「転んで骨折して、退院してきたんですけど、要介護1のままなんです」
こういう話を、訪問先で聞くことがあります。体はずいぶん変わったのに、介護保険の認定は前のまま。使えるサービスの上限も前のまま。だから、本当に必要な回数のデイサービスや訪問リハビリが入れられない。
介護保険の認定には有効期間がありますが、期間の途中でも「見直してください」と申請できます。 それが区分変更申請です。
この記事では、どんな場面で出すものなのか、出す前に知っておきたいことを書きます。
この記事の結論
- 認定の有効期間の途中でも、心身の状態が大きく変わったら「区分変更」を申請できる
- 訪問先で見てきた申請の場面は、転倒・骨折のあとと認知症が進んだときが多い
- 結果は申請した日にさかのぼって効く。申請から原則30日以内に通知が来る
- ただし、上がるとは限らない。全体を見直すので、下がることもある
- 区分変更で決まった認定の有効期間は原則6か月。更新のときの12か月より短い
- 迷ったら、ケアマネジャーに「今の認定、状態に合っていますか」と聞く
区分変更とは——更新を待たずに見直してもらう手続き
介護保険の認定には有効期間があります。新しく申請したときは原則6か月、更新のときは原則12か月です(審査会の判断で3か月〜48か月の幅があります)。
ふつうは、この期間が終わる前に「更新申請」をして、次の認定をもらいます。
でも、期間の途中で体の状態が大きく変わることがあります。そのとき、更新の時期を待たずに「今の認定は合っていないので見直してほしい」と申請するのが区分変更申請です。
| 更新申請 | 区分変更申請 | |
|---|---|---|
| いつ出せるか | 有効期間が終わる60日前から | 有効期間の途中、いつでも |
| 条件 | 期間が終わるから | 心身の状態が大きく変わったとき |
| 結果はいつから効くか | 前の期間が終わった翌日から | 申請した日にさかのぼって |
| 新しい有効期間 | 原則12か月 | 原則6か月 |
申請の窓口は市区町村ですが、実際にはケアマネジャーに相談すれば、書類の準備から申請まで一緒に進めてくれます。結果は申請日から原則30日以内に郵送で届きます。
場面①|転倒・骨折のあと
訪問先で区分変更の話が出る場面で、私がいちばん多く見てきたのが、転んで骨折したあとです。
骨折の前は、家の中を自分で歩き、トイレも風呂も一人でできていた。だから要支援や要介護1だった。骨折して手術をして、退院してきたら、歩くのに歩行器が要る、風呂は一人では無理、夜中のトイレが怖い。
体は明らかに変わっているのに、認定は骨折前のままです。
このとき困るのは、使えるサービスの上限(支給限度額)が前のままだということです。要介護1と要介護3では、上限が10万円以上違います。骨折後に必要な訪問リハビリ・デイサービス・福祉用具のレンタルを全部入れると、前の上限では足りないことがあります。
だから、実際には入院中に区分変更を出すことがほとんどです。退院の見通しが立ったころに、病院の相談員やケアマネジャーが「区分変更を出しましょう」と動いてくれます。家族から言い出さなくても進むことが多いですが、話が出ていなければ「区分変更は出していますか」と聞いてください。退院前に家族が確認しておくことは「退院前カンファレンスで、家族が聞いておくこと」に書いています。
場面②|認知症が進んだとき
もう1つ、訪問先で見てきたのが、認知症が進んだときです。
こちらは骨折と違って、はっきりした「日」がありません。だから気づくのが遅れます。
体は動く。歩けるし、立てる。でも、薬を飲み忘れる、火を消し忘れる、同じことを何度も聞く、夜に出かけようとする。家族が目を離せない時間が、じわじわ増えていく。
介護保険の認定は、体の動きだけでなく、「見守りにどれだけ手間がかかるか」も見ています。認知症で見守りが増えているなら、認定が上がる理由になります。でも、本人は「できます」と言うし、体は動くので、調査の日にはそう見えないことがあります。
このときは、区分変更を出す前に、「普段どれだけ手がかかっているか」を家族が記録しておくことが要ります。調査の日に何を伝えるかは「認定調査の日、親は「できます」と言う」に書きました。
場面③|退院直後、認定がまだ生活に追いついていないとき
骨折に限らず、脳卒中や心臓の病気、肺炎などで入院したときも同じで、入院中に区分変更を出すのが普通の流れです。
ただ、入院中に出した認定が、家に帰ってからの生活に合わないことがあります。病院では歩けていたのに、家の廊下や段差では歩けない。病院のトイレは手すりだらけだったのに、家のトイレにはない。入院中は病院がすべて面倒を見てくれるので、家族が「体が変わった」ことを実感するのは、退院して家に帰ってからです。「こんなに動けないとは思わなかった」という言葉を、退院直後の訪問でよく聞きます。
