老後は賃貸と持ち家、どっちが安心?——大家でPTの私が本音で考える 賃貸

老後は賃貸と持ち家、どっちが安心?——大家でPTの私が本音で考える

「家は買ったほうがいいの?それとも賃貸のままでいいの?」

これは、何十年も決着のつかない“永遠のテーマ”です。ネットで調べると「持ち家派」と「賃貸派」がそれぞれの正しさを主張していて、読めば読むほど分からなくなりますよね。

ただ、私が思うのは、この質問は「いつの話か」で答えがガラッと変わるということです。20代で考える「賃貸か持ち家か」と、60代・70代の「老後の住まい」では、まったく別の問題なのです。

私は、家族法人で10年以上、賃貸物件の大家をしています。つまり「賃貸を貸す側」の人間です。同時に、理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)として、体が弱った高齢の方の暮らしを家の中まで見てきました。さらに、3人の子どもを育てている真っ最中の父親でもあります。

今日は、この3つの立場から見える「老後の住まい」の本音を、正直にお話しします。

この記事の結論

  • 高齢で入居を断られた経験がある人は約3割(R65調査)。軽視できないが、「絶対に借りられない」わけではない
  • 大家が見ているのは、年齢そのものより「お金(支払い力)」と「孤独死などの不安」
  • だから備え(お金とつながり)があれば、年齢は決定的な壁にはならない。恐れて若いうちに焦って家を買う必要はない
  • いちばんの決め手は、結局「資産があるかどうか」。資産を築いておけば、老後に賃貸も持ち家も柔軟に選べる
  • 買うタイミングは「何のために買うか」で変わる。老後の安心のためなら急がず、子どもと暮らす家のためなら早めもアリ(子と過ごせる期間は有限だから)

順番に、現場目線で話します。

1. 「高齢だと家を借りられない」は本当か?

よく「歳をとると賃貸を借りられなくなるから、若いうちに家を買っておくべきだ」と言われます。これは、まったくの誤りではありません。

実際、ある調査では高齢者の約3人に1人(30.4%)が「年齢を理由に入居を断られた経験がある」と答えています(R65「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」2025年)。決して軽視できない数字です。

ただし、「3割が断られた経験あり」は、裏を返せば多くの人は借りられているということでもあります。「高齢=問答無用で一律お断り」というほど、現場は極端ではありません。

では、大家は何を見ているのか。正直に言うと、気にしているのは「年齢」そのものより、次の2つです。

  • 家賃を払い続けられるか(年金などの支払い能力)
  • 孤独死などのリスク(部屋で亡くなって事故物件になる不安)

裏を返せば、お金の備えがあって、保証会社や連絡先などの“つながり”を用意できれば、年齢は決定的な壁にはなりません。 この“貸す側”の本音は、別の記事で詳しく書きました。

→ 高齢者は本当に賃貸を借りられない?“貸す側”の大家が正直に話します

つまり、「老後に借りられなくなるのが怖いから」という理由だけで持ち家を急ぐのは、ちょっと心配しすぎかもしれない、ということです。

2. 理学療法士として見た「老後の住まい」

私は仕事柄、体が弱ってきた高齢の方のお宅へ伺います。そこで強く感じるのが、「歳をとってからの引っ越しは、想像以上に大変」だということです。

若い頃なら、引っ越しは「ちょっと面倒なイベント」くらいのもの。でも、足腰が弱り、認知機能も少し落ちてきた方にとって、住み慣れた家を離れて新しい環境に移ることは、心と体に大きな負担になります。引っ越した直後に一気に元気がなくなってしまう方を、私は何人も見てきました。

家の中の段差をなくしたり、手すりをつけたりするバリアフリー改修も、ポイントです。

ここは誤解されがちですが、賃貸でも、介護保険の住宅改修(手すり設置などに工事費20万円分まで)は使えます。 ただし大家さんの同意書が必要で、退去時の原状回復も考えておく必要があります(→ 賃貸での使い方は介護保険の住宅改修の記事で詳しく解説しています)。一方、持ち家なら、自分の判断で、好きなタイミングで自由に直せる——この“手間のかからなさ”は確かな利点です。

たとえるなら、賃貸は「借りているスーツ」、持ち家は「自分のスーツ」。借り物でも直せはしますが、いちいち持ち主にお伺いを立てる必要がある。自分のものなら、いつでも自分に合わせてサッと直せます。歳をとって体が変わっていく老後ほど、この“身軽に仕立て直せる感覚”が効いてくるのです。

この点では、「自分の住まいを自由に整えられる」のは持ち家の確かな強みだ、というのが現場を見てきた私の実感です。

3. 大家(貸す側)として見た本音

「じゃあ持ち家が正解だね」——と単純に言いたいわけではありません。貸す側の大家として、賃貸の良さもよく分かっているからです。

賃貸の最大の強みは、やはり「身軽さ」と「予想外への強さ」です。

  • 隣にトラブルを起こす人が引っ越してきても、自分が出ていけばいい
  • 災害で住めなくなっても、家という大きな資産を失うわけではない
  • 設備が壊れても、修理代は基本的に大家負担

