「それは介護保険の対象外ですね」
ケアマネジャーさんや業者さんから、こう言われることがあります。
そして——多くのご家族が、ここであきらめます。
でも、対象外=できない、ではありません。別の道が残っていることが、けっこうあります。
この記事では、あきらめる前に確認してほしい4つの道をお話しします。
この記事の結論
- 介護保険の住宅改修で対象になるのは5種類+付帯工事だけ。それ以外は対象外です
- でも「対象外」と言われた時点で終わりではありません
- 道は4つ:①自治体の上乗せ制度 ②福祉用具で代える ③組み合わせを変える ④自費でやる範囲を絞る
- とくに①を知らない方が多い。浴槽の取替えに助成が出る自治体があります
- どの道が使えるかは、担当者に「対象外なのは分かりました。他に方法はありますか」と聞くこと
まず、なぜ対象外になるのか
介護保険の住宅改修は、対象がはっきり決められています。
- ① 手すりの取付け
- ② 段差の解消
- ③ 滑りの防止・移動の円滑化のための床材の変更
- ④ 引き戸などへの扉の取替え
- ⑤ 洋式便器などへの便器の取替え
- + ①〜⑤に付帯して必要な工事
この6つ以外は、原則すべて対象外です。
詳しくは「介護保険の住宅改修費20万円」にまとめています。
よく「対象外」と言われるもの
現場でご相談を受けるのは、だいたいこの4つです。
| よくある希望 | 介護保険では |
|---|---|
| 浴槽を、またぎやすいものに替えたい | ❌ 対象外 |
| 階段に昇降機をつけたい | ❌ 対象外 |
| 和式トイレをなくして、洋室にしたい | △ 便器の取替えは対象、内装は対象外 |
| 手すりを置きたい(工事なし) | ❌ 対象外(=福祉用具の扱い) |
1つ目が、いちばん多いです。
深い浴槽をまたげない。これは、ご相談のなかでも上位に来る悩みです。手すりはつけられるのに、浴槽そのものには手が出せない——ここで行き詰まります。
でも、道があります。
道① 自治体の上乗せ制度を確認する
これを知らずにあきらめている方が、いちばん多いです。
介護保険とは別に、市区町村が独自の助成をしていることがあります。
そして——介護保険では対象外の「浴槽の取替え」が、対象になっている自治体があります。
東京都の例
東京都では、多くの区市町村が独自の制度を持っています。東京都が公表している資料では、たとえばこうなっています。
| 種目 | 助成の基準額(都の基準) |
|---|---|
| 浴槽の取替え | 37万9千円 |
| 流し・洗面台の取替え | 15万6千円 |
| 便器の洋式化 | 10万6千円 |
金額は自治体によって違います。同じ東京都内でも、浴槽の基準額が20万円の区もあれば、25万円の区もあります。
大事なのは「自分の街にあるかどうか」です。
聞き方にコツがあります
制度の名前は、自治体ごとにバラバラです。
- 高齢者自立支援住宅改修給付
- 高齢者住宅改造費助成事業
- 高齢者住宅設備改修給付
- ……など
名前で聞くと、通じません。
こう聞いてください。
「介護保険の住宅改修とは別に、高齢者向けの住宅改修の助成はありますか?」
窓口は、市区町村の高齢福祉課(高齢者支援課)です。ケアマネジャーがご存じないこともあるので、直接電話するのがいちばん早いです。
注意点が3つ
① 所得制限があることが多い 世帯の所得で、対象になるかどうか・自己負担の割合が変わります。
② やはり「工事の前に申請」 介護保険と同じです。先に工事をすると対象外になります。
③ 介護保険と併用できるかは、自治体による 「介護保険を使い切ってから」という順番が決まっていることもあります。ここも窓口で確認してください。
道② 福祉用具で代える
工事しなくても、道具で解決できることがあります。
「工事=住宅改修」「道具=福祉用具」で、財布が別です。だから——住宅改修の20万円を使い切っていても、福祉用具は別に使えます。
| やりたいこと | 工事だと | 道具なら |
|---|---|---|
| 浴槽に入りやすくしたい | 浴槽の取替え(対象外) | 浴槽台・バスボード(購入) |
| 浴室で座って洗いたい | — | シャワーチェア(購入) |
| 玄関の段差を越えたい | 段差解消工事(対象) | 踏み台・スロープ(レンタル) |
