「リハビリを受けさせたいんですが、訪問とデイケア、どっちがいいんでしょうか」
ご家族から、本当によく聞かれます。
パンフレットを見ても、どちらも「機能の維持・向上を目指します」と同じようなことが書いてあって、違いが分かりません。ケアマネジャーさんに聞いても「どちらもできますよ」と言われて、余計に迷う。
訪問リハビリの理学療法士として10年以上この仕事をしてきて、私なりの答えがあります。今日はそれを、遠慮せずに書きます。
この記事の結論
- どちらが優れているか、という比べ方をしないでください。「今いちばん困っている場面はどこか」で決まります
- ざっくり言うと、家の中の動作で困っている人は訪問リハビリ、家から出る機会が減っている人はデイケアです
- 訪問リハビリの最大の強みは、その家でしか分からないことが分かること(段差の高さ、トイレまでの距離、手すりの位置)
- デイケアの最大の強みは、運動量と、人と会う機会をまとめて確保できること
- 両方使うこともできます。 ただし介護保険で使える量には上限があり、食い合います
- 合わなければあとから変えられます。最初の選択で一生が決まるわけではありません
1. まず、2つの違いを整理します
言葉が似ていて混乱しやすいので、先に整理します。
デイケアは正式には「通所リハビリテーション」といいます。デイサービス(通所介護)とは別のサービスです。名前が似ていますが、デイケアには医師がいて、リハビリの専門職が配置されています。
| 訪問リハビリ | デイケア(通所リハビリ) | |
|---|---|---|
| 場所 | 自宅 | 施設に通う |
| 人の数 | 基本は1対1 | 他の利用者さんと一緒 |
| 送迎 | なし(来てもらう) | あり |
| 使える機器 | 持ち運べるものだけ | 施設の機器が使える |
| 入浴・食事 | なし | 施設による(短時間型にはない) |
| 家の環境を見る | 見られる | 見られない |
| 人と会う機会 | 増えない | 増える |
どちらも、要介護認定と、主治医の指示が必要です。ここは共通しています。
⚠️ デイケアは「滞在時間」でまったく別物です
ここは誤解が多いので、先に書いておきます。
デイケアは、何時間いるかによって中身がまるで変わります。
| 滞在時間 | 入浴 | 食事 |
|---|---|---|
| 1〜2時間(短時間型) | なし | なし |
| 3〜4時間 | 施設による | ないことが多い |
| 6時間以上 | あることが多い | あり |
短時間型は、送迎で来て、水分をとって、リハビリを40〜60分やって帰るという流れです。お風呂に入る時間そのものがありません。
そして、リハビリを目的に紹介されるデイケアは、この短時間型であることが多いです。「デイケアに行けばお風呂も入れる」と思って選ぶと、行ってから違うと気づくことになります。
もうひとつ、ややこしい話
「デイケアには専門職がいて、デイサービスにはいない」——そう単純でもありません。
デイサービス(通所介護)にも、リハビリに力を入れた事業所があります。 機能訓練特化型、リハビリ特化型などと呼ばれ、理学療法士や作業療法士がいるところもあります。
制度上の違いは「医師の配置と指示が必要かどうか」ですが、現場で受けられる内容だけを見ると、両者は重なる部分があります。
なので、名前で決めないでください。その事業所で何をしてくれるのかを、直接聞くのが確実です。
2. 訪問リハビリが向いている場面
① 家の中の動作で困っている
これがいちばん分かりやすい判断基準です。
「ベッドから起き上がるのがつらい」「トイレまで行くのが不安」「お風呂をまたげない」——困っている場所が家の中にあるなら、訪問リハビリです。
理由は単純で、その場所で練習できるからです。
施設のきれいな手すりを使って上手に立てても、自宅のトイレは狭くて、手すりの位置も違います。家でできなければ、意味がありません。
② 外出そのものが負担になっている
デイケアは送迎がありますが、準備・着替え・車の乗り降り・移動時間がセットでついてきます。
体力が落ちている方にとって、これは想像以上の負担です。「行くだけで疲れて、着いた頃にはリハビリどころではない」という方は、実際にいらっしゃいます。
③ 人が多い場所が苦手・混乱しやすい
認知症のある方の場合、環境が変わると混乱が強くなることがあります。
慣れた自宅で、毎回同じ人が来る。この安心感が、リハビリの効果そのものを左右します。
④ 家の環境を変える必要がある
手すりをどこに付けるか、段差をどうするか。こうした判断は、実際にその人がその場所で動くところを見ないと決められません。
住宅改修を考えている段階なら、訪問リハビリを入れておくと話が早く進みます。
3. デイケアが向いている場面
① 家から出る機会が減っている
「一日中パジャマで、テレビの前にいます」
このご相談は非常に多いです。そして、これは訪問リハビリでは解決しにくい問題です。
週に1回でも「行く場所がある」「着替える理由がある」ことの効果は、リハビリの内容そのものより大きいことがあります。
② しっかり運動量を確保したい
正直に書きます。訪問リハビリで確保できる運動量は、多くありません。
1回あたりの時間はケアプランで決まりますが、限られた時間の中で、評価をして、練習をして、ご家族に説明もします。純粋に体を動かしている時間は、その一部です。
デイケアなら、滞在時間が長く、施設の機器も使えます。筋力をしっかりつけたい段階なら、デイケアのほうが有利です。
