「6畳あるから、介護ベッドは置けますよね」
置けます。でも、置けることと、そこで介助できることは別です。
訪問先で一番よく見るのは、ベッドが壁にぴったりくっついている部屋です。部屋を広く使おうとして壁に寄せた結果、介助できる側が片方だけになり、オムツ交換も体の向きを変えるのも、毎回ベッドの片側から手を伸ばすことになります。
この記事では、介護ベッドを入れる前に「畳数」ではなく「隙間」を測る方法を書きます。
この記事の結論
- 介護ベッドの大きさは、幅90〜100cm・長さ190〜220cm。畳1枚より一回り大きい
- 「6畳あれば置ける」は本当。でも置けることと介助できることは別
- 測るのは畳数ではなく、ベッドの周りの3つの隙間:介助する側・車椅子側・足元
- 目安は、介助する側60cm以上・車椅子側80cm以上・足元60cm以上
- 訪問先で一番多い困りごとは、ベッドを壁にくっつけて介助側が片方しかないこと
- 置く場所は、家族だけで決めない。ケアマネジャーと福祉用具の担当者に部屋を見てもらう
なぜ「6畳あれば大丈夫」では足りないのか
介護ベッドの大きさは、メーカーや型で少し違いますが、だいたい幅90〜100cm・長さ190〜220cmです。畳1枚(およそ90×180cm)より、ひと回り大きい。
6畳の和室は、壁の内側で測るとおよそ2.5m×3.4m前後です(江戸間の目安。地域や建物で違います)。ここにベッドを置くと、床の残りは幅で1.5m、長さで1.2mほど。数字だけ見れば、たしかに置けます。
でも、その残りの床を「どこに」残すかで、介助のしやすさがまったく変わります。
ベッドを壁に寄せて残りを一か所にまとめると、部屋は広く見えますが、介助できる側が片方だけになります。 ベッドの両側に少しずつ残すと、部屋は狭く見えますが、両側から介助できます。
介護ベッドは、「置く家具」ではなく「介助する場所」です。だから、畳数ではなく、ベッドの周りにどれだけ隙間があるかで判断します。
隙間①|介助する側——人が立てる幅60cm
まず、介助する人が立つ側です。
体の向きを変える、オムツを替える、着替えを手伝う、体を起こす。これらは全部、ベッドの横に立ってやります。人が横向きでなく正面を向いて立ち、少しかがめる幅が要ります。目安は60cm以上。
訪問先で一番多いのが、ここが足りない部屋です。ベッドを壁にくっつけているので、介助できるのは反対側だけ。壁側に体を向けたいときは、毎回ベッドの上に乗るか、遠くから手を伸ばすことになります。介助する家族の腰に、一番きます。
両側に60cmずつ取れれば理想です。難しければ、片側だけでも60cm、もう片側は30cm(掃除と、いざというときに人が入れる幅)を残してください。壁にぴったりは、避けたいところです。
隙間②|車椅子側——横付けして向きを変える幅80cm
次に、車椅子を使う側です。
ベッドから車椅子に移るときは、車椅子をベッドに斜めに寄せて、向きを変えて、座ります。車椅子の幅はだいたい60〜65cm。斜めに入れて向きを変えるには、80cm前後の空間が要ります。
この空間は、介助側と同じ側でもかまいません。「介助する人が立つ側=車椅子を寄せる側」として、そちらに80cm以上を取るのが、現場でよくやる配置です。反対側は30cm程度でも成り立ちます。
車椅子を使わない方でも、ポータブルトイレを置く、歩行器で立ち上がるなど、ベッドの横に「何かを置いて使う」場面は出てきます。片側に80cmは、車椅子の有無にかかわらず取っておくと後で困りません。ポータブルトイレの置き場所は「ポータブルトイレはどこに置くか」に書きました。
移乗の段取りそのものは「ベッドから車椅子へ移る動線」に書きました。
隙間③|足元——出入りと、ベッドが動く分の60cm
見落とされやすいのが、ベッドの足元です。
足元は、部屋への出入りの通り道になることが多い場所です。人が通るだけなら60cm、車椅子が通るなら80cmが要ります。足元をドアや押し入れにくっつけると、出入りのたびにベッドの横を回り込むことになります。
もう1つ、介護ベッドは背中や膝を上げる機能(背上げ・膝上げ)を使うと、マットレスの位置が少し動きます。頭側の壁にぴったりつけていても、ベッド本体は動かないので問題ありませんが、足元に物があると、膝上げのときに当たることがあります。足元は60cm、空けておいてください。