| 手すりがほしい | 取付け工事(対象) | 据え置き型の手すり(レンタル) |
| トイレが遠い | — | ポータブルトイレ(購入) |
お風呂で使うものと排泄で使うものは、レンタルではなく「購入」です(特定福祉用具販売)。年間10万円までが対象で、自己負担は1〜3割。
賃貸にお住まいの方には、こちらが本命です。工事の許可を取る必要がありません。賃貸の場合は「賃貸住宅でも介護の住宅改修はできる」もあわせてどうぞ。
道③ 組み合わせを変える
「その工事」でなくても、目的が達成できることがあります。
ここは、理学療法士の出番です。
現場での考え方
ご家族から出てくるのは、たいてい「工事の名前」です。
- 「浴槽を替えたい」
- 「階段に昇降機をつけたい」
でも、本当の困りごとは、その手前にあります。
- 「浴槽を替えたい」
- → 本当は「またぐときにふらつく」のかもしれない
- → だったら、縦手すり+浴槽台で解決することがある
- 「階段に昇降機を」
- → 本当は「2階の寝室に行けない」のかもしれない
- → だったら、寝室を1階に移すほうが早い
工事を前提にすると、この発想が出てきません。
だから、専門職に「動作」を見てもらってください。
理学療法士・作業療法士が実際の動きを見ると、「その工事は要らないかもしれない」という結論になることが、けっこうあります。
訪問リハビリを使っていれば、追加の費用なしで相談できます。退院前なら、家屋調査という形で見に来てもらえることもあります(「退院前の家屋調査で、PTが見ているところ」)。
道④ 自費でやる範囲を、絞る
どうしても対象外で、制度も使えない場合。
そのときは自費になりますが——全部を自費でやる必要はありません。
分けて考える
| 対象になる部分 | 介護保険で |
| 対象外の部分 | 自費で |
1つの工事の中でも、分けられることがあります。
たとえば浴室なら——
| 工事 | 介護保険 |
|---|---|
| 入口の段差解消 | 対象 |
| 床材の変更 | 対象 |
| 手すりの取付け | 対象 |
| 浴槽の取替え | 対象外(ここだけ自費 or 自治体の制度) |
見積もりを、項目ごとに分けて出してもらってください。
「一式 ◯◯万円」という見積もりは、要注意です。どこまでが保険の対象か分かりませんし、比較もできません。
相見積もりを取る
自費の部分は、業者によって金額が大きく変わります。
大家として何度も工事を頼んできましたが、同じ内容で見積もりが2倍近く違うことは、珍しくありません。
ケアマネジャーから紹介された業者「だけ」で決めないでください。紹介が悪いのではなく、比べる相手がいないと、その金額が高いのか安いのか分からないからです。
まとめて聞ける、ひとつの質問
ここまで4つの道をお話ししましたが、全部を覚える必要はありません。
「対象外です」と言われたら、こう返してください。
「対象外なのは分かりました。 他に何か方法はありますか? 自治体の助成や、福祉用具でもいいので」
この一言で、担当者は考えてくれます。
「対象外です」で会話を終わらせない——それだけです。
多くの方は、ここで引き下がってしまいます。でも——担当者は「聞かれなかったから答えなかった」だけということが、本当によくあります。
この記事のまとめ
- 介護保険の住宅改修は5種類+付帯工事のみ。それ以外は対象外
- でも「対象外」は「できない」ではない
- 道①:自治体の上乗せ制度。浴槽の取替えに助成が出る自治体がある
- 聞き方は「介護保険とは別に、高齢者向けの住宅改修の助成はありますか」
- 道②:福祉用具で代える。住宅改修とは財布が別。賃貸なら本命
- 道③:組み合わせを変える。工事名でなく「動作」から考え直す
- 道④:自費の範囲を絞る。見積もりは項目ごとに分けてもらう
- 「対象外なのは分かりました。他に方法はありますか」——この一言
制度の内容・金額・所得制限は、お住まいの市区町村や年度によって異なります。必ずケアマネジャーまたは市区町村の窓口でご確認ください。
介護保険の住宅改修そのものについては「介護保険の住宅改修費20万円」に、親の家をどうするか全体の流れは「「親の家、どうする?」完全ガイド」にまとめています。
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