「土地がバラバラで使いにくい」——代々土地を持つ家によくある悩み
代々土地を受け継いできた家では、こんな状態がよくあります。
- 自分の土地と、親戚の土地がとなり合わせで少しずつ入り組んでいる
- 実家の敷地が、いつのまにか兄弟や親戚との「共有名義」になっている
- 使いたい土地が、離れた場所にバラバラに点在している
こういう「バラバラの土地」を、交換して1つにまとめたい——そう考えたとき、頭に浮かぶのが税金の問題です。
「土地を交換したら、税金がかかるんじゃないの?」
今回は、そんなときに使える「固定資産の交換の特例」という仕組みを、できるだけやさしく解説します。
この記事でわかること:
- 土地を交換すると、なぜ税金の話になるのか
- 「固定資産の交換の特例」で税金がどうなるのか
- 使うための条件と、親族間で気をつけたい落とし穴
そもそも「交換」なのに、なぜ税金がかかるの?
まず、ここが多くの人の「え?」ポイントです。
たとえば、AさんとBさんが、それぞれ持っている土地を交換したとします。お金のやり取りはありません。ただの「物々交換」に見えますよね。
ところが税金の世界では、交換も「売った」のと同じ扱いになります。
イメージとしては、こうです。
自分の土地をいったん「売って」、そのお金で相手の土地を「買った」
——と考えるわけです。だから、売ったときに増えていた価値(もうけ)に対して、譲渡所得税という税金がかかるのが原則なのです。
「お金をもらってないのに税金だけ取られる」——これでは、せっかくの土地の整理が進みません。そこで用意されているのが、次の特例です。
「固定資産の交換の特例」=税金を先送りできる仕組み
一定の条件を満たして土地や建物を交換したときは、「譲渡がなかったもの」として扱ってよいという特例があります。これが「固定資産の交換の特例」です。
かんたんに言うと、
条件を満たして交換した場合は、その時点では税金がかからない
という仕組みです。
ただし、ここが大事なところなので、はっきり書いておきます。
これは「税金がタダになる(非課税)」ではなく、「税金を先送りする(繰り延べ)」制度です。
将来その土地を本当に売るときには、もともとの土地を買ったときの値段をベースに計算されるので、先送りにしていた分の税金は、そのとき精算されることになります。
それでも、「土地をまとめたいだけなのに、今すぐ税金で持ち出しになる」のを避けられるのは、とても大きなメリットです。
使うための条件(ここが細かい)
この特例、便利な反面、条件がかなり細かいのが特徴です。主なものを挙げると——
- 交換する両方が「固定資産」であること(売るために持っている土地などはダメ)
- 1年以上持っていた土地・建物であること
- 相手が「交換するためにわざわざ用意した」土地でないこと
- 同じ種類のものどうしの交換であること(土地は土地と、建物は建物と。土地と建物の交換はダメ)
- 交換したあと、前と同じ用途に使うこと(宅地は宅地として、など)
- 交換する2つの土地の価値の差が、高いほうの価値の20%以内であること
最後の「20%以内」がポイントです。
たとえば、3,000万円の土地と2,000万円の土地を交換しようとすると、差が1,000万円。高いほう(3,000万円)の20%=600万円を超えているので、この特例は使えません。
また、差額を埋めるために現金を足す(これを「交換差金」といいます)こともありますが、その現金部分には税金がかかります。
一番の落とし穴:親族間は「本当は贈与では?」と疑われる
ここが、土地を多く持つ家にとって一番大事なポイントです。
この特例は「お互いの土地が同じくらいの価値(等価)」であることが前提です。
赤の他人どうしなら、「これで等価だよね」とお互いが納得すればそれで済むことが多いのですが、親子や兄弟など親族間の交換になると、話が変わります。
税務署から、
「本当は価値が違うのに、安いほうを高く見せて、こっそり財産をあげた(贈与した)のではないか?」
と疑われることがあるのです。もしそう判断されると、差額に贈与税がかかってしまうこともあります。
だからこそ、親族間で土地を交換するときは、
- それぞれの土地をきちんと評価して
- 「これは等価の交換です」と説明できる形を整えておく
ことが欠かせません。ここは完全に、税理士など専門家の領域です。自己流でやると、あとで痛い目を見ます。
【体験談】我が家にも「共有の土地」がある
正直に書くと、我が家にも、実家の土地の一部が親族との「共有名義」になっている部分があります。
共有というのは、1つの土地を複数人で「持ち分◯分の1ずつ」で持っている状態のことです。これ、次の世代へ相続を重ねるたびに持ち主がどんどん増えていくという、地味だけど深刻な問題があります。
たとえば、今は2人で1/2ずつの共有でも、それぞれが亡くなって子どもたちに分かれていくと、気づけば5人、6人の共有になっていく。そうなると、いざ売ろう・活用しようとしても全員の同意が必要で、話がまとまらず”塩漬け”になってしまうのです。
この「共有をどうほどくか」を考えるとき、選択肢の1つとして出てくるのが、まさに今回の土地の交換です。バラバラの持ち分を、交換によって「この土地はこっち、あの土地はそっち」と整理していく——。
私自身、宅建の勉強や家族の相続対策を進めるなかで、「土地の問題は、元気なうちに、ちゃんと専門家と設計しておかないと後の世代が困る」と痛感しています。交換特例は、その設計の”道具箱”に入っている選択肢の1つ、という位置づけで知っておくとよいと思います。
まとめ:便利だけど「専門家と一緒に」が絶対条件
- 土地を交換すると、原則は「売った」のと同じで譲渡所得税がかかる
- 条件を満たせば「固定資産の交換の特例」で税金を先送りできる(※非課税ではなく繰り延べ)
- 条件は細かい(1年以上所有・同種・同一用途・価値の差20%以内 など)
- 親族間は「贈与では?」と疑われやすいので、等価であることをきちんと説明できる形が必須
土地の交換は、バラバラの土地や共有を整理する有力な手段ですが、要件を1つでも外すと、思わぬ税金がかかるデリケートな制度です。
「うちの土地でも使えるかな?」と思ったら、自己判断せず、必ず税理士に相談してください。特に土地や不動産が多い家では、相続対策全体の中で「どの土地をどう整理するか」をセットで設計するのが、遠回りなようで一番の近道です。
※具体的な土地の評価・交換の可否・税務手続きは、必ず税理士にご相談ください。この記事は制度の全体像をやさしく紹介するものです。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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