「親がアパートを持っているんだけど、これを相続したらどうなるんだろう?」
そんな疑問を持って、このページにたどり着いた方が多いのではないでしょうか。
家賃が毎月入ってくる物件。一見すると「ラッキーな資産」に見えます。でも、大家歴10年以上の私から先にお伝えすると、アパートの相続は「お金が入る話」だけでは終わりません。
私は理学療法士として訪問リハビリの現場に立ちながら、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持ち、家族の法人で複数の賃貸物件を管理している現役の大家です。「医療」と「不動産」、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えています。
今日は、親のアパートを相続するということが、実際どういうことなのかを、できるだけやさしくお話しします。
この記事の結論
- アパートを相続する=いきなり「大家」になるということ。 家賃が入る代わりに、修繕・入居者対応・空室リスクがすべてついてきます。
- 相続したら、まず4つを確認:入居者との契約/管理会社との契約/ローンの残り/建物の状態。
- 「もらって嬉しい資産」とは限らない。 古いアパートは修繕費がかさみ、空室だらけだと「負債」になることもあります。
- 相続税には注意。 賃貸物件は税金の計算上は安く評価されますが、納める税金のお金(現金)は別に用意が必要です。
順番に見ていきましょう。
1. アパートを相続する=「いきなり大家になる」ということ
まず一番お伝えしたいのは、これです。
アパートを相続すると、あなたはその日から「大家さん」になります。 毎月家賃が振り込まれる、うらやましい立場……と思いきや、実際の大家の仕事はこんな感じです。
私の実体験で言うと、たとえばこんな電話がかかってきます。
- 「お湯が出ません」(給湯器の故障。真冬だと一刻を争います)
- 「上の階の足音がうるさい」(入居者同士のトラブルの仲裁)
- 「エアコンが効かない」(夏場は毎年どこかの部屋で起きます)
- 「鍵をなくしました」
家賃は黙っていても入ってくるイメージがありますが、その裏でこうした対応が日常的に発生します。 給湯器ひとつ替えるだけでも10万〜20万円。これを「家賃収入の中から」自分で払うのが大家です。
つまり相続したアパートは、「不労所得の箱」ではなく、「小さな会社を一つ引き継ぐ」くらいに考えておくのがちょうどいいのです。
2. 相続したら最初に確認すべき4つのこと
いきなり大家になっても困らないように、相続したらまず次の4つを確認してください。
① 入居者との契約内容
今どんな人が、いくらの家賃で、いつから住んでいるのか。契約書(賃貸借契約書)を見つけて、内容を把握します。敷金を預かっている場合、それは「いつか入居者に返すお金」なので、自分のお金として使ってはいけません。ここを勘違いするとあとで大変です。
② 管理会社との契約
アパートの管理を不動産会社に任せている場合、その会社との契約内容を確認します。毎月いくら払っているのか、どこまでやってくれるのか。中には「サブリース」といって、管理会社がまるごと借り上げて、大家には決まった額を払う仕組みになっていることもあります。この場合、家賃が下げられる条件が契約に書かれていることが多いので要注意です。
③ ローンの残り(残債)
これが見落としがちで、一番こわいポイントです。親がアパートを建てるときに銀行から借金をしていた場合、その借金も一緒に相続します。 「家賃が月30万円入る」と喜んでいたら、「ローン返済が月25万円だった」というケースもあります。プラスの資産だけでなく、借金もセットで引き継ぐことを忘れないでください。
④ 建物の状態
築何年なのか、屋根や外壁、水回りはどうか。古ければ古いほど、これから修繕費が雪だるま式にかかってきます。
3. 「もらって嬉しい資産」とは限らない
ここは正直にお話しします。古いアパートは、相続しても喜べないことがあります。
私が管理している物件でも、築年数が経った建物は本当にお金がかかります。外壁を塗り直すだけで100万円以上、屋根の防水工事でさらに数十万円。これが10年〜15年に一度、必ずやってきます。
さらにこわいのが「空室」です。1部屋空くと、その家賃はゼロ。でも固定資産税(土地建物にかかる税金)やローン返済は待ってくれません。満室なら黒字でも、半分空いたら一気に赤字ということが、古いアパートでは現実に起きます。
入居者を募集するにも、古い部屋はそのままでは決まりません。壁紙を貼り替え、設備を新しくし……と、空室を埋めるためにまたお金がかかる。この繰り返しです。
ですから、「アパートをもらえる」と聞いても、手放しでは喜べません。中身を見ないと、それが宝の山なのか、お金が出ていくだけの箱なのか分からないのです。
4. 相続税の問題——「評価は下がるが、現金は別」
ここは私自身まだ相続を経験しておらず、これから当事者として向き合う立場です。なので「宅建士として知っていること」としてお伝えします。
実は、賃貸アパートは相続税の計算上、評価額が低くなる仕組みがあります。人が住んで貸している土地・建物は、「自由に使えない分、価値を低く見ますよ」というルールがあるためです。だから「アパートは相続税対策になる」と言われるわけです。
ただし、ここに大きな落とし穴があります。
評価額が下がっても、相続税を払うための「現金」は別に必要だということです。アパートという建物はあっても、それをすぐに現金には換えられません。納税の期限(相続を知った日から10か月以内)までに、まとまったお金を用意しなければならないのです。
「資産はあるのに、税金を払う現金がない」——これは相続でよくある困りごとです。賃貸物件の相続税は計算が複雑なので、早めに専門家に相談することを強くおすすめします。 自己流の計算で「大丈夫だろう」と進めると、あとで大きな差が出ることがあります。
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5. 「続けるか・手放すか」の判断軸
相続したアパートをどうするか。大きく分けて選択肢は3つあります。
- そのまま大家として続ける:家賃収入は魅力ですが、ここまで書いた管理・修繕・空室のすべてを引き受ける覚悟が必要です。
- 建て替える・リフォームする:古さが原因なら立て直す手もありますが、新たに大きなお金が必要になります。
- 売却する(手放す):管理が負担なら、売ってしまうのも一つの道です。
正直にお伝えすると、私は家族の古いアパートを取り壊して、土地として売った経験があります(主担当として一人で進めたわけではなく、家族の一員として一連の流れに立ち会った、という立場です)。古い建物は解体してさら地にしてから売ったほうがスムーズなこともあり、これも一つの現実的な選択肢でした。
一方で、入居者がいる状態のまま売る「オーナーチェンジ」(入居者がいるまま次の大家に引き継ぐ売り方)は、私自身は経験していません。なので「売れば全部解決」と無責任に言うつもりはありません。
ただ、解体して土地で売る/オーナーチェンジで売る、といったいくつかの売り方があることを知っておくだけでも、いざというときの判断が変わってきます。 どれを選ぶにせよ、数字(収支とローンと修繕の見通し)を出してから決めるのが鉄則です。
まとめ:親が元気なうちに、親子で共有を
最後に、一番大事なことをお伝えします。
アパートの相続でいちばん困るのは、親が亡くなってから「中身が何も分からない」状態になることです。
- どんな契約で、誰が住んでいて、家賃はいくらか
- ローンは残っているのか
- 管理会社はどこか
- 建物はどのくらい古いのか
これらを、親が元気なうちに親子で一度話して、共有しておく。 たったこれだけで、相続後の苦労は大きく減ります。
アパートの相続は、「お金が入る話」であると同時に、「小さな会社を引き継ぐ話」です。だからこそ、引き継ぐ前に中身を知っておくこと。これに尽きます。
私自身も、これから親の物件と向き合う一人として、同じ気持ちでこの記事を書きました。少しでもお役に立てればうれしいです。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家歴10年以上。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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