「久しぶりに実家に帰ったら、母の足の爪が伸びて、厚くなっていたんです。自分で切れていないみたいで」
親が自分で足の爪を切れなくなるのは、珍しいことではありません。でも、いざ家族が切ろうとすると、「厚くて爪切りが入らない」「深く切って血が出たらどうしよう」と手が止まります。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として現場で見てきたことから、家で切るか、誰に頼むかを決める3つの基準と、足の爪が転倒につながる理由をまとめます。
この記事の結論
- 親が足の爪を切れない理由は、大きく2つ。体が足先まで届かないか、爪そのものが厚く・硬く変わったか
- 判断の基準は3つ。体が届くか、爪や皮膚に異常がないか、糖尿病などの持病があるか
- ヘルパーが爪を切れるのは、爪や周りの皮膚に異常がなく、持病の専門的な管理も要らないときだけ
- 厚い爪・巻き爪・赤みがあるときは、無理に家で切らず、看護師や皮膚科などに任せていい
- 爪のトラブルは、足の指で踏ん張れなくなり、転倒につながることがある
- 「切れなくなった」は、体が硬くなった・力が落ちたサインのこともある
まず、「切れない」には2つの理由がある
足の爪が切れない理由は、大きく2つに分かれます。
| 理由 | どういうことか |
|---|---|
| 体が足先まで届かない | 前かがみになる、足を組む、ひざを胸に引き寄せる、といった動きがしにくくなり、手が足先に届かない |
| 爪そのものが変わった | 爪が厚く・硬くなる、内側に巻く、色が変わる。普通の爪切りでは刃が入らない |
どちらなのかで、頼む相手が変わります。体が届かないだけなら、爪が普通の状態であれば家族やヘルパーが切れます。爪が変わっているなら、専門職に任せたほうが安全です。
判断の基準①|体が、足先まで届くか
最初に見てほしいのは、親の体が、足先まで届くかどうかです。
訪問リハビリの現場では、体が届かずに、自分で爪が切れなくなった方をよく見ます。股関節やひざが曲がりにくい、腰が丸められない、前かがみになるとふらつく。こうした体の変化があると、足先に手が届きません。
ここで知っておいてほしいのは、「爪が切れなくなった」は、体のサインでもあるということです。
- 靴下をはくのに時間がかかるようになった
- 足の指の間を洗いにくそうにしている
- 床に落ちた物を拾うとき、ふらつく
爪と一緒に、こうした様子も出ていたら、体が硬くなったり、力が落ちたりしているのかもしれません。担当のケアマネジャーやリハビリの専門職に伝えてみてください。
判断の基準②|爪や皮膚に、異常がないか
次に見るのは、爪とその周りの皮膚の状態です。
| 家族やヘルパーが切ってもよさそうな状態 | 専門職に任せたい状態 |
|---|---|
| 爪の厚さや色がふつう | 爪が厚く、硬く、普通の爪切りの刃が入らない |
| 爪の周りの皮膚に赤み・腫れがない | 爪が内側に巻いて、皮膚に食い込んでいる |
| 痛がっていない | 爪の周りが赤い・腫れている・膿んでいる |
| 爪が白・黄・茶色ににごっている |
厚生労働省の通知では、介護の現場で医療の資格がない人がしてよい行為の1つとして、次のように書かれています。
爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること
つまり、ヘルパーが爪を切れるのは、爪にも皮膚にも異常がないときだけです。厚い爪や巻き爪は、ヘルパーには頼めないことがあります。
判断の基準③|糖尿病などの持病があるか
3つ目は、持病です。
とくに糖尿病がある場合は、足の小さな傷が治りにくく、悪くなりやすいといわれています。深く切りすぎてできた小さな傷から、足のトラブルが広がることもあります。
先ほどの通知でも、糖尿病などで専門的な管理が必要な場合は、ヘルパーが切ってよい範囲の対象外です。持病がある親の爪は、まず主治医や看護師に相談してからにしてください。
足の爪が、転倒につながる理由
ここで、PTとして伝えたいことがあります。足の爪のトラブルは、転倒とつながっています。
立っているときや歩くとき、床を押して体を支えているのは足の指です。ところが、爪が伸びすぎたり、巻いて痛かったりすると、足の指に体重をかけられなくなります。
