先日、わが家の顧問税理士から相続の話を聞く機会がありました。私は地主の家系で、いずれ土地や建物を引き継ぐ立場です。そこで改めて教わって驚いたのが、「相続には、やることに一つずつ期限がついている」ということでした。
しかも、その期限は通夜・葬式・四十九日と、心も体も一番つらい時期と重なります。
この記事では、「親が亡くなった後、いつまでに何をすればいいのか」を、期限ごとの”時間割”にして整理しました。私は税理士ではなく、あくまで地主家系で相続を学んでいる大家の立場ですが、だからこそ「専門用語をかみくだく」ことには自信があります。難しい言葉はぜんぶ言いかえながら進めます。
まず全体像:相続の「時間割」
細かい話に入る前に、全体像を1枚の表で見てください。これだけ頭に入っていれば、「次に何をするんだっけ」と迷わなくなります。
| 期限 | 主にやること |
|---|---|
| 7日以内(亡くなったことを知った日から) | 死亡届を出す |
| 3ヶ月以内(自分が相続人になったと知った日から) | 遺言書の確認/財産と借金の把握/相続放棄するかどうかの判断 |
| 4ヶ月以内(相続を知った日の翌日から) | 準確定申告(故人の所得税の申告) |
| 10ヶ月以内(相続を知った日の翌日から) | 遺産分割協議/相続税の申告と納税 |
| (その後)3年以内 | 相続登記(不動産の名義変更)※2024年から義務 |
ポイントは、期限の早いものほど「お金を失わないため」の手続きだということです。特に3ヶ月の相続放棄と10ヶ月の相続税は、過ぎると取り返しがつきません。
なお、期限の数え方は「亡くなった日」ではなく「知った日」が基準です。同居の家族ならほぼ同じ日になりますが、疎遠な親族の相続で亡くなったことを後から知った場合は、そこから数えます。順番に見ていきましょう。
【7日以内】死亡届を出す
最初の手続きはこれです。病院でもらう「死亡診断書」を添えて、亡くなった方の住所地の市区町村役場に「死亡届」を出します。
葬儀社が代行してくれることも多いので、ここで慌てることはあまりありません。
ひとつだけ覚えておきたいのは、葬式費用の領収書はきちんと取っておくこと。あとで相続税を計算するとき、葬式費用は遺産から差し引ける(=税金が少し安くなる)ので、捨てずに保管しておきます。
【3ヶ月以内】ここが最初の山場
3ヶ月以内にやることは3つ。この期間が、相続でいちばん大事な分かれ道です。
①遺言書があるか確認する
遺言書があるかどうかで、その後の進め方がまったく変わります。
手書きの遺言書(自筆証書遺言)を見つけたら、勝手に開けてはいけません。家庭裁判所で「検認(けんにん)」という、中身を確認してもらう手続きが必要です。勝手に開けると過料(罰金のようなもの)の対象になることがあります。
②財産と「借金」を調べる
通帳・不動産・株などのプラスの財産だけでなく、借金(マイナスの財産)も一緒に引き継ぐのが相続です。ここを見落とすと危険です。
ざっくりでいいので「財産目録」、つまり財産と借金のリストを作ります。
③借金が多いなら「相続放棄」を3ヶ月以内に
もし借金のほうが多そうなら、相続放棄(そうぞくほうき)という選択肢があります。プラスもマイナスも、すべて引き継がない、という手続きです。
これには「3ヶ月以内」という法律で決まった期限があります。ここを過ぎると原則として放棄できなくなり、借金まで背負うことになりかねません。相続で唯一「うっかり」が命取りになる部分なので、最優先で考えてください。
くわしくは別記事で解説しています → 相続放棄のデメリットとやり方——3ヶ月の期限と管理義務の落とし穴
【4ヶ月以内】準確定申告(じゅんかくていしんこく)
聞き慣れない言葉ですが、難しくありません。
ふだん確定申告をしていた人(個人事業主や、不動産の家賃収入がある人など)が亡くなった場合、その年の1月1日から亡くなった日までの分の所得税を、代わりに相続人が申告・納税します。これを「準確定申告」といい、期限は4ヶ月以内です。
親が会社員だけで確定申告と無縁だった場合は、基本的に必要ありません。大家業をしていた親や、自営業だった親の場合に出てくる手続き、と覚えておけば十分です。
【10ヶ月以内】遺産分割と相続税——最大の関門
①遺産分割協議(誰が何をもらうか決める)
相続人全員で「誰がどの財産を引き継ぐか」を話し合います。これを遺産分割協議(いさんぶんかつきょうぎ)といい、決まった内容を「遺産分割協議書」という書類にまとめ、全員が署名・押印します。これがその後のすべての名義変更の土台になります。
このとき、戸籍をたくさん集める必要が出てきますが、「法定相続情報証明制度」という仕組みを使うと、同じ戸籍の束を何度も出さずに済んで楽になります。