退院後に認定が合っていないと感じたら、もう一度ケアマネジャーに相談してください。退院直後は「暫定ケアプラン」といって、認定結果が出る前にサービスを始める仕組みもあります。ただし、結果が思ったより軽かった場合、その差額が自己負担になることがあるので、ケアマネジャーとよく確認してから使います。
場面④|逆に、良くなったとき
区分変更は「重くする」だけの手続きではありません。軽くする申請もできます。
リハビリで歩けるようになった、骨折が治って元の生活に戻った。それなのに認定が重いままだと、介護保険料や自己負担の計算に影響することがあります。また、本人が「要介護3」という区分を気にして、外に出るのを嫌がることもあります。
良くなったときに軽くするのは、本人にとって「回復した」という証明にもなります。ただし、軽くなると使えるサービスの上限も下がるので、今使っているサービスがそのまま続けられるかは、先にケアマネジャーと確認してください。
出す前に知っておく3つのこと
区分変更は、出せば必ず上がるものではありません。出す前に、この3つは知っておいてください。
① 上がるとは限らない。下がることもある
区分変更を出すと、審査会は認定を最初から見直します。「今より重くしてください」という申請ではなく、「今の状態で判定し直してください」という申請です。
だから、結果が今より軽くなることもあります。特に、調査の日に本人ががんばってしまうと、そうなりやすい。出す前に、ケアマネジャーに「今の状態なら、上がる見込みがありますか」と正直に聞いてください。
② 有効期間が短くなる
区分変更で決まった認定の有効期間は、原則6か月です。更新なら12か月(長ければ48か月)なので、区分変更を出すと、次の更新が早く来ます。
これは悪いことばかりではありません。状態が変わりやすい時期に、こまめに見直してもらえるということです。ただ、申請の手間が増えるのは事実です。
③ 要支援から要介護への変更は「新規申請」の扱い
今が要支援1・2で、要介護に変わりそうなときは、手続き上「新規申請」として扱われます。窓口が地域包括支援センターからケアマネジャー(居宅介護支援事業所)に変わることもあります。ケアマネジャーが変わる可能性があることは、先に知っておいてください。
なお、出したあとで「やっぱり下がりそうだ」と分かったときは、結果が出る前なら申請を取り下げられることがあります。取り下げの扱いは市区町村で違うので、迷ったらすぐケアマネジャーに相談してください。
結果に納得できないとき
区分変更の結果にも納得できないときは、都道府県の介護保険審査会に「審査請求」ができます。期限は結果を知った日の翌日から3か月以内です。
ただし、実務では審査請求より「もう一度区分変更を出す」ほうが早いことが多いです。審査請求は結果が出るまで時間がかかり、その間はサービスが増やせないからです。
迷ったら、ケアマネジャーにこの一言
区分変更を出すかどうかは、家族が一人で決めることではありません。ケアマネジャーに、こう聞いてください。
「今の認定、いまの状態に合っていますか」
聞く前に、手元に3つそろえておくと話が早いです。
- 介護保険証(今の要介護度と、有効期間がいつまでか)
- 変わったことのメモ(いつから、何ができなくなったか。「8月の骨折から、夜のトイレに付き添いが要る」のように具体的に)
- 今使っているサービスの内容と回数(デイ週2・訪問リハ週1、など)
この一言で、ケアマネジャーは今使っているサービスの量と、本人の状態を照らし合わせて答えてくれます。「合っていない」なら区分変更、「合っている」ならそのまま。どちらでも、家族は判断の材料をもらえます。
訪問リハビリが入っていれば、担当のPTやOTにも同じことを聞けます。私たちは体の変化を毎週見ているので、「骨折前と比べてここが変わりました」を、ケアマネジャーに伝える役目もしています。
この記事のまとめ
- 有効期間の途中でも、心身の状態が大きく変わったら区分変更を申請できる
- 現場で多い場面は、転倒・骨折のあとと認知症が進んだとき。退院直後、良くなったときにも出せる
- 結果は申請日にさかのぼって効く。通知は原則30日以内
- 上がるとは限らない。全体を見直すので下がることもある
- 区分変更後の有効期間は原則6か月。要支援→要介護は新規申請扱い
- 迷ったら「今の認定、状態に合っていますか」とケアマネジャーに聞く
制度の内容は市区町村・年度によって異なります。ケアマネジャーまたは市区町村の窓口でご確認ください。
認定が上がったあと、使えるサービスの上限と超えたときのことは「介護保険の限度額を超えたら」に書いています。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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