介護ベッドが借りられない——軽度者の福祉用具レンタルと例外給付 介護リフォーム

介護ベッドが借りられない——軽度者の福祉用具レンタルと例外給付

「介護ベッドを借りたいんですが、要介護1だと無理だと言われました」

訪問リハビリの現場で、ご家族からよく聞く言葉です。布団からの起き上がりが本当につらそうなのに、レンタルの対象外だと言われてしまった——という状況です。

たしかに、要支援1・2や要介護1の方には、原則としてレンタルできない福祉用具があります。

でも、そこで終わりではありません。「例外給付」という道があります。

今日は、何が借りられなくて、どうすれば例外が認められるのか、という話をします。

この記事の結論

  • 要支援1・2と要介護1の方は、介護ベッド・車いすなど6種目が原則レンタル対象外です
  • ただし「例外給付」の仕組みがあり、状態によっては借りられます
  • 鍵になるのは主治医の医学的な所見。ケアマネジャーさんへの相談だけでは通りません
  • 手すり・スロープ・歩行器・つえは、軽度者でも使えます
  • 2024年4月から、一部の用具は「借りる」か「買う」かを選べるようになりました

1. 軽度者が原則レンタルできない6種目

まず、何が対象外なのかを整理します。

要支援1・要支援2・要介護1の方は、次の種目が原則として介護保険でのレンタル対象外です。

種目具体例
車いす・車いす付属品自走式・介助式の車いす、クッションなど
特殊寝台・付属品いわゆる介護ベッド、サイドレール、マットレスなど
床ずれ防止用具エアマットなど
体位変換器寝返りを助ける用具
認知症老人徘徊感知機器外出を知らせるセンサー
移動用リフト昇降座椅子、段差解消機など(つり具は除く)

さらに、自動排泄処理装置(便を自動で吸引するもの)は、要介護3までが原則対象外になります。

なぜ制限があるのか

「使いたい人が使えないのはおかしい」と感じられるかもしれません。

理由は、軽度のうちからこれらを使うと、かえって体の力が落ちてしまうと考えられているからです。自分で起き上がれる人が介護ベッドに頼ると、起き上がる動作をしなくなります。歩ける人が車いすに座ると、歩かなくなります。

理学療法士としては、この考え方自体は理解できます。使わない機能は落ちていくというのは、現場でも実感するところです。

ただ、要介護1でも、本当に起き上がれない方はいます。そのための仕組みが、次にお話しする例外給付です。

2. 軽度者でも使えるもの

先に、制限なく使えるものも確認しておきます。

  • 手すり(工事を伴わない、置くだけ・突っ張り式のもの)
  • スロープ(持ち運びできるタイプ)
  • 歩行器
  • 歩行補助つえ(多点杖、松葉づえなど)

つまり、「立つ・歩く」を助ける用具は、軽度者でも使えます。制限がかかっているのは「寝る・座って移動する」ための用具です。

ここを知っておくと、対象外だと言われたときに代わりの手が打てます。

(家の中のどこが危ないかは転倒しやすい家の特徴5つ、手すりの選び方は手すり設置の基礎知識にまとめています)

歩行器を借りるときは、家の中で本当に使えるかも見ておいてください。廊下の幅で決まることが多く、「歩行器は家の中で使えるか」に詳しく書いています。

3. 例外給付——認められるのはどんなときか

ここが本題です。

原則は対象外でも、利用者の状態から見て必要だと市区町村が確認した場合は、例外的に貸与が認められます。これを「例外給付」と呼びます。

判断される「状態像」

種目ごとに、どういう状態なら必要と認められるかの目安が決まっています。たとえば——

種目状態像の例
車いす日常生活の範囲で移動の支援が特に必要と認められる方
特殊寝台(介護ベッド)日常的に起き上がりが困難な方、寝返りが困難な方
床ずれ防止用具日常的に寝返りが困難な方
認知症老人徘徊感知機器意思の伝達や記憶に支障があり、移動できる方

「要介護1だから無理」ではなく、「その人が実際にどうなのか」で判断されるということです。

認められるまでの2つのルート

① 要介護認定の調査結果で該当する場合

要介護認定を受けるとき、調査員が「起き上がり」「寝返り」などをチェックしています。この結果が該当していれば、比較的スムーズに進みます。

② 調査結果では該当しない場合

こちらが多いです。この場合は、医師の医学的な所見が必要になります。

流れとしては、おおむねこうなります。

  1. ケアマネジャーさんに相談する
  2. 主治医に意見をもらう(診断や状態についての所見)
  3. サービス担当者会議で必要性を検討する
  4. 市区町村が確認して、給付の可否を判断する

