「親の財産、聞けていますか?」地主家系3代目が語る、親子で財産を共有することの大切さ 相続

「親の財産、聞けていますか?」地主家系3代目が語る、親子で財産を共有することの大切さ

少し、個人的な話をさせてください。

私の家は、地主家系です。

こう書くと「お金持ちでいいですね」と思われるかもしれません。でも実際は、土地・建物・家族法人・税金が複雑に絡み合っていて、「次の世代に何をどう引き継ぐか」を考えると、気が遠くなりそうな問題が山積みです。

私自身は現役の理学療法士であり、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持つ大家でもあります。いわば「医療」と「不動産」の両方の現場を知っている立場です。

それでも——正直に言うと、親と「財産の話」をちゃんとできるようになったのは、ここ数年のことです。


地主家系の現実:「財産がある」ことは「整理されている」ではない

地主家系とひと言で言っても、その実態は案外ぐちゃっとしています。

  • 土地がどこに何筆あるか、親も把握しきれていない
  • 古いアパートの建物が誰名義か、登記を見ないとわからない
  • 家族法人の持ち分が誰にどれだけあるか、税理士しか知らない
  • 銀行ローンが残っているかどうか、子どもには教えていない

こういうことが、珍しくないんです。

財産がある家ほど、情報が分散していて、整理されていないことがある。

そして、整理されないまま相続が起きると、家族が大変な思いをします。「財産があるのに相続で揉めた」という話は、珍しくありません。


かつて私は、親に「お金の話」が聞けなかった

親世代は、なぜかお金の話を子どもにしたがらない傾向があります。

「子どもに期待させたくない」「まだ死なない」「話したら縁起が悪い」——いろんな理由があると思います。

私も、長い間そうでした。

親が賃貸物件を持っていることは知っていた。でも具体的に何棟あって、ローンがいくら残っていて、管理会社はどこで、税理士は誰か——そういうことは、聞いたことがなかった。

「聞いたら、財産を狙っているみたいでイヤだな」という遠慮もありました。親も「まだ早い」と思っていたかもしれません。

結果として、「いざというとき」に何も知らない状態が長く続いていたんです。


きっかけは、訪問リハビリの現場でした

私が訪問リハビリで患者さんの家に伺うと、ときどき「準備できていない家族」に出会います。

突然の入院、急激な認知機能の低下、そして家族が何も知らないまま「判断を求められる」状況——。

「親の口座がどこにあるかわからない」「土地の権利書がどこにあるかわからない」「保険に入っていたかどうかも知らない」

そういう家族が、どれだけ困るか。現場で何度も見てきました。

そのたびに、「うちも同じことが起きるかもしれない」と思いました。地主家系で、財産の規模が大きいほど、準備できていないときの混乱も大きくなります。

訪問リハビリの経験が、私を「親子で話そう」という行動に向かわせてくれたんです。


少しずつ、親子で話せるようになったプロセス

最初は、うまくいきませんでした。

「物件ってどうなってるの?」と聞くと、「まだそういう話は早い」と流されました。「ローンとか大丈夫なの?」と聞くと、少し不機嫌になられました。

それで気づいたのが、私の聞き方が「確認する」「質問する」になっていたということです。

まるで審査するみたいな雰囲気を感じさせてしまっていたのかもしれません。

少し変えてみました。

「自分も大家として勉強中だから、一緒に考えたい」「将来のことを一緒に整理できたら安心だと思って」——そういうスタンスで話すようにしました。

責める・確認するではなく、一緒に考えるへのシフトです。

すると、少しずつ話せるようになりました。どこに土地があるか、どの税理士さんと付き合っているか、保険はどうなっているか——少しずつ、情報を共有できるようになってきました。

全部が一気に解決したわけではありません。でも「話せる関係」になれただけで、ずいぶん安心感が違います。


地主じゃなくても、不動産が一つあれば同じこと

ここまで「地主家系」という言葉を使ってきましたが、別に大きな財産がなくても、同じ問題は起きます。

親が家を一軒持っているだけで、相続は複雑になります。

  • 相続人が複数いれば、誰がどの割合で引き継ぐかを決めないといけない
  • 売るか、住み続けるか、貸すか、判断が必要
  • 名義変更(相続登記)は、今は義務化されています

「うちはそんな大した財産ないから」と思っている方も、一度立ち止まって考えてみてください。

財産の大小よりも、「準備しているかどうか」のほうが、相続の大変さを決めます。


読者へのメッセージ:今日、一つだけ聞いてみてください

「親に財産の話を聞く」というのは、重いことに感じるかもしれません。

でも、考えてみてください。

親世代だって、子どもに何も知らせないまま死にたいとは思っていないはずです。「話すきっかけがない」「縁起が悪い気がする」「子どもに心配させたくない」——そういう遠慮が、話せない状態を作っているだけかもしれません。

「将来一緒に考えたいから、少し教えてほしい」——この一言が、入り口になります。

保険証券がどこにあるか。預金口座はどの銀行か。土地の権利書はどこか。まず一つだけ聞いてみることから始められます。

財産の話は重い。でも、それは家族の未来を一緒に守る話でもあります。


まとめ

  • 地主家系でも「財産がある=整理されている」ではない。情報の共有がカギ。
  • 訪問リハビリの現場で「準備していない家族」の大変さを何度も見てきた。
  • 「確認する」から「一緒に考える」へのスタンスの変化で、親子の会話が変わる。
  • 地主じゃなくても、不動産一軒あれば同じことが起きる。
  • まず一つだけ、今日聞いてみることが相続準備の第一歩。

「財産の話は重い。でも家族の絆の話でもある」——そう思って、一歩踏み出してみてください。


著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。

📖 Kindle本:『訪問リハビリで見た、老後の住まいの「正解」と「嘘」』(¥500 / KU読み放題対象)

📚 この記事を書くにあたって参考にした本

相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方 書影

相続格差 「お金」と「思い」のモメない引き継ぎ方

天野隆・税理士法人レガシィ著/青春新書

けいすけ

けいすけ

親子で話しにくい相続の話をうまく切り出すコツが、実態ベースで書かれています。読んで参考になりました。

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けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 11期目の大家。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。