空き家

実家を空き家にするリスク|固定資産税と維持費の現実

「とりあえず、しばらくそのままにしておこう」

親が施設に入った後、実家をどうするか決めきれずに空き家のまま放置してしまうご家族は少なくありません。気持ちはよくわかります。長年住んできた家を、すぐに売ったり壊したりする決断はなかなかできないものです。

でも、「何もしない」は実はコストが一番高い選択です。

固定資産税、火災保険、管理費、そして建物の劣化。空き家は放置するほど維持が難しくなり、将来の選択肢も狭まっていきます。

この記事では、実家を空き家にし続けることで起きるリスクを、宅建士・大家の視点から具体的に整理します。

空き家を放置すると起きること4つ

①固定資産税の優遇が外れる(最大6倍)

実はこれが最も重要なリスクです。

日本では、住宅が建っている土地は「住宅用地の特例」として、固定資産税が大幅に軽減されています。具体的には、200㎡以下の部分は土地の固定資産税が6分の1になります。

しかし、「特定空き家」に指定されると、この優遇措置が適用除外になります。その結果、固定資産税が最大6倍に跳ね上がります。

たとえば、今まで年間5万円だった固定資産税が、一気に30万円になるケースもあります。

②維持費が毎年かかり続ける

空き家には、住んでいなくても毎年かかるコストがあります。

  • 固定資産税・都市計画税:立地や広さによるが年間5〜30万円程度
  • 火災保険:空き家は保険料が割高になるケースも。年間3〜10万円程度
  • 水道・電気の基本料金:防犯・凍結防止のために最低限は維持が必要
  • 草刈り・清掃:放置すると近隣からクレームが来る。年間数万円

これらを合計すると、何もしなくても年間10〜50万円以上かかることがあります。10年で100〜500万円です。

11期目の大家として実感するのは、空き家の維持コストは「じわじわ」かかるということです。固定資産税や保険は毎年請求が来るので気づきやすいですが、建物の劣化は見えにくい。気づいたときには修繕費が数百万になっていた、というケースを周りの大家仲間からもよく聞きます。

③建物の劣化・資産価値の下落

人が住まなくなった家は、想像以上のスピードで傷みます。

  • 換気されないことでカビ・湿気が増加
  • 雨漏りを放置すると柱や床が腐食
  • 害虫(シロアリ等)が発生しやすくなる
  • 外壁や屋根の劣化が加速

「数年後に売ろう」と思っていても、放置すればするほど売却価格は下がり、リフォーム費用が増えます。最悪の場合、解体しないと売れない状態になります。

解体費用は木造2階建て(30〜40坪)で150〜300万円程度。これを支払った上で更地として売るケースも珍しくありません。

④近隣トラブル・行政指導のリスク

空き家は周辺住民にも影響を与えます。

  • 草が伸びて隣家に越境する
  • 外壁や屋根の一部が崩れて飛散する
  • 不法投棄の温床になる
  • 不審者が侵入する

こうした状態が続くと、市区町村から「管理不全空き家」として行政指導が入る場合があります。

「特定空き家」に指定されるとどうなる?

2015年に施行された空き家対策特別措置法により、市区町村は適切に管理されていない空き家を「特定空き家」に指定できるようになりました。

特定空き家に指定されると、段階的に以下の措置が取られます。

  1. 助言・指導(まず改善するよう指示)
  2. 勧告(住宅用地特例の適用除外→固定資産税が最大6倍に)
  3. 命令(従わない場合は行政命令)
  4. 行政代執行(強制的に解体・撤去。費用は所有者負担)

行政代執行まで至るケースは少ないですが、「勧告」の段階で固定資産税が跳ね上がることは十分ありえます。

宅建士として補足すると、「特定空き家」の指定は突然ではなく、市区町村からの事前通知があります。ただし、勧告が出た時点で住宅用地特例が外れるため、翌年の固定資産税から一気に上がります。「指導が来てから考えよう」では手遅れになるので、指導が来る前に動くことが重要です。

空き家の年間維持コスト(試算)

一般的な木造2階建て(築30年・地方都市・土地50坪)を想定した場合の年間コスト目安です。

項目年間費用(目安)
固定資産税・都市計画税8〜15万円
火災保険3〜8万円
電気・水道基本料金2〜4万円
草刈り・清掃(年2回)3〜6万円
小修繕・維持管理5〜10万円
合計21〜43万円

これが毎年かかり続けます。10年間放置すれば、維持費だけで200〜430万円になります。

その間に建物は劣化し、売却価格は下がり続けます。

「とりあえず置いておく」なら最低限やること

すぐには決断できないという場合でも、最低限の管理は必要です。

月1回:

  • 窓を開けて換気する(30分以上)
  • 水道を通水する(配管の詰まり・錆び防止)
  • 郵便物・チラシを回収する

年2回以上:

  • 草刈り・除草
  • 外観の目視確認(外壁・屋根のひび割れ等)
  • 室内の換気・清掃

これを誰が担うかを家族で決めておくことが大切です。遠方に住んでいる場合は、地域の「空き家管理サービス」(月5,000〜15,000円程度)に委託する選択肢もあります。

最終的には「売る・貸す・活用する」を決める

空き家問題の根本的な解決は、不動産としての方向性を決めることです。

  • 売却:維持コストがゼロになる。まず複数社に査定を依頼して相場を把握する
  • 賃貸:家賃収入で維持費を賄える。ただしリフォーム費用と入居者管理が必要
  • 古民家活用・リノベ:カフェやゲストハウスにする事例も。条件が揃えば補助金も

「決めたくない」という気持ちはわかりますが、決断を先送りにするほどコストは増え、選択肢は狭まります。

不動産会社への無料査定は、売ることを決めていなくてもできます。「今の相場がいくらか」を知るだけでも、意思決定の参考になります。

(→ 不動産一括査定について詳しくは「親の家の不動産一括査定3社徹底比較」をご覧ください)

まとめ

実家を空き家のまま放置することのリスクをまとめます。

  1. 固定資産税が最大6倍になる可能性(特定空き家指定)
  2. 毎年20〜40万円以上の維持費が静かにかかり続ける
  3. 建物の劣化で資産価値が下落し、将来の売却が難しくなる
  4. 近隣トラブルや行政指導のリスクがある

「とりあえず置いておく」は選択ではなく、じわじわとコストを払い続ける状態です。

今すぐ売る必要はありません。ただ、「どうするか」を家族で話し合い、最低限の管理を誰かが担う体制を整えておくことが、後悔しないための第一歩です。

なお、税務・法律・不動産に関する判断は、税理士・弁護士・不動産会社への専門家相談を必ずお願いします。


著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。