戸籍集めを楽にする方法 → 相続手続きで同じ書類を何度も集めなくていい——「法定相続情報証明制度」を使えばこんなに楽になる
②相続税の申告と納税
遺産の合計が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合、相続税の申告が必要です。期限は10ヶ月以内。
とはいえ、相続税が実際にかかるのは亡くなった人全体の約10%だけです。多くの家庭では「申告が必要かどうか」をまず確認するところからになります。
まずここを確認 → 相続税の申告は必要?かかるのは10人に1人だけ 自分でやる場合 → 相続税の申告は自分でできる?必要な書類・手順
大家・地主家系がいちばん気をつけたい「納税資金」の話
ここからは、私のような土地や建物が多い家ならではの話です。普通の解説書にはあまり書かれていませんが、現場ではここが一番こわい部分です。
相続税には、「お金(現金)で、一括で払うのが原則」というルールがあります。
ここに落とし穴があります。遺産が土地や建物ばかりで、現金が少ない家だと、「相続税は何千万円、でも手元の現金は足りない」という事態が起きるのです。土地は持っているのに、税金を払う現金がない——地主家系が昔から「土地を切り売り」してきた理由の一つがこれです。
打つ手はいくつかあります。
- 延納(えんのう):相続税を分割して、何年かに分けて払う
- 物納(ぶつのう):現金の代わりに、土地や建物そのもので納める
ただ、どちらも条件が細かく、簡単ではありません。
払えないときの選択肢 → 相続税をお金で払えない——土地や建物で納める「物納」という選択肢
私が顧問税理士の話で一番納得したのは、「土地が多い家ほど、親が元気なうちの準備で結果が大きく変わる」ということでした。亡くなってからでは打てる手が限られるからです。
いちばんの対策は「親が元気なうちの準備」
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、亡くなった後の手続きは、どれも「期限に追われながら、限られた選択肢の中でやりくりする」ものです。
本当に効くのは、親が元気なうちにやっておく準備のほうです。
- 遺言書を用意しておけば、遺産分割でもめにくくなります
- 不動産の分け方や納税資金を、生前に家族で話しておくだけでも全然違います
元気なうちにやること → 遺言書の書き方と必要性——もめない相続のために親が元気なうちにやること
「縁起でもない」と先延ばしにしがちですが、訪問リハビリの仕事で多くのご家庭を見てきた立場でも、大家として土地を引き継ぐ立場でも、準備した家としなかった家の差は本当に大きいと感じています。
まとめ:迷ったら、早めに専門家へ
| 期限 | やること | ここが大事 |
|---|---|---|
| 7日 | 死亡届 | 葬式費用の領収書は保管 |
| 3ヶ月 | 遺言書確認・財産把握・相続放棄 | 借金が多いなら放棄を最優先で判断 |
| 4ヶ月 | 準確定申告 | 大家・自営業の親で必要 |
| 10ヶ月 | 遺産分割・相続税の申告と納税 | 現金一括が原則=納税資金に注意 |
| 3年 | 相続登記(名義変更) | 2024年から義務 |
相続は「時間との戦い」です。そして、相続税の計算や不動産の評価は、素人だけで進めるには専門性が高すぎる部分があります。特に土地・建物が多い家は、判断を一つ間違えるだけで数百万円単位で結果が変わることもあります。
具体的な税額の計算や手続きは、税理士・司法書士などの専門家に相談してください。多くの事務所が初回無料相談を行っています。「うちは相談するほどでもないかな」と思っても、一度プロに全体像を整理してもらうだけで、ぐっと動きやすくなります。
不動産そのものを「売る・貸す・住む」でどうするかは、こちらの記事も参考にしてください。
地域・専門分野・費用で絞り込み。初回相談は無料の先生も多いです。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。地主の家系に生まれ、法人役員として土地・建物の管理に関わりながら、医療と不動産の両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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期限が4か月と短い準確定申告は、必要な人・不要な人が分かれます。こちらもあわせてご確認ください。
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