台風が近づいてくると、大家は落ち着かなくなります。
屋根が飛ばないか。窓が割れないか。——そういう大きな心配が頭をよぎるのですが、実際に手を動かすのは、もっと地味な場所です。
私が台風の前に必ずやっているのは、排水溝の掃除です。
地味ですが、これが一番効きます。今日はその話をします。
この記事の結論
- 台風前にやることの筆頭は排水溝・排水口の掃除。詰まっていると水が行き場を失います
- エントランスや共用部の扉を閉めておく。開いていると雨が吹き込み、扉も傷みます
- 飛びそうな物を片づける。自転車置場・ゴミ置場・置き看板が定番(うちは飛来物でエントランスの扉が割れました)
- 台風が過ぎたら見回りと掃除。落ち葉やゴミが次の詰まりを作ります
- 写真は「壊れる前」と「壊れた後」の両方。火災保険の風災補償を使うときに効いてきます
- 台風前に一周すると、入居者が気づいていないこと(窓の閉め忘れなど)も拾えます
1. なぜ、屋根より先に排水溝なのか
台風対策というと、屋根や外壁を思い浮かべる方が多いと思います。
でも考えてみてください。屋根は、台風が来る前日にどうにかできるものではありません。 業者を手配して足場を組んで——という話になります。前日にできることは、実質ありません。
一方で排水溝は、その日のうちに自分で掃除できます。 しかも詰まっていると、はっきり被害が出ます。
詰まると、水は横から入ってきます
雨水は、本来なら排水溝を通って流れていきます。ここが落ち葉や土で詰まっていると、水が行き場を失って溢れます。
溢れた水がどこへ行くかというと、低いほうへです。
- 駐車場のほうへ流れて、車のタイヤが浸かる
- 階段の下に溜まって、1階の玄関前が池になる
- 建物の基礎沿いに溜まって、じわじわ染みる
台風のときの雨量は、普通の雨とは桁が違います。普段は詰まっていても流れていた場所が、台風では追いつきません。
やることは単純です
特別な道具は要りません。
- 排水溝のフタを開けて、溜まっている落ち葉・土・ゴミを取り出す
- 側溝の上に落ち葉が積もっていたら、掃いておく
- 屋上やベランダがある物件なら、そこの排水口も見る
10分か20分の作業です。それで浸水を防げるなら、費用対効果は圧倒的だと思います。
2. エントランスの扉を閉めておく
もうひとつ、私が必ずやるのがこれです。
共用部の扉を閉めておく。 エントランス、ゴミ置場、自転車置場——普段は開けっ放しにしている扉があれば、台風の前に閉めます。
理由は2つあります。
① 雨が吹き込む
台風の雨は真下に降りません。横から来ます。 扉が開いていると、そこから廊下やエントランスに雨が入り、床がびしょ濡れになります。
これがタイル張りだと、滑ります。台風の翌朝、入居者の方が濡れた床で転ぶ——十分に起こりえます。
② 扉そのものが傷む
開いたままの扉は、風にあおられて全開まで振り切られます。蝶番(ちょうつがい)が傷むのはこのパターンです。
閉めるだけならタダです。 扉の修理は数万円からかかることを思えば、やらない理由がありません。
3. 飛ぶものを片づける
ここが、私が一番痛い目を見たところです。
台風で、うちの物件のエントランスの扉が割れました。
原因ははっきり分かりません。ただ当時は、何かが飛んできて当たった可能性が高いと判断しました。強風だけで割れるような扉ではなかったからです。
割れてしまえば、直すまでのあいだ建物は開けっ放しです。防犯上もよくありませんし、業者の手配もすぐには付きません。台風のあとは、どこも同じように困っているからです。
ここで大事なのは、飛んできたものが、自分の物件のものとは限らないということです。近所から飛んでくることもあります。
それでも、自分の敷地から飛ばさないようにすることはできます。 自分の物件を守るためであると同時に、よそに迷惑をかけないためでもあります。
物件まわりで飛びやすいものは、だいたい決まっています。
| 場所 | 飛びやすいもの |
|---|---|
| 自転車置場 | 自転車そのもの(倒れて連鎖する)、カバー |
| ゴミ置場 | ゴミ袋、ネット、フタのないポリバケツ |
| 共用部 | 置き看板、傘立て、掲示物、植木鉢 |
| 駐車場 | 車止め以外の置き物、輪止めの三角コーン |
自転車は倒れると連鎖します。 1台倒れると隣を巻き込んで、最後は全部倒れます。その中に高価な自転車があるとトラブルになりますし、倒れた自転車が飛んで車に当たれば、もっと大きな話になります。
ゴミ袋は台風前日に出させない——これも効きます。収集日が台風と重なりそうなら、掲示で一言お願いしておくだけで、翌朝の散乱がかなり減ります。
4. 入居者への連絡は、するべきか
正直に書きます。「台風が来ます」という一斉連絡は、したことがありません。