ここでいちばん大事なのが、2番目の主治医の所見です。

ケアマネジャーさんに「起き上がりがつらそうなんです」と伝えるだけでは、話が進みません。医学的な裏づけがあって初めて、市区町村が判断できるからです。

4. 現場で見ている「通りやすい伝え方」

例外給付の申請では、具体的な場面を伝えられるかどうかが大きいと感じています。

❌ 通りにくい伝え方

「最近弱ってきて、起きるのが大変そうなんです」

⭕️ 伝わる伝え方

「朝、布団から起き上がるのに5分以上かかっています。手をついても体が起こせず、3回に1回は家族が引き起こしています。夜中のトイレに間に合わないことが週に2回あります」

時間・回数・具体的な場面が入ると、状況がそのまま伝わります。

もちろん、実際より大げさに言うのはいけません。そうではなく、普段見ている場面をそのまま数えて伝える、ということです。ご家族は毎日見ているぶん、「こんなの当たり前」と思って言わないことが多いのです。

リハビリの担当者がいれば、そこも味方になります。「起き上がりの様子を主治医の先生に伝えたいので、書いてもらえませんか」と頼んでみてください。

5. 2024年から「借りる」か「買う」かを選べる用具があります

もう一つ、知っておくと得なことがあります。

2024年4月から、次の4つは「レンタル」と「購入」を選べるようになりました。

  • 固定用スロープ
  • 歩行器(歩行車を除く)
  • 単点杖(松葉づえを除く)
  • 多点杖

いずれも軽度者でも使えるものです。

長く使うことがはっきりしているなら、買ったほうが安くなることがあります。逆に、体の状態が変わりそうなら、借りたほうが柔軟です。

判断に迷ったら、福祉用具の専門相談員さんかケアマネジャーさんに、「うちの場合、どちらが安く済みますか」と率直に聞いてみてください。説明する義務がある側なので、遠慮は要りません。

(スロープを使うか段差を分けるかは玄関の段差、スロープか踏み台かの記事にまとめています)

6. レンタルと住宅改修は別の枠です

混同されやすいので、最後に整理しておきます。

中身枠
福祉用具貸与借りるもの(ベッド・車いす・歩行器など)毎月の利用限度額の中から
特定福祉用具販売買うもの(入浴用いす・ポータブルトイレなど)年間10万円まで
住宅改修工事するもの(手すり取り付け・段差解消など)20万円分まで

この3つは別々の枠です。住宅改修の20万円を使い切っていても、福祉用具は借りられます。

(住宅改修の枠の使い方は介護保険の住宅改修費20万円の記事をご覧ください)

まとめ

  • 要支援1・2と要介護1の方は、介護ベッド・車いすなど6種目が原則レンタル対象外
  • ただし例外給付があり、状態によっては認められます
  • 鍵は主治医の医学的な所見。ケアマネジャーさんへの相談だけでは進みません
  • 伝えるときは「時間・回数・具体的な場面」を数えて
  • 手すり・スロープ・歩行器・つえは軽度者でも使えます
  • スロープ・歩行器・単点杖・多点杖は、借りるか買うかを選べます(2024年4月〜)

「要介護1だから無理です」と言われても、それは入口の話であって、結論ではありません。

まずは担当のケアマネジャーさんに、「例外給付は使えませんか」と聞いてみてください。この言葉を知っているかどうかで、進み方が変わります。

なお、状態の判断や必要性については医師の医学的な判断が必要です。給付の可否は最終的にお住まいの市区町村が決めますので、詳しくは介護保険の窓口や担当のケアマネジャーさんにご確認ください。

介護ベッドを借りられることになったら、置く前に部屋を測っておくと失敗しません。「介護ベッドを置く前に測る3つの隙間」にまとめています。

福祉用具や住宅改修も含めた「親の家をどうするか」の全体像は、「「親の家、どうする?」完全ガイド」に1枚の地図としてまとめています。

けいすけ(運営者)

理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。 医療と不動産、両方の現場から見えてくる「親の家のリアル」を、なるべくフラットな視点で発信しています。