「親がペースメーカーを入れたんですが、家の電子レンジやIHは使って大丈夫なんでしょうか」
ペースメーカーは、電気や電波の影響を受けることがあると聞くと、家じゅうの家電が心配になります。でも、全部をこわがる必要はありません。気をつけるものは、いくつかに決まっています。
この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、ペースメーカーを入れた親の家で、何に気をつければいいかをまとめます。
この記事の結論
- 冷蔵庫・洗濯機・テレビ・電子レンジなど、ほとんどの家電はふつうに使える
- スマホは、植込んだ場所から15cm程度以上離す。胸ポケットに入れない
- IH調理器・IH炊飯器は、使っている間、植込んだ場所を近づけない
- マッサージチェア・低周波治療器・体脂肪計などは、影響があるとされているので使わない
- 私がリハビリで気をつけているのは、植込み側の腕を急に上げないことと、脈や体調の変化を見ること
- 迷ったら主治医やペースメーカー手帳で確認する。そして体調の変化に家族が気づくことが大切
ペースメーカーとは
ペースメーカーは、脈が遅くなりすぎたり、途切れたりするときに、心臓に電気の合図を送って、脈を整える機械です。多くは、鎖骨の下あたりの皮膚の下に植込みます。
精密な電子機器なので、強い電気や電波がすぐ近くにあると、まれに誤って動くことがあります。逆にいえば、距離をとれば、ほとんど心配はありません。
家電は3つに分けて考える
医療機器メーカーの資料をもとに、家の中のものを3つに分けると、次のようになります。
| 分け方 | 主な家電 | 使い方 |
|---|---|---|
| ふつうに使える | 冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジ、パソコン、電気毛布、こたつ、ホットカーペット、温水洗浄便座 | 故障していなければ、いつもどおり使える |
| 距離をとれば使える | スマホ・携帯電話、IH調理器、IH炊飯器 | 植込んだ場所から離して使う |
| 使わない | マッサージチェア、低周波治療器、電位治療器、体脂肪計(体に電気を流すタイプの体重計) | 影響があるとされているので避ける |
どれも、家電が故障していないことと、取扱説明書の注意を守っていることが前提です。
場所ごとに、家の中を見てみる
台所——IH調理器と炊飯器
日本不整脈デバイス工業会は、IH調理器やIH炊飯器を使うときは、植込んだ場所を近づけないよう呼びかけています。保温中のIH炊飯器にも、手が届く距離まで近づかないことが目安です。
- 鍋をかき混ぜるとき、体を調理器に近づけすぎない
- 炊飯器は、立ち止まる場所(流しの前など)から少し離れた所に置く
- 家族が料理を代わる、ガスの調理器を使うなどの方法もある
居間・寝室——スマホとマッサージ器
総務省の指針(2018年)では、スマホや携帯電話は、植込んだ場所から15cm程度以上離すことが目安とされています。
- 胸ポケットに入れない。かばんや、植込んだ側と反対のポケットに入れる
- 通話するときは、植込んだ側と反対の耳に当てる
- 寝るときは、枕元ではなく少し離れた所に置く
マッサージチェアや低周波治療器は、体に電気を流したり、強い電気が近くにあったりするので、使わないようにします。親が以前から使っていた場合は、とくに気をつけてください。
脱衣所——体脂肪計つきの体重計
体脂肪計は、足から体に弱い電気を流して体脂肪を測る仕組みです。ペースメーカーの人は、体脂肪を測る機能は使わないようにします。体重だけを測る体重計を使うか、体脂肪計の機能を切れるものを選んでください。
毎日の体重を測る場合の置き場所は「心不全の親の体重計、どこに置く?」にまとめています。
外出先——お店のゲート
お店の出入口にある盗難防止のゲートは、立ち止まらずに、通路のまん中をまっすぐ通り過ぎるようにします。ゲートのまわりにとどまったり、寄りかかったりしないことも、総務省の指針で呼びかけられています。
私がリハビリで気をつけていること
訪問リハビリで、ペースメーカーを入れた方に関わるとき、私が気をつけていることは2つです。
植込み側の腕を、急に上げない
植込みの手術のあとしばらくは、植込んだ側の腕を急に大きく上げたり、強く振り回したりしないようにします。心臓につながる細い線(リード)が、ずれないようにするためです。
どのくらいの期間、どこまで動かしていいかは、人によって違います。主治医からの指示を確認したうえで、無理のない範囲で動かしてもらいます。
脈と体調の変化を見る
リハビリの前後には、脈や、めまい・ふらつき・動悸がないかを見ています。ペースメーカーが入っていても、体調が変わることはあるからです。
いつもと違う様子があれば、無理に動かず、主治医や訪問看護に相談します。
私が家族に伝えたいこと
迷ったら、主治医とペースメーカー手帳で確認する
家電の中には、ここに書いていないものもたくさんあります。「これは使っていいのかな」と迷ったら、自分たちで判断せず、主治医に聞いてください。
植込みのときに渡されるペースメーカー手帳にも、注意することや、問い合わせ先が書いてあります。手帳は、外出のときも持ち歩くようにしましょう。
体調の変化に、家族が気づく
ペースメーカーを入れても、体調が変わることはあります。家族に気づいてほしいのは、次のような変化です。
- いつもよりめまい・ふらつきがある
- 動悸がする、脈がいつもと違う感じがする
- 息切れやむくみが増えた
- しゃっくりが止まらない、植込んだ場所が腫れている・赤い・熱い
こうした変化があれば、早めに主治医に相談してください。強い胸の痛みや、意識が遠くなるようなときは、ためらわずに救急車を呼んでください。
心臓の病気がある親が、家で息切れしやすい場所の工夫は「心不全の親の家」にまとめています。
よくある質問
電子レンジは使ってもいいですか?
一般的に影響が少ないものとされていて、故障していなければ、ふつうに使えます。
スマホは、どのくらい離せばいいですか?
総務省の指針では、植込んだ場所から15cm程度以上離すことが目安とされています。胸ポケットには入れず、通話は植込んだ側と反対の耳でしてください。
マッサージチェアは使えませんか?
影響があるとされているので、使わないようにします。どうしても使いたい場合は、自己判断せず、主治医に相談してください。
植込み側の腕は、いつから動かしていいですか?
手術のあとしばらくは、植込んだ側の腕を急に大きく上げないようにします。期間や動かしていい範囲は人によって違うので、主治医の指示を確認してください。
この記事のまとめ
- ほとんどの家電は、ふつうに使える
- スマホは15cm程度以上離す。IHは使っている間、植込んだ場所を近づけない
- マッサージチェア・低周波治療器・体脂肪計は使わない
- 手術のあとしばらくは、植込み側の腕を急に上げない
- 迷ったら主治医とペースメーカー手帳で確認し、体調の変化に家族が気づく
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参考:総務省「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器等へ及ぼす影響を防止するための指針」/ボストン・サイエンティフィック ジャパン「植込み型除細動器を植込んだ後の生活」(いずれも2026年10月20日確認)
ペースメーカーの種類や設定によって、注意することは違います。家電の使い方や、動いていい範囲は、必ず主治医や担当の医療職にご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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