持ち家だと、給湯器が壊れても屋根が傷んでも、すべて自分のお金で直すことになります。私自身、大家として毎年あちこちの修繕費を払っていますが、家を「持つ」というのは、こういう維持コストを一生背負うことでもあります。

つまり、賃貸は「気楽さ」を、持ち家は「安心と自由」を買っている——どちらが上、という話ではないのです。

4. 結局いちばんの決め手は「お金」

ここまで読んで、「で、結局どっちがいいの?」と思った方もいるはずです。

私の答えは、「賃貸か持ち家か」より先に、もっと大事なことがある、です。それは——資産(お金)があるかどうか

  • 資産があれば:老後に「賃貸を借りる」ことも「持ち家を現金で買う」ことも、そのとき自由に選べます。家賃の支払い能力も証明できるので、賃貸も借りやすい
  • 資産がないと:家を買うのはもちろん、賃貸も「払い続けられるか」を心配されて、借りにくくなります

つまり、老後の住まいの選択肢を広げる一番確実な方法は、「家を急いで買うこと」ではなく、「若いうちから稼ぐ力・貯める力を鍛えて、資産を築いておくこと」なのです。

逆に言えば、老後の賃貸を不安に思って、30代・40代で無理にローンを組んで家を買う必要はありません。 その時期に必要な家(子育て向けの広さ・立地)と、70歳を過ぎて必要な家は、まったく違うからです。資産さえあれば、家族の形が固まった老後に、そのときの自分に合う家を選べばいい——そう考えると、気持ちもずいぶん軽くなります。

なお、持ち家には住宅ローン控除や、売るときの「3,000万円特別控除」といった税の優遇もあります。買う・住み替える側のお金の話は、こちらもどうぞ。

→ 実家を売って住み替えるなら知っておきたい「買換え特例」

5. 3児の父としての、私の今の本音

ここからは、私個人の今の考えです。

正直に言うと、子育て真っ最中の今、わが家は賃貸を選んでいます。 先の見通しや資金の都合もあり、今の時期は身軽でいられる賃貸がありがたい、というのが実情です。

ただ、ひとつ正直に補足させてください。「家を買うタイミング」は、“何のために買うか”で変わる、と私は考えています。

  • 「老後の安心」のために買うなら:急ぐ必要はありません。無理に若いうちにローンを背負うより、資産を築いて、老後に自分に合う家を選べばいい
  • 「子どもと暮らす我が家」のために買うなら:私はむしろ早いほうがいいと思います。子どもと一緒に暮らせる期間は、生まれてから巣立つまでの十数年だけ。思春期になれば、家にいる時間もどんどん減っていきます。大きくなってから買っても、家族みんなでその家を楽しめる時間は、わずかしか残っていないのです

だからわが家も、条件が整えば「子どもと過ごす家」として早めに買うのも十分アリだと考えています。今は賃貸ですが、それは各家庭の優先順位とお金の事情次第、ということです。

そして老後の住まいという意味でも、持ち家には「自由に住まいを整えられる良さ」と「住み慣れた家を終の住処にできる安心感」があります(くり返しになりますが、賃貸でも介護保険の住宅改修は使えます。ただ持ち家のほうが、自分の判断で動けます)。

「賃貸か持ち家か」も「いつ買うか」も、結局は自分と家族が、何をいちばん大事にするかで決まる——大家でPTの私の、今の正直な本音です。

大家として「ずっと賃貸に住んでください」と言うほうが、本当は得かもしれません。でも、PTとして老後の現実を見てきた人間としては、お金の準備さえできていれば、賃貸でも持ち家でもいい——これが私の正直な本音です。

まとめ

  • 高齢で断られた経験がある人は約3割(軽視できない)。でも「絶対に借りられない」わけではない
  • 「賃貸か持ち家か」の前に、いちばんの決め手は「資産(お金)があるか」
  • だから老後の不安だけを理由に、焦って若いうちに買う必要はない。資産を築けば、老後に賃貸も持ち家も柔軟に選べる
  • ただし買う”目的”でタイミングは変わる。老後の安心のためなら急がず、子どもと暮らす家のためなら早めもアリ(子と過ごせる期間は有限)

大事なのは、「持ち家派 vs 賃貸派」の勝ち負けではなく、自分と家族が、その時々で安心して暮らせる形を選ぶことです。特に老後の住まいは、お金の話であると同時に「健康に暮らせるか」という話でもあります。早めに考えはじめておいて、損はありません。

なお、本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。住宅の購入や賃貸の判断は、ご自身の家計や家族の状況にあわせて、必要に応じて専門家にもご相談ください。

※データ出典:株式会社R65「高齢者の住宅難民問題に関する実態調査」(2025年)


著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。

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けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。