頭側は、壁につけて大丈夫です。むしろ頭側を壁につけると、ベッドが安定して、残りの床を足元と両側に回せます。
六畳に置くと、実際にどうなるか
6畳(内側でおよそ2.5m×3.4m)に、幅100cm・長さ210cmのベッドを置いた場合で考えます。
| 置き方 | 残る隙間 | 介助 |
|---|---|---|
| 頭を壁につけ、長い辺を部屋の長い方向に。両側に隙間 | 両側75cmずつ・足元130cm | 両側から介助できる。車椅子も入る |
| 頭を壁につけ、片側を壁にぴったり | 片側150cm・足元130cm | 片側だけ。反対側の介助はベッドに乗る |
| 部屋の短い方向に置く | 両側に隙間はできるが、足元40cm | 出入りが詰まる。膝上げで物に当たる |
同じ6畳でも、置き方で「介助できる部屋」と「介助できない部屋」に分かれます。 家具がタンス1つでも入っていれば、さらに変わります。
だから、ベッドを入れる前に、タンス・座卓・テレビ台をどこに動かすかまで決めておく必要があります。「ベッドが来てから考える」だと、業者が組み立てる当日に慌てて家具を動かし、結局壁にくっつける配置になりがちです。
搬入できるか——ドアと廊下の幅
もう1つ、部屋の中だけでなく、部屋まで運べるかも見ておきます。
介護ベッドは、ボードとフレームに分けて運び込み、部屋の中で組み立てるのが一般的です。だから、大きな家具ほどは搬入に困りません。それでも、玄関のドア、廊下の曲がり角、部屋の入口の幅は、業者に先に伝えておくと安心です。
廊下の幅と車椅子の関係は「車椅子は廊下の幅何cmで通れるか」に書いています。
置く場所は、家族だけで決めない
私は、ベッドを入れる前に「どこに置くか」をケアマネジャーや福祉用具の担当者と相談する場面に、何度も立ち会ってきました。
家族が考える「置きやすい場所」と、介助する側から見た「介助しやすい場所」は、ずれることがあります。家族は部屋を広く残したい。私たちは介助側と車椅子側の隙間を残したい。その両方を見て決めるのが、福祉用具の担当者とリハビリ職の仕事です。
介護保険で介護ベッドを借りるときは、福祉用具の担当者が必ず家に来て、置く場所を一緒に見ます。そのときに「この隙間で介助できますか」「車椅子はどちら側に寄せますか」と聞いてください。訪問リハビリが入っていれば、担当のPT・OTにも「ベッドの置き方を見てほしい」と伝えれば、動作を見て答えます。
介護ベッドを介護保険で借りられる条件は「介護ベッドが借りられない——軽度者の福祉用具レンタルと例外給付」に書いています。
部屋を直す必要があるとき
隙間を測ってみて、どうしても足りないときがあります。押し入れをつぶしてスペースを作る、和室の敷居を撤去して隣の部屋とつなげる、部屋の入口を引き戸に変える。こうした工事は、介護保険の住宅改修(工事費20万円分まで)の対象になるものがあります。
複数の業者に見積もりを取って比べると、同じ内容でも金額に差が出ます。
家族が今日できること
- 部屋の内側の寸法をメジャーで測る(幅と長さ。壁の内側で)
- ベッドを置きたい場所に、新聞紙を100cm×210cmに広げて置いてみる。周りにどれだけ残るかが一目で分かります
- 残った隙間が、介助する側60cm・車椅子側80cm・足元60cmあるか見る
- 足りなければ、動かせる家具を書き出す(タンス・座卓・テレビ台)
- ケアマネジャーに「ベッドを置く場所を、先に見てほしい」と伝える
この記事のまとめ
- 介護ベッドは幅90〜100cm・長さ190〜220cm。畳1枚より大きい
- 「6畳あれば置ける」は本当だが、置けることと介助できることは別
- 測るのは畳数でなく3つの隙間:介助する側60cm・車椅子側80cm・足元60cm
- 一番多い失敗は壁にくっつけて介助側が片方だけになること
- 頭側は壁につけてよい。足元と両側に隙間を回す
- 家具をどこに動かすかまで、ベッドが来る前に決める
- 置く場所はケアマネジャー・福祉用具の担当者と一緒に見て決める
制度の内容は市区町村・年度によって異なります。ケアマネジャーまたは市区町村の窓口でご確認ください。
親の家をどうするかの全体像は「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。