理由は単純で、台風のニュースは誰でも見ているからです。「明日は台風です」と大家からわざわざ言われても、入居者からすれば「知っています」という話でしょう。細かく連絡しすぎるのは、かえって煩わしいと思っています。
ただ、個別に伝えたことはあります
台風の前に管理物件を見て回っていたとき、駐車場に停まっている車の窓が開いたままになっているのを見つけました。
ご本人は気づいていない様子でしたので、管理会社を通してお伝えしました。
これは「天気の話」ではありません。その方が、知らなければ判断のしようがないことです。伝えなければ、車内が水浸しになっていたかもしれません。
線引きはここだと思っています
- ゴミの収集が止まりそうなので、前日に出さないでほしい
- 工事の足場が組んである(風で揺れる可能性がある)
- 駐車場が冠水しやすいので、車を移動してほしい
- 車の窓が開いている、洗濯物やふとんが出たまま——見つけたら伝える
つまり「入居者が知らないと判断できないこと」だけ伝える、という線引きです。天気の話をこちらから流す必要はありません。
伝えるときは、管理会社を通すのが無難です
直接お部屋を訪ねたり連絡したりすると、人によっては「見張られている」と感じさせてしまいます。
管理会社経由なら、あくまで業務上の連絡という形になります。同じ内容でも、受け取られ方が変わります。
そして何より、見回っていなければ気づけません。 台風前に一周する意味は、備えることだけでなく、こういう「気づき」を拾うことにもあります。
5. 台風が過ぎたら——見回りと掃除
通り過ぎたあとが、実は本番です。
まず、見回り
物件を一周します。見る場所は、だいたいこのあたりです。
- 屋根・外壁(瓦のズレ、トタンのめくれ、外壁の剥がれ)
- 雨樋(外れていないか、詰まっていないか)
- 共用部の床(濡れて滑らないか)
- 駐車場・駐輪場(倒れたもの、飛んできたもの)
- フェンス・門扉(歪んでいないか)
- 建物のまわりの地面(水が引かずに溜まっていないか)
そして、掃除
見回りとセットでやるのが掃除です。落ち葉やゴミが大量に流れ着いています。
ここで手を抜くと、そのまま次の雨で排水溝に流れ込みます。今日の落ち葉が、次の台風の詰まりになる——この循環を切るのが、通過後の掃除の意味です。
台風の翌日は、たいてい晴れます。暑いですが、乾いているうちに掃いてしまうほうが楽です。
6. 写真は「壊れる前」と「壊れた後」の両方を
最後に、これは知っておくと得をする話です。
火災保険には、風災の補償が付いていることが多いです。台風で屋根が飛んだ、雨樋が外れた、フェンスが倒れた——こうした被害は、火災保険で直せる可能性があります。
「火災」という名前なので火事だけだと思われがちですが、そうではありません。
そのために、写真です
保険を使うとき、被害の前後が分かる写真があると話が早いです。
- 台風の前:見回りのついでに、外観をぐるっと撮っておく
- 台風の後:壊れた箇所を、近くと遠くの両方から撮る
「前の写真」があると、その台風で壊れたことが示しやすくなります。 経年劣化なのか台風なのかで揉めることがあるからです。
スマホで撮るだけなので、手間はほぼゼロです。台風前の見回りのときに、ついでに何枚か撮っておいてください。
契約内容は事前に確認を
ただし、保険の内容は契約によって違います。
- 免責金額(自己負担額)がいくらか
- 風災に一定金額以上の被害という条件が付いていないか
- そもそも風災補償が付いているか
このあたりは証券を見ないと分かりません。台風が来てから慌てて探すより、落ち着いているときに一度確認しておくほうがいいと思います。
(火災保険の全体像は火災保険と相続の記事にもまとめています)
まとめ
- 台風前の最優先は排水溝・排水口の掃除。前日でもできて、効果が大きい
- 共用部の扉を閉める。雨の吹き込みと、扉の傷みを防ぐ
- 自転車・ゴミ・置き看板を片づける。飛来物は扉を割ります。自分の敷地から飛ばさないことが、よそへの配慮にもなる
- 入居者への一斉連絡は不要。ただし車の窓が開いているなど「知らないと判断できないこと」は伝える(管理会社経由が無難)
- 通過後は見回りとセットで掃除。落ち葉を残すと次の詰まりになる
- 写真は前後で撮る。火災保険の風災補償を使うときに効く
台風対策というと大がかりな話に思えますが、実際にやっているのは掃除と戸締まりです。
大きなことは前日にはできません。できることを、できるうちにやっておく。それだけで、翌朝の景色がだいぶ変わります。
なお、風が強くなってからの見回りは危険です。外に出るのは、風が収まってからにしてください。 物件より自分の身が優先です。
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