心不全の親、動いていい?——家族が知っておく「ちょうどいい」目安 介護リフォーム

心不全の親、動いていい?——家族が知っておく「ちょうどいい」目安

「心臓が悪いんだから、なるべく動かないほうがいいんですよね?」

心不全で入院していた親が家に戻ると、家族はこう考えがちです。また悪くなったらどうしよう、と思えば、無理をさせたくないのは当然です。

でも、心不全の人にとって、動かないことにも危なさがあります。

この記事では、訪問リハビリの理学療法士(PT)として、心不全の親がどのくらい動いていいのか、家族が見て分かる目安をまとめます。

この記事の結論

  • 私が訪問先で見てきたのは、また入院するのが怖くて、本人が動かなくなる場面と、動かないうちに体力が落ちてしまう場面
  • 昔は「心臓病は安静第一」と言われていたが、今は状態が落ち着いていれば、無理のない範囲で動くほうがよいと考えられている
  • 家族が見て分かる目安は、話しながらできるくらいと、次の日に疲れを残さないこと
  • どこまで動いていいかは、病状で違う。目安は主治医やリハビリ職に確認しておく

現場から——怖くて動けない、動かないから弱る

私が訪問リハビリで見てきた場面は、大きく2つです。

場面どういうことか
怖くて動かない入院したときの苦しさを覚えていて、「また悪くなったら」と、本人が動くのを避けるようになる
動かないうちに体力が落ちる退院してから横になっている時間が長くなり、立ち上がりや歩くのが、前より弱くなっていく

この2つは、つながっています。

怖くて動かない → 体力が落ちる → 少し動いただけで息が切れる → ますます動くのが怖くなる。この悪い流れに入ってしまうと、家の中のことも、だんだん自分でできなくなっていきます。

「安静第一」は、今は違う

以前は、心臓の病気のある人は、安静にして運動を避けるべきだと考えられていました。

今は考え方が変わっています。病状が落ち着いていれば、無理のない範囲で体を動かすことが、体力を保ち、生活を続けるために大切だと考えられています。病院や外来で行われている心臓リハビリテーション(心臓の病気の人のためのリハビリ)も、この考え方にもとづくものです。

もちろん、悪くなりかけているときに無理に動くのは危険です。大切なのは「動く・動かない」ではなく、どのくらい動くか。

家族が見て分かる「ちょうどいい」の目安

心血管疾患のリハビリのガイドライン(日本循環器学会ほか、2021年改訂版)では、運動の強さの目安として、次のようなものが示されています。家族にも分かりやすい2つを紹介します。

1. 話しながらできるくらい

ガイドラインには、「快適に会話しながら行える運動強度」という目安があります。

  • 家の中を歩きながら、ふつうに会話ができる → ちょうどいい
  • 息が上がって、話すと途切れる → 強すぎる

自分で感じるきつさでいえば、「楽である」から「ややきつい」くらいまでが目安とされています。「きつい」と感じるところまでは、がんばらなくて大丈夫です。

2. 次の日に疲れを残さない

ガイドラインでは、訪問リハビリの場面について、翌日に疲労が残らない程度に負荷量を調整することが大切だとされています。

  • 次の日も、いつもどおり起きて動ける → ちょうどいい
  • 次の日、ぐったりして起きられない → やりすぎ

調子がいい日に、掃除・買い物・庭の手入れをまとめてやってしまうと、次の日に動けなくなることがあります。少しずつ、毎日のほうが、体にやさしい動き方です。

動き方の工夫

  • いきなり長く歩かず、5〜10分くらいを1日2回など、短く分けて始める
  • 慣れてきたら、少しずつ時間を延ばす
  • 家の中で息が切れやすい場所(お風呂・トイレ・階段)では、休む場所をつくる、座ってできるようにする

息切れしやすい場所の工夫は「心不全の親の家」にまとめています。

やめどき・相談どきのサイン

動いているときや、そのあとに、次のようなことがあれば、その場で休んで、続けないでください。

  • 胸の痛みや圧迫感
  • いつもより強い息切れ、動悸
  • めまい、ふらつき、冷や汗
  • 動いたあとの強い疲れが続く

また、ガイドラインでは、ここ数日で息苦しさや疲れやすさが強くなっているときは、運動を控えるべき状態とされています。体重が急に増えたときも、体に水がたまっているサインです。

こうしたときは、動くことより先に、主治医や訪問看護に相談してください。体重の測り方は「心不全の親の体重計、どこに置く?」にまとめています。

強い胸の痛みや、休んでも治まらない息苦しさがあるときは、ためらわずに救急車を呼んでください。

私が家族に伝えたいこと

安静にしすぎない

心配だからこそ、「寝ていて」と言いたくなります。でも、私が怖いと思うのは、動かないことのほう。

動かない時間が長くなると、体力が落ち、少しの動きで息が切れるようになってしまいます。そうなると、トイレやお風呂など、毎日の生活そのものがつらくなっていきます。

家族にできるのは、止めることより、無理なく動ける環境をつくることです。

目安は、主治医やリハビリ職に確認しておく

どこまで動いていいかは、心臓の状態や、ほかの病気によって一人ひとり違います。

退院のときや外来のときに、次のことを聞いておくと安心です。

  • 家の中で、どのくらい歩いていいか
  • 散歩に出ていいか、どのくらいの時間か
  • どんな症状が出たら、休む・連絡するか

外来や訪問で続けられる心臓リハビリがあるかも、あわせて聞いてみてください。

よくある質問

心不全の親に、散歩をさせてもいいですか?

病状が落ち着いていて、主治医から止められていなければ、無理のない散歩はすすめられることが多いです。話しながら歩けるくらいのペースで、短い時間から始めてください。どのくらい歩いていいかは、主治医やリハビリ職に確認しておきましょう。

本人が怖がって動きません。どうしたらいいですか?

いきなり散歩などを目標にせず、家の中の短い距離や、座ってできることから始めると、安心しやすくなります。「話しながらできるくらいなら大丈夫」という目安を家族と本人で共有しておくと、怖さがやわらぎます。担当のリハビリ職に、一緒に動き方を確認してもらうのもおすすめです。

調子がいい日は、たくさん動いてもいいですか?

調子がいい日にまとめて動くと、次の日に疲れが残ることがあります。次の日に疲れを残さないことを目安に、少しずつ、毎日続けるほうが体にやさしいです。

この記事のまとめ

  • 怖くて動かない → 体力が落ちる → もっと動けなくなる、という悪い流れに気をつける
  • 今は、病状が落ち着いていれば、無理のない範囲で動くほうがよいと考えられている
  • 目安は、話しながらできるくらい、次の日に疲れを残さない
  • 胸の痛み・強い息切れ・急な体重増加などがあれば、動くより先に相談
  • どこまで動いていいかは、主治医やリハビリ職に確認しておく
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運動の目安や、動いてよい範囲は、病状によって一人ひとり違います。必ず主治医や担当の医療職にご確認ください。

親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。