退院日が決まってからでは間に合わない——介護保険の住宅改修、申請から工事完了までの本当の日数 介護リフォーム

退院日が決まってからでは間に合わない——介護保険の住宅改修、申請から工事完了までの本当の日数

「来週退院なので、それまでに手すりをつけたいんです」

訪問リハビリの現場で、ご家族からこう言われることがあります。お気持ちはとてもよく分かります。でも——間に合わないことがほとんどです。

介護保険の住宅改修は、工事の前に申請して、承認をもらってから工事する制度だからです。急いでいるからといって、先に工事をしてしまうと1円も出ません

今日は、申請から工事完了までに実際どれくらいかかるのか、そして間に合わないときにどうするかをお話しします。

この記事の結論

  • 住宅改修は必ず「工事前」に申請。先に工事すると保険が使えない
  • 要介護認定をすでに持っていても、申請から工事完了まで3〜4週間は見ておく
  • 認定がまだの状態からだと、1〜2か月かかることもある
  • 退院日が決まってから動き出すと、まず間に合わない
  • 間に合わないときは、工事のいらない福祉用具で当面をしのぐ
  • 一番大事なのは、入院中の早い段階で相談を始めること

1. なぜ「工事前の申請」が必要なのか

介護保険の住宅改修(上限20万円)には、事前申請というルールがあります。

工事の前に「こういう理由で、こういう工事をします」と市区町村に届け出て、承認をもらってから着工する。この順番でないと、給付の対象になりません。

「善意で先に直したのに、なぜ?」と思われるかもしれません。理由は、本当に必要な工事だったかを、工事前でないと確認できないからです。工事が終わってしまうと、元の状態が分からなくなってしまいます。

なので、急いでいるときほど順番を守る必要があります。ここが、この制度の一番つまずきやすいところです。

(制度の中身そのものは介護保険の住宅改修費20万円の記事で詳しく書いています)

2. 実際の流れと、かかる日数

要介護認定をすでに持っている場合の、標準的な流れです。

段階内容目安
ケアマネジャーに相談数日
業者が現地を見て見積・図面を作る3日〜1週間
理由書を作ってもらう数日
市区町村へ事前申請
審査・承認を待つ1〜2週間
工事半日〜2日
事後申請(領収書等の提出)
支給される1〜2か月後

①から⑥までで、だいたい3〜4週間。

一番読めないのが⑤の審査期間です。自治体によって差がありますし、混み具合にも左右されます。「1週間で下りた」こともあれば、「3週間かかった」こともあります。

そして⑧を見てください。お金が実際に戻ってくるのは、工事から1〜2か月後です。それまではいったん全額を立て替えることになります(自治体によっては自己負担分だけ払えばよい「受領委任払い」も使えます)。

3. 認定がまだなら、さらに1か月

もし親御さんがまだ要介護認定を持っていない場合、話はもっと長くなります。

認定の申請をしてから結果が出るまで、原則30日以内とされています。ただし、これはあくまで原則。主治医の意見書が届くのを待つ関係で、1か月を超えることも珍しくありません

つまり——

認定申請(約1か月)+ 住宅改修の手続き(3〜4週間)= 合計1〜2か月

入院期間がこれより短ければ、退院に間に合わないのは当然なのです。

ご家族が段取りが悪いわけではありません。制度の時間軸が、退院のスピードに追いついていないだけです。

4. だから「入院中に動き出す」

では、どうすればいいのか。答えはひとつです。

退院日が決まるのを待たずに、入院中の早い段階で動き出すこと。

要介護認定の申請は、入院中でもできます。「退院してから」と待つ必要はありません。むしろ入院中の方が、主治医の意見書もスムーズです。

相談先は、入院している病院の医療相談室(地域連携室)です。ソーシャルワーカーさんがいます。「退院後の生活が不安なので」と伝えれば、認定申請やケアマネジャー探しの入り口を案内してくれます。

ここに早く行けるかどうかで、その後の1か月が変わります

5. それでも間に合わないときの現実解

とはいえ、急な入院・急な退院は現実にあります。そのときの選択肢です。

① 工事のいらない福祉用具を使う

意外と知られていませんが、工事をしなくても設置できる手すりがあります。

  • 床と天井で突っ張るタイプの手すり(玄関・トイレ・ベッド脇など)
  • 便座に取り付ける手すり
  • 浴槽の縁にはさむ手すり
  • 踏み台(式台)を置く

これらは住宅改修ではなく福祉用具貸与(レンタル)や特定福祉用具販売の対象で、手続きが早いのが最大の利点です。ケアマネジャーに相談すれば、数日で入ることもあります。

「とりあえずこれで当面をしのぎ、落ち着いてから工事を検討する」——現場では、この二段構えがよく取られます。

② 先に工事して、後から申請はできない

念のためもう一度書きます。これはできません。

「間に合わないから、自費で先にやってしまおう」と考える方がいますが、そうするとその工事は永久に給付の対象外になります。20万円の枠は残りますが、その工事分は使えません。

急いでいるときこそ、福祉用具で代替する方が結果的に得です。

③ 退院を少し延ばせないか相談する

これは病院との相談になりますが、「自宅の環境が整うまで」という理由は、正当な相談理由です。医療相談室に事情を伝えてみる価値はあります。

6. 賃貸なら、もうひとつ関門があります

親御さんの住まいが賃貸の場合、大家さんの承諾書も必要になります。その分の日数も見ておく必要があります。

ただ、実際に大家側の立場も知っている身から言うと、承諾自体はそれほど高いハードルではありません。詳しくは賃貸住宅でも介護の住宅改修はできるに書きました。

なお、持ち家であっても、名義が親御さん本人でなければ承諾書は必要です。相続で名義が変わっている実家は要注意です。

まとめ

  • 介護保険の住宅改修は、工事前の申請が絶対条件。先に工事すると給付なし
  • 認定を持っていても、申請から工事完了まで3〜4週間
  • 認定からだと1〜2か月。退院日が決まってからでは、まず間に合わない
  • 対策は入院中の早い段階で医療相談室に相談すること。認定申請は入院中でもできる
  • 間に合わないときは、工事不要の福祉用具(突っ張り手すり等)で当面をしのぐ

住宅改修は「お金の上限20万円」の話ばかりが注目されますが、現場でご家族が本当に困るのは、お金ではなく時間です。

親御さんが入院したら、治療の話と並行して、退院後の家のことも早めに動き出してみてください。1か月早く動くだけで、選べる手段がまったく変わります。

(家に戻ってからの身体の変化については退院後の自宅リハビリの記事も参考にしてください)

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。