「退院のとき、毎日体重を測ってくださいと言われたんです」
心不全で入院した親が家に戻るとき、病院からこう言われることがあります。体重は、心不全が悪くなっていないかを知る大切な目安だからです。
でも実際には、「最初は測っていたけれど、だんだん測らなくなった」という家も少なくありません。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、心不全の親が毎日体重を測り続けられる家の工夫をまとめます。カギになるのは、体重計をどこに置くかです。
この記事の結論
- 心不全では、体重の増え方が、悪くなっているサインになる。だから毎日測ることがすすめられる
- 私が訪問先でよく見るのは、脱衣所に体重計が置いてある家。ただ、狭い・マットがすべる・つかまる所がないなど、足元がふらつきやすい
- すすめたいのは、毎朝通る場所に出しっぱなし、つかまれる所のそば、平らで固い床の上、記録を見える所にの4つ
- 大切なのは、正しく測ることより、続けられること。そして数字を家族も見られるようにすること
なぜ心不全では、毎日体重を測るのか
心不全で心臓のポンプの働きが弱くなると、体に水がたまりやすくなります。水がたまると、足がむくんだり、息が苦しくなったりします。
この水のたまり方を教えてくれるのが、体重の増え方です。息切れやむくみに気づくより前に、体重が先に増えることもあります。
心血管疾患のリハビリのガイドラインでも、3日間や1週間で2kg以上の体重増加は、注意が必要なサインとされています。毎日測っていれば、こうした変化に早く気づけるのです。
心不全の親が家で息切れしやすい場所や、悪化のサインについては「心不全の親の家」にまとめています。
現場から——体重計は脱衣所にあることが多い
私が訪問リハビリで見ている範囲では、体重計は脱衣所に置いてある家が多いです。お風呂の前に服を脱いだついでに乗る、という流れは自然です。
ただ、心不全の方にとって、脱衣所は足元がふらつきやすい場所でもあります。
| 脱衣所でふらつきやすい理由 | どういうことか |
|---|---|
| 狭い | 洗濯機や棚があって、体の向きを変える余裕がない |
| マットがすべる | バスマットの上や近くに体重計があり、足元が安定しない |
| つかまる所がない | 体重計に乗る・降りるときに、手をつく場所がない |
体重計は、乗るときに片足で数センチの段差を上がるのと同じ動きになります。降りるときも同じです。息切れしやすく、ふらつきやすい人にとっては、この小さな動きが転倒のきっかけになることがあります。
冬の脱衣所の寒さと着替えの注意点は「冬の脱衣所が危ない」にまとめています。
毎朝測れる、体重計の置き方4つ
私が現場ですすめているのは、次の4つです。
1. 毎朝通る場所に、出しっぱなしにする
体重計をしまっていると、出すのが面倒で、測らない日が増えていきます。出しっぱなしにしておける場所を選ぶのが第一歩です。
- 寝室を出てすぐの所
- トイレの前
- 洗面所の、歩く道のじゃまにならない所
体重は、毎日同じ条件で測るのが基本です。一般的には、朝起きてトイレをすませたあと、朝ごはんの前がすすめられています。毎朝この流れで通る場所に置いておけば、「ついで」に測れます。
2. つかまれる所のそばに置く
乗るとき・降りるときに、手をつける壁や手すり、しっかりした家具の横に置いてください。
- 壁に手をそえながら乗る
- 手すりがあれば、手すりの横に置く
- キャスター付きのワゴンや軽いいすは、動くのでつかまる所にしない
家の中で手すりの代わりになる置き型の手すりについては「置き型手すり、どこに置く?」にまとめています。
3. 平らで固い床の上に置く
体重計は、畳やカーペットの上だと、正しい数字が出にくいことがあります。足元も沈んで、ふらつきやすくなります。
- フローリングやクッションフロアなど、平らで固い床の上に置く
- 体重計の下や周りに、マットを敷かない
- 毎日同じ場所で測る(場所が変わると数字がずれることがある)
4. 記録を、見える所に置く
測った数字は、書き残さないと、変化に気づけません。
- 体重計のそばに、カレンダーや記録用紙を貼っておく
- 病院でもらった心不全手帳があれば、そこに書く
- スマホのアプリにつながる体重計なら、自動で記録が残る
体重計を選ぶなら、表示の数字が大きく、乗る面が広くて薄いものが、乗り降りしやすく読みやすいです。(Amazonで表示が大きい薄型の体重計を探す)
ペースメーカーを入れている場合は、体に電気を流す体脂肪計の機能は使わないようにします。くわしくは「ペースメーカーの親の家」にまとめました。
私が家族に伝えたいこと
正しく測ることより、続けられる場所がいちばん大事
体重の測り方には、「毎朝同じ時間に」「同じ服装で」といった決まりがあります。もちろん大切です。
でも私は、それ以上に毎日続けられることが大事だと考えています。1日だけ正確に測るより、毎日だいたい同じ条件で測り続けるほうが、変化に気づけるからです。
だからこそ、どこに置くかを家族で一緒に考えてほしいのです。
数字は、家族も見られるようにする
離れて暮らしていると、親の体重の変化には気づけません。
- 記録用紙の写真を、週に1回送ってもらう
- アプリの記録を、家族のスマホでも見られるようにする
- 帰省したときに、記録を一緒に見る
家族が数字を見ているというだけで、親も測り続けやすくなります。
増えたら、我慢せずに相談する
体重が急に増えたときは、「様子を見よう」と我慢しないでください。体重の増え方は、心不全が悪くなっている早いサインです。
むくみや息切れが一緒に出ていなくても、体重が増えたら主治医や訪問看護に連絡する。その線を、家族と親とで先に決めておくと安心です。
測ることで、本人が自分で気づける
毎日体重を測るのは、家族や医療職のためだけではありません。
親自身が「今日は増えているな」と気づけるようになることが、何より大切です。自分の体の変化に自分で気づけると、塩分をひかえる、無理をしないといった行動につながります。
体重が落ち着いている日に、どのくらい動いていいかの目安は「心不全の親、動いていい?」にまとめています。
よくある質問
体重は、1日のいつ測ればいいですか?
一般的には、朝起きてトイレをすませたあと、朝ごはんの前がすすめられています。毎日同じ時間・同じような服装で測ると、変化が分かりやすくなります。主治医から指示がある場合は、そちらを優先してください。
何kg増えたら、病院に連絡すればいいですか?
ガイドラインでは、3日間や1週間で2kg以上の増加が注意のサインとされています。ただ、連絡の目安は人によって違うので、主治医に「何kg増えたら連絡するか」を確認しておいてください。
体重計は、介護保険で買えますか?
体重計は、介護保険の福祉用具(レンタル・購入の対象)には含まれません。自分で用意することになります。
体重計に乗るのがこわいと言われたら?
壁や手すりの横に置いて、手をそえながら乗り降りしてもらってください。乗る面が広く、高さの低い体重計にすると、乗り降りが楽になります。それでも不安な場合は、担当のリハビリ職に相談してください。
この記事のまとめ
- 心不全では、体重の増え方が悪化のサイン。だから毎日測る
- 脱衣所は、狭い・マットがすべる・つかまる所がないで、ふらつきやすい
- 置き方は、毎朝通る場所に出しっぱなし、つかまれる所のそば、平らで固い床、記録を見える所に
- 続けられること、家族も数字を見られること、増えたら我慢せず相談することが大切
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体重の目安や連絡の基準は、病状によって一人ひとり違います。必ず主治医や担当の医療職にご確認ください。介護保険で使える福祉用具は、市区町村の窓口やケアマネジャーでご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。




