「アパートを建てると相続税が安くなる」——そんな話を聞いたことはありませんか?
実は、この「節税効果」が2026年の税制改正で大きく変わります。
「5年ルール」「時価評価」という言葉がニュースに出てきて、「うちの親、大丈夫かな?」と気になっている方も多いかもしれません。
今日は、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の資格を持ち、大家11年目の経験から、この改正が何を意味するのか、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 2026年の相続税改正、何がどう変わるのか
- 「アパート節税」がなぜ効きにくくなるのか
- 節税目的で不動産を持つリスク(大家目線)
- 今からできることは何か
そもそも「アパートで相続税が安くなる」ってどういう仕組み?
まず、改正前の話から整理しましょう。
相続税は、亡くなった人の財産を評価した金額に対してかかります。現金1,000万円を持っていれば、そのまま「1,000万円の財産」として評価されます。
ところが、不動産の場合は少し違います。
賃貸用のアパートや土地は、税金計算上の「評価額」が時価(実際の売却価格)よりもかなり低く設定されています。具体的には、土地は路線価(時価の8割前後)で評価され、さらにアパートが建っている土地は「貸家建付地(かしやたてつけち)」として2割ほど割引されます。建物も時価より安い「固定資産税評価額」で計算されます。
つまり、現金をそのまま持つより、アパートに換えてしまうと、相続税の計算上は財産が「少ない」ことになる——これが「アパート節税」の仕組みでした。
2026年の改正で何が変わるの?「5年ルール」とは
2026年の税制改正で導入されたのが、いわゆる「5年ルール」です。
内容をひとことで言うと、「亡くなる5年以内に取得した賃貸不動産は、通常の評価額ではなく時価(実際の売却相場)で評価する」 というものです。
以前は、アパートを購入した直後に亡くなっても、低い評価額のまま相続税が計算されていました。それが、取得から5年以内であれば時価評価になる、ということです。
具体的にイメージすると:
| 状況 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 5年以内に取得したアパート | 評価額:時価の約30〜40%で計算 | 評価額:時価(100%)で計算 |
| 5年以上保有しているアパート | 従来どおりの評価額 | 変わらず従来どおり |
「5年以内に買ったアパート」が対象なので、長期間保有してきた不動産には影響がありません。
ただ、「相続対策にアパートを急いで建てよう・買おう」という動きへの対策として、この改正は導入されています。
節税効果は「2割程度」に縮小するイメージ
改正前と比べると、5年以内の取得であれば節税効果がほぼゼロになります。
仮に2億円のアパートを購入しても、5年以内に亡くなった場合は2億円そのままで評価される——つまり、現金で2億円持っているのと変わらなくなるわけです。
5年以上持ち続けて初めて、従来の低い評価額に戻ります。「節税効果を得るまで5年待たないといけない」という条件がついた、と考えるとわかりやすいと思います。
宅建士・大家として思うこと:節税目的の不動産購入には危険が潜む
ここからは、少し私の現場感覚をお話しします。
正直、「相続税を減らしたい」という理由だけでアパートを建てることには、以前からリスクがあったと感じています。
今回の改正はそれを制度として明文化した、という意味でもあります。
不動産を持つということは、こういうことがセットでついてきます。
・空室リスク:入居者が決まらなければ、家賃収入はゼロです。それでも固定資産税・管理費・ローン返済は続きます。
・修繕コスト:築年数が経つほど、給湯器・水道・外壁などの修繕費がかかります。私自身、賃貸経営11年目ですが、修繕費の出費は毎年予測が難しいと感じています。
・管理の手間:管理会社に任せれば家賃の5〜10%が費用になります。自主管理なら入居者からの問い合わせ対応や契約更新の手続きが必要です。
・売りたいときに売れない:不動産は株のようにすぐ現金化できません。売却には数ヶ月かかり、相場次第では損が出ることも。
「相続税が安くなる」だけに目が向くと、こういうリアルを見落としがちです。
特に、大手ハウスメーカーから「相続税対策にアパートを建てましょう」と提案されて建てたものの、入居者が集まらず苦しんでいる地主さんの話は、業界内でよく聞きます。
では、今何をすべきか?
2026年の改正を受けて「じゃあ何もできないの?」と思う方もいるかもしれません。
そんなことはありません。ただ、「急いでアパートを建てて節税」という選択肢は使いにくくなった、ということです。
今からできることは、大きく3つです。
1. 親の資産を「見える化」する
相続の準備として一番大切なのは、まず親の財産を把握することです。土地・建物・預金・株、何がどこにあるのかを整理するだけで、対策の選択肢が見えてきます。
「お金の話を親と話しにくい」という方は多いですが、「一緒に確認したい」というスタンスで話せると前に進みやすいです。
2. 基礎控除の計算をしておく
相続税には基礎控除(かかる財産の下限)があります。
基礎控除 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の人数)
例えば、法定相続人が子ども2人なら、3,000万円+1,200万円=4,200万円以下の財産なら相続税はかかりません。まずここから確認してみてください。
3. 早めに税理士に相談する
相続税は、税理士によって提案できる対策が大きく変わります。アパートに限らず、生前贈与・小規模宅地等の特例・生命保険の活用など、選択肢はさまざまあります。
「相続税が発生しそうだ」と思ったら、早めに相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
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まとめ
- 2026年の相続税改正で「5年ルール」が導入。相続前5年以内に取得した賃貸不動産は時価評価に。
- 「アパートを急いで建てて節税」という手法が効きにくくなった。
- そもそも節税目的だけの不動産取得には、空室・修繕・管理のリスクがある。
- 今からできることは「資産の見える化」と「早めの専門家相談」。
「節税の手が使えなくなった」と焦るより、まず今ある財産を正確に把握することが、相続対策の第一歩です。
著者プロフィール けいすけ / 理学療法士(訪問リハビリ歴10年以上)× 宅地建物取引士 × 賃貸不動産経営管理士 × 大家。医療と不動産、両方の現場から「親の家、どうする?」を考えます。
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