現場では、足の指に体重がかからない歩き方が続いて、巻き爪になっている方を見ます。爪は、指で地面を押す力を受けることで、平らな形に保たれやすいという考え方です。体重がかからないと、爪が内側に巻きやすくなるのです。
足の指に体重がかからない歩き方
↓
爪が内側に巻きやすくなる
↓
巻いた爪が痛くて、ますます指で踏ん張れない
↓
ふらつきやすくなり、転倒につながる
ふらつきから転倒が起きる仕組みは「転倒は「つまずき」だけじゃない」にもまとめています。
まとめ:迷ったら、この順番で頼む
ここまでの3つの基準を見たうえで、頼む相手は次の順番で考えると迷いにくくなります。
- 爪も皮膚も異常なし・持病なし → 家族が切る。ヘルパーに頼めることもある
- 爪が厚い・巻いている・皮膚が赤い → 訪問看護を使っていれば、看護師に相談する
- 痛み・腫れ・膿・爪の色の変化がある、または糖尿病がある → 皮膚科や、病院のフットケア外来などで診てもらう
どこに頼めばいいか分からないときは、ケアマネジャーに「足の爪が切れていない」と伝えるのがいちばんの近道です。
私自身も、現場で爪の状態が気になったときは、訪問看護の看護師や家族、ケアマネジャーにつないできました。ケアマネに伝えるときのコツは「ケアマネさんに何を伝えれば動いてくれるか」にまとめています。
最後に、いちばん大事なこと
爪が切れない親を持つ家族に、PTとして伝えたいことは3つです。
- 無理に家で切らなくていい 厚い爪や巻き爪、持病があるときは、専門職に任せてかまいません。家族が切れないのは、恥ずかしいことではありません
- 爪を切るついでに、足全体を見る 指の間、かかとのひび、むくみ、靴ずれ。爪切りは、親の足を見る数少ない機会です
- 「切れない」は、体のサインかもしれない 足先に手が届かなくなったのなら、体が硬くなったり、力が落ちたりしている可能性があります。爪だけの問題で終わらせず、ケアマネジャーやリハビリの専門職に伝えてください
よくある質問
ヘルパーに足の爪を切ってもらえますか?
爪そのものに異常がなく、周りの皮膚にも赤みや膿がなく、糖尿病などで専門的な管理が必要でなければ、ヘルパーが切れる場合があります。厚い爪や巻き爪などは対象外になることがあるので、ケアマネジャーに相談してください。
厚くなった爪は、どこで切ってもらえますか?
訪問看護を使っていれば、看護師に相談できます。そうでなければ、皮膚科や、病院のフットケア外来などで診てもらう方法があります。爪の色がにごっている場合は、爪の病気のこともあるので、一度皮膚科で診てもらうと安心です。
家族が切るときに、気をつけることは?
お風呂のあとなど、爪がやわらかいときに、少しずつ切ります。深く切りすぎず、角を切り込みすぎないようにしてください。親が座って足を台にのせるなど、親も家族も無理のない姿勢をつくってから始めましょう。
爪が切れないことを、ケアマネにどう伝えればいいですか?
「足の爪が伸びていて、本人も家族も切れない」「爪が厚い・巻いている」など、見たままを伝えてください。靴下がはきにくい、ふらつくなど、体の様子も一緒に伝えると、リハビリなどの相談にもつながります。
この記事のまとめ
- 切れない理由は、体が届かないか、爪が変わったか
- 基準は、体が届くか・爪や皮膚に異常がないか・持病があるかの3つ
- ヘルパーが切れるのは、爪にも皮膚にも異常がなく、持病の管理も要らないときだけ
- 爪のトラブルは、足の指で踏ん張れなくなり、転倒につながることがある
- 迷ったら、ケアマネジャーに「爪が切れていない」と伝える
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参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」(平成17年7月26日 医政発第0726005号)(2026年10月25日確認)
爪の状態や持病によって、適切なケアは異なります。痛みや腫れがあるとき、持病があるときは、医師や看護師にご相談ください。サービスの内容は市区町村・事業所によって異なります。窓口やケアマネジャーでご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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