遺言書を見つけたら開けてはいけない——家庭裁判所の「検認」とは?手続きと注意点をわかりやすく解説 相続

遺言書を見つけたら開けてはいけない——家庭裁判所の「検認」とは?手続きと注意点をわかりやすく解説

親が亡くなり、遺品を整理していたら、机の引き出しから「遺言書」と書かれた封筒が出てきた——。

このとき、絶対にやってはいけないことがあります。

その場で開封することです。

「中身を確認しなきゃ」という気持ちは当然です。でも、封のされた遺言書を勝手に開けると法律違反(5万円以下の過料)になり、何より「開封時に中身をすり替えたのでは」と他の相続人に疑われる火種になります。

正しい手順は、家庭裁判所で「検認(けんにん)」を受けること。今日はこの検認を、わかりやすく解説します。

この記事の結論

  • 手書きの遺言書(自筆証書遺言)を見つけたら、開封せず家庭裁判所へ
  • 検認=遺言書の存在と状態を、裁判所が記録に残す手続き。改ざんやすり替えを防ぐのが目的
  • 検認が終わるまで1〜2か月程度かかる。相続手続きはその間ストップ
  • 公正証書遺言と、法務局に保管された自筆証書遺言は検認不要(ここが遺言の作り方で差がつくポイント)
  • 検認は遺言が有効かどうかの判定ではない。ここは誤解が多い

1. 検認とは——「開封の儀式」を裁判所で行う理由

検認とは、家庭裁判所が相続人の立ち会いのもとで遺言書を開封し、「この日、この状態の遺言書が確かに存在した」と公式に記録する手続きです。

目的はただ一つ、偽造・改ざん・すり替えの防止

誰かが自宅でこっそり開封できてしまうと、「都合の悪いページを抜いたのでは?」「書き換えたのでは?」という疑いが一生つきまといます。だから法律は、封印のある遺言書は家庭裁判所で、相続人の立ち会いのもとでしか開封できないと決めているのです。

これは「疑われないための手続き」でもあります。発見した人自身を守る制度だと考えてください。

2. 検認が必要な遺言・不要な遺言

遺言の種類検認
自筆証書遺言(自宅保管)必要
自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用)不要
公正証書遺言(公証役場で作成)不要

ポイントは、同じ手書きの遺言でも、法務局に預けてあれば検認不要ということ。法務局が原本を保管しているので、改ざんの心配がないからです。

ここで一つ、間違えやすいことがあります。封がされていない遺言書でも、検認は必要です。

封がなければ「勝手に開けた」問題は起きません。でも、検認を受けないまま遺言書を使うこと自体が過料の対象です。封筒に入っていなかったから大丈夫、と思ってそのまま銀行に持って行っても、手続きは進みません。封の有無ではなく、「手書きの遺言かどうか」で判断してください。

つまり親の立場からすると、「自宅の引き出しに遺言を隠す」より「法務局に預ける」「公正証書で作る」ほうが、残された家族の手間を1〜2か月分減らせるわけです。これから遺言を準備する方は、ぜひ覚えておいてください。

3. 検認の流れ——おおよそ1〜2か月

  1. 申立て:遺言書を発見した人(または保管していた人)が、亡くなった親の最後の住所地の家庭裁判所に検認を申し立てます
  2. 書類集め:亡くなった親の出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の戸籍などが必要です。この戸籍集めが一番の手間です(法定相続情報証明制度を併用すると、後の手続きが楽になります)
  3. 裁判所から相続人全員に通知:検認を行う日(検認期日)が知らされます
  4. 検認期日:裁判所で開封・確認。申立人は出席必須ですが、他の相続人の出欠は自由です(全員揃わなくても行われます)
  5. 検認済証明書の発行:これがついて初めて、遺言書が「使える書類」になります

申立てから検認期日まで、目安として1〜2か月。その間、遺言書を使う相続手続きは進められません。

費用は、遺言書1通につき収入印紙800円と、裁判所からの連絡用の郵便切手代(数百円〜千円程度。金額は裁判所によって違います)。手続きそのものは高くありません。時間と戸籍集めの手間が、本当のコストだと思ってください。

4. よくある誤解——「検認された=有効な遺言」ではない

ここ、本当に誤解が多いところです。

検認は「遺言書がこの状態で存在した」ことを記録するだけで、遺言の内容が法律的に有効かどうかは判断しません

日付がない、署名がない、財産の特定があいまい——そうした理由で検認を経た遺言が後から無効と争われることは普通にあります。逆に、検認を受けていなくても遺言自体が無効になるわけではありません(ただし手続きには使えず、過料のリスクがあります)。

「検認済み=お墨付き」ではない。内容に不安があれば、弁護士や司法書士に確認してもらってください。

5. 検認しないとどうなる?

  • 不動産の名義変更(相続登記)ができない:検認済証明書のない自筆遺言では、法務局が受け付けてくれません。相続登記は今や義務なので、放置はそのまま義務違反につながります
  • 銀行の相続手続きでも使えない:預金の解約・払い戻しも同じです
  • 勝手に開封すると5万円以下の過料:さらに、故意に遺言書を隠したり破棄したりすると、相続人の資格を失う(相続欠格)という重い結果もありえます

まとめ

  • 手書きの遺言書は開けずに家庭裁判所へ。開封は過料+疑いの火種。封がなくても検認は必要
  • 検認は改ざん防止の記録手続き。有効性のお墨付きではない
  • 期間は1〜2か月。戸籍集めが最初の山
  • 公正証書遺言・法務局保管なら検認不要——遺言を作る側はこちらがおすすめ
  • 検認済証明書がないと、登記も預金もすべて止まる

遺言書は、見つけた瞬間の対応で、その後の相続の空気が決まります。「開けずに、裁判所へ」。この一つだけでも、家族に伝えておいてください。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。