ある日突然、親から「入院することになった」と電話が来る。
訪問リハビリの仕事をしていると、こういうタイミングで初めて家族が「相続」を意識し始める場面を何度も見てきました。そして同時に、「もう少し早く動いていれば」と後悔しているご家族も、たくさん見てきました。
僕自身も、理学療法士11年・宅建士・大家という立場から、数年前に「自分の親にもいつかこの日が来る」と感じて、相続の準備を少しずつ始めました。
この記事では、そのときに気づいたことと、「親が倒れたあと、何をすべきか」をできるだけわかりやすく整理します。
1. 訪問リハビリの現場で見た「準備できていない家族」のリアル
訪問リハビリでご自宅に上がると、その家のことがよくわかります。築年数の古い家、段差の多い廊下、使いにくいお風呂——そういったことと同時に、家族の関係性や「老後の備え」の状況も見えてきます。
「準備できていない家族」に多いパターンは、こんな感じです。
通帳がどこにあるかわからない
親が倒れて入院した瞬間に、治療費や介護費用のことを考えなければならなくなります。ところが、親がどこの銀行に口座を持っているのか、保険に入っているのかすらわからない、というご家族が少なくありません。
家族で「財産の話」をしたことがない
「相続の話をすると、まるで親の死を望んでいるみたいで言い出せない」——そういう声をよく聞きます。でも現場で見ていると、話し合いができていない家族ほど、いざというときに兄弟間でもめることが多いです。
不動産が絡んでいるのに誰も気づいていない
実家が持ち家・土地持ちであることは知っていても、その評価額がいくらなのか、ローンが残っているのか、誰の名義なのかを把握していない家族は多くいます。不動産が絡む相続は手続きが複雑になるため、知らずにいると相続発生後に慌てることになります。
2. 親が倒れてから相続を考えても遅くない——でも早いほど選択肢が増える
「親が倒れてからでは遅い」と言いたいわけではありません。倒れた後でも、できることはたくさんあります。
ただ、「親が元気なうちに動く」と「倒れてから動く」では、できることの幅がまったく違います。
たとえば遺言書(いごんしょ。自分の財産をどう分けるかを書いた書類)は、判断能力がある状態でないと書けません。親が認知症(物忘れが進んで判断力が落ちる病気)になってしまうと、遺言書の作成が難しくなります。
相続税の節税対策も同じです。生前贈与(せいぜんぞうよ。生きているうちに財産を家族に渡すこと)などの対策は、時間をかけるほど効果が大きくなります。倒れてからでは間に合わないケースも出てきます。
現場で感じてきた実感として言えば、「余裕があるうちに動いておくこと」が、家族全員にとって一番やさしい選択だと思っています。
3. 親が元気なうちにやっておくべき3つのこと
具体的に何を準備すればいいか、3つに絞って説明します。
①財産の把握——「うちには何があるか」を一覧にする
まず、親の財産がどれくらいあるかを把握することが第一歩です。
確認しておきたいことのリストはこんな感じです。
- 銀行口座(どこの銀行に、いくらあるか)
- 不動産(どこに、誰の名義で、ローンは残っているか)
- 生命保険(どの保険会社に、受取人は誰か)
- 株・投資信託などの金融資産
「うちは大した財産じゃない」と思っていても、実家の土地や建物は意外と評価額が高いことがあります。まず一覧を作ることから始めましょう。
②遺言書——「誰に何を渡すか」を記しておく
遺言書は、親が「自分の財産をどう分けてほしいか」を書き残す書類です。
遺言書がないと、相続人全員が話し合って決める「遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)」が必要になります。これが家族間のもめごとになりやすい。
遺言書があれば、「親がこう言っていたから」という形で話を進めやすくなります。公証役場(こうしょうやくば。公式な文書を作る国の機関)で作る「公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)」は、特に効力が強く安心です。
③税理士への相談——早めに「うちの場合はどうか」を聞く
「相続税って、お金持ちだけの話じゃないの?」と思っている方も多いです。
実際には、基礎控除額(きそこうじょがく。相続税がかからない範囲の金額)は「3000万円 + 600万円 × 相続人の人数」です。たとえば相続人が子ども2人なら4200万円まで税金がかかりません。
ただ、実家の土地や建物の評価額が高い地域では、これを超えるケースも珍しくありません。「うちはどうなのか」を一度専門家に確認しておくだけで、安心感がまったく違います。
4. 税理士への相談はいつ、何を持っていけばいいか
「税理士に相談したい。でも、何を持っていけばいいかわからない」という声もよく聞きます。
初回相談には、以下を持参(または事前に整理)できると話がスムーズです。
- 不動産の場合:固定資産税の納税通知書(毎年春ごろ届く紙)
- 金融資産の場合:通帳の写し、証券会社の口座明細
- 相続人の人数(配偶者・子ども・孫など)
「まだ何もわからないんですが…」という状態でも相談を受け付けてくれる先生は多いです。まず話を聞いてもらうだけでも、「うちはどのくらい相続税がかかりそうか」「何から手をつければいいか」の方向性が見えてきます。
税理士を探すときは、地域・専門分野・費用で絞り込める税理士ドットコムが便利です。初回無料で相談できる先生も多いので、気軽に問い合わせてみることをおすすめします。
まとめ
訪問リハビリの現場で何度も見てきた現実として、「準備できていなかった」ことで家族全員が苦しむケースはとても多いです。
親が元気なうちにやっておくべきことは3つ。
- 財産の把握(何があるかを一覧にする)
- 遺言書の作成(誰に何を渡すか残しておく)
- 税理士への相談(うちの場合はどうか早めに確認する)
「まだ早い」と思っているうちが、一番いいタイミングです。
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