価額です。実際の申告では、土地の形が不整形だったり、間口が狭かったりすると、ここから評価を下げる補正が入ります(このあたりの補正の考え方は土地の評価単位の記事や私道の相続税評価の記事でも触れています)。
5. 倍率方式のおおまかな計算
倍率方式の地域なら、課税明細書に書かれている固定資産税評価額をそのまま使います。
固定資産税評価額 × 倍率 = おおまかな評価額
たとえば仮に、実家の宅地の固定資産税評価額が500万円で、倍率表の倍率が1.1倍だとすると、
500万円 × 1.1倍 = 550万円
宅地の倍率は1.1倍とされている地域が多いのですが、倍率は土地の地目(宅地・田・畑・山林など)と地域によって大きく変わります。田や畑では数十倍という数字になることもあります。課税明細書の「地目」欄を確認したうえで、必ずご自身の地域の倍率表を見てください。
6. あくまで「大まかな目安」である理由
ここまでの計算はあくまで簡易な見積もりです。実際の相続税申告では、次のような要素でさらに評価額が変わります。
- 土地の形(不整形地・角地など)による補正
- 間口の狭さ・奥行きの長さによる補正
- 小規模宅地等の特例など、条件を満たせば評価額を大きく下げられる制度
- 私道や貸地など、利用状況による評価の違い
こうした補正は専門知識が必要な部分なので、「大まかにいくらくらいか」を自分で把握したうえで、正式な評価は税理士に依頼する、という使い分けが現実的です。
地域・専門分野・費用で絞り込み。初回相談は無料の先生も多いです。
まとめ
- 固定資産税の課税明細書は、納税額を確認するだけの書類ではない
- 相続税評価には路線価方式と倍率方式の2種類があり、国税庁の路線価図でどちらか調べられる
- 路線価方式は路線価×地積、倍率方式は固定資産税評価額×倍率でおおまかな評価額が出せる
- ただし形状などの補正が入るため、あくまで目安。正式な評価は税理士に確認するのが安全
来年また課税明細書が届いたら、捨てる前に一度、地目と地積を確認してみてください。「うちの実家、だいたいこれくらいか」という感覚を持っておくだけでも、いざというときの心構えが変わります。
相続