③ お風呂が家では大変
自宅の浴室で介助するのは、介助する側の腰を壊しかねない作業です。外で入浴を済ませられるなら、それだけでご家族の負担が大きく減ります。これは立派な選択理由です。
ただし、ここで名前を間違えないでください。
前に書いたとおり、デイケアなら必ず入浴できるわけではありません。 短時間型にはお風呂がありません。
入浴がいちばんの目的なら、デイサービス(通所介護)のほうが自然な選択です。入浴に特化した事業所もあります。
デイケアで入浴も、と考えるなら、滞在時間と入浴の有無を見学のときに必ず確認してください。 「リハビリもお風呂も」を1か所で叶えようとすると、どちらも中途半端になることがあります。
④ ご家族に休息が必要
介護は何年も続きます。その間、ご家族が倒れないことが最優先です。
「親を預けるなんて」と後ろめたく感じる方がいますが、逆です。ご家族が元気でいることが、在宅生活がいちばん長く続く条件です。
4. ここからが本音の話です
パンフレットに書いていないことを書きます。
訪問リハビリの弱点
回数を増やしにくいことです。
私たちが自宅に伺える回数はケアプランの中で決まりますし、体を動かす総量では、通いのサービスに勝てません。「訪問リハビリだけで、みるみる筋力がつく」という期待には、正直に言って応えきれないことがあります。
もうひとつ。社会とのつながりは増えません。 私が帰れば、また一人です。
デイケアの弱点
家の中のことが、まったく見えません。
デイケアのスタッフは、その方の家の廊下幅も、トイレまでの距離も、夜中に何回起きているかも知りません。知りようがないのです。
だから、施設では上手に歩けている方が、家では転んでいるということが起こります。
だから私は、こう考えています
目的が「生活の中の困りごとを解決する」なら訪問リハビリ。 目的が「体力をつける・外に出る」ならデイケア。
そして、どちらか一方で全部を解決しようとしないこと。これがいちばん大事です。
5. 両方使う、という選択肢
併用もできます。実際、両方使っている方はいらっしゃいます。
たとえば「デイケアで運動量を確保しながら、訪問リハビリで自宅の動線を整える」という組み合わせです。理にかなっています。
⚠️ ただし、注意点が2つあります。
ひとつ目は、使える量に上限があること。 介護保険には要介護度ごとに使える量の上限(区分支給限度基準額)があり、訪問リハビリもデイケアも、その同じ枠を使います。 片方を増やせば、もう片方や他のサービスに使える分が減ります。上限を超えた分は全額自己負担です。
ふたつ目は、疲れること。 予定を詰め込みすぎて、かえって体調を崩す方がいます。特に始めたばかりの時期は、少なめから様子を見てください。
具体的にどう組めるかは、ケアプラン全体との兼ね合いになります。ケアマネジャーさんに「両方使いたいが、枠は足りるか」と聞くのがいちばん早いです。
6. 決め方の順番
迷ったら、この順番で考えてみてください。
- 困っている場面を、ひとつだけ挙げる(「夜中のトイレが不安」「一日中家にいる」など)
- その場面が家の中なら訪問、家の外や体力なら通い
- ケアマネジャーさんに、その困りごとをそのまま伝える
- 見学や体験を使う(デイケアは見学できるところがほとんどです)
- 合わなければ変える
⚠️ 最初から完璧な選択をしようとしないでください。やってみて分かることのほうが多いです。
7. ⚠️ 選ぶ前に確認してほしいこと
主治医の意見を必ず確認してください。
訪問リハビリもデイケアも、医師の指示が前提になります。そして病気の状態によっては、運動の内容に制限がかかることがあります。心臓や血圧の問題がある方は特にそうです。
また、リハビリの必要性は状態によって変わります。 今は訪問リハビリが合っていても、体力がついてきたらデイケアに切り替えたほうが伸びる、ということは普通に起こります。
一度決めたら変えられない、と思わないでください。
まとめ
- 比べるのは「どちらが優れているか」ではなく「今の困りごとがどこにあるか」
- 家の中の動作で困っている → 訪問リハビリ
- 外に出る機会・体力・家族の休息 → デイケア
- ⚠️ デイケアは滞在時間で中身が変わる。 1〜2時間の短時間型に入浴・食事はない。入浴が目的ならデイサービスのほうが自然
- 訪問リハビリの弱点は運動量と社会性、デイケアの弱点は家の中が見えないこと
- 併用もできる。 ただし介護保険の枠は共通で、食い合う
- 合わなければ変えられます
親御さんの状態は変わっていきます。そのときどきで、いちばん困っていることに合わせて選び直していい——これが、10年以上この仕事をしてきた私の結論です。
退院してすぐの時期にどう考えるかは退院後の自宅リハビリ——身体が戻らないときに、退院前に何を聞いておくべきかは退院前カンファレンスで、家族が聞いておくべきことにまとめています。
サービスの相談相手であるケアマネジャーさんとの付き合い方は信頼できるケアマネさんの見分け方を、家の中の危険な場面については夜間のトイレが一番危ないをどうぞ。
実家の話全体の進め方は「親の家、どうする?」完全ガイドからご覧ください。
なお、この記事は訪問リハビリの理学療法士としての立場から書いたものです。制度の詳細や利用できる回数・費用は、お住まいの市区町村や事業所によって異なります。個別の判断は、主治医・担当のケアマネジャー・地域包括支援センターにご確認